最近読んだコミック

ベルセルク(39) / 三浦健太郎

ベルセルク 39 (ヤングアニマルコミックス)
おー『ベルセルク』39巻やっと出たぞー嬉しいぞー楽しみだぞー、という訳で読み始めたオレである。お話はガッツさん一行がエルフヘルムに辿り着くところから始まる。ここならキャスカの精神を回復させることができると知ったからだ。で、このエルフヘルム、いわゆる「妖精の島」で、鬱蒼とした森の中にあっちにもこっちにも妖精と、それから魔法使いがいる。最初こそ上陸を阻む戦いこそあったけれども、受け入れられてからは歓迎モードだ。そして、このエルフヘルムを隅々まで描くその描写が、なにしろ凄い。そして、強力にファンタジックだ。三浦健太郎の画力はそもそも凄まじいものがあるが、このエルフヘルムにおける描き込みは、これまで以上に鬼気迫るものがある。正直よくここまで描き込んだものだなあ、と呆然とさせられる。PCの導入もあったようだが、それにしたってハンパない。それはもちろん、三浦の頭の中に「描くべきもの」がパンパンに詰まっていて、それを全て描かなければ気が済まないからなのだろう三浦健太郎は、絶妙に精緻なグラフィックで定評のあるバンドデシネが3年掛けてやっていることを、たった一人で1年でやってしまっていないか。ただでさえ命削って描いている三浦はこのエルフヘルムの描写だけで10年ぐらい寿命縮めていないか。グラフィックだけではなく物語展開もいい。お祭り気分に沸くエルフヘルムで、キャスカの精神にファルネーゼとシールケがダイブする。それはエルフヘルムの百花揺籃の美しさとは真逆の暗くどこまでも続く荒涼とした大地だ。このコントラストがまたいい。ファルネーゼとシールケは、この寒々とした荒野を、一歩一歩、全ての絶望の中心、「蝕」の記憶の核心へと迫ってゆくのだ。もともとクオリティの高さは一貫している『ベルセルク』だが、この38巻はまたしても一つ上の高みに辿り着いた気さえする。

■竜の学校は山の上、竜のかわいい七つの子、ひきだしにテラリウム / 九井 諒子

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

ひきだしにテラリウム

ひきだしにテラリウム

ダンジョン飯』の九井諒子がそれ以前に書いていたファンタジー・ジャンルの短編集3冊。雑誌掲載ものもあるが同人誌や書き下ろし作品も含まれ、九井のこれまでの足跡を辿ることが出来た。そして分かったのが、九井諒子、『ダンジョン飯』以前から並々ならぬ才能を持った漫画家だったということだった(ファンの方からしてみたら「何をいまさら」ということだろうが)。なにしろ絵が上手い。ただ上手いだけの漫画家なら掃いて捨てるほどいるが、流行りに迎合せず、老若男女のそれぞれの顔付きや世界観にあった風景をきちんと描き分け、さらに描線は美しく簡略化も絶妙なのだ。そしてそのストーリーテリングだ。現実世界にほんのちょっと入り混じるファンタジー世界、といった作品はありがちなのだが、九井の作品においては現実世界のシビアさがより強固に描かれ、ファンタジーの幻想世界に逃避した甘ったるい物語では決して無いのである。むしろ世相を巧みに取り入れることにより、ファンタジー要素が寓意化され、物語が孕む要素をより豊かなものにしているのだ。九井の物語は、結局現実が勝ってしまうものが多いのだけれども、しかしファンタジーはそれに負けたのではなく、逆に生き難い現実にささやかな温かみと希望をもたらそうとするのだ。そこがいい。九井の物語の楽しさはひとえに、彼女のそういった部分にあるのかもしれない。また、『ひきだしにテラリウム』などは2〜8ページ程度のショートショートを集めたものだが、物語のクオリティの高さと併せ、作品の内容によってそれぞれ絵柄を変えているところなど芸が細かくて感嘆する。いやホント、才能あるわこの人。

■みずほ草紙 (4) / 花輪和一

花輪和一の『みずほ草紙』がこの巻で完結だという。連作短編集『みずほ草紙』は、おそらく昭和初期あたりの日本の農村を舞台に、そこで起こる幻想と怪異、それにまつわる人間の業と地方共同体の暗部、さらには緑濃く水豊かな自然のもたらす神秘を描いた作品だ。このブログで何度も書いているがこと花輪和一に関しては日本漫画界においてオンリーワンの貴重な才能であり、諸星大二郎と並ぶ圧倒的な幻視者であると確信している。花輪はもともと怨念と土俗信仰の合体したどろどろとした怪異譚を多く描いてきたが、同時にそこからの救済をも描いてきた漫画家であった。そしてこの『みずほ草紙』最終巻では、これまで通りの怪異こそ描かれはするが、どこか悟りに似た涅槃の平穏を感じるのだ。中心となるのはいつもの丸顔少女と、かつて仙人に師事したという奇妙な老婆である。少女は老婆を通し現実の背後に存在する見えない世界とその世界がもたらす真理を体験するのだ。そしてその真理を担うのが実は猫なのである。ある意味花輪の猫愛の発露とも取れるが、それは愛玩獣の猫であると同時に世界の真理を司る者の使役獣としての猫でもあるのだ。神秘への案内役として猫が描かれるこの作品は猫好きには堪らないものでもあるだろう。

■幻想ギネコクラシー(1)(2) / 沙村広明

幻想ギネコクラシー 1

幻想ギネコクラシー 1

幻想ギネコクラシー 2

幻想ギネコクラシー 2

『幻想ギネコクラシー』、1巻目は2014年に出ていたらしいが存在を知らず、2巻目がこの間発売されたので併せて読んでみた。内容は沙村広明の透徹した画力で描かれたひたすらしょーもない短編作品集である。SFやファンタジーチックな物語が多いが、殆どが思い付きとダジャレみたいなオチばかりである。もう、才能の無駄使いとしか思えないような脱力的な作品ばかりでありさらに下品この上ないので人にはとてもお勧めできないのである。とはいえ、このしょーもなさもまた沙村広明であり、沙村の本質の一つであることも否めないのである。才能の無駄使いとはいえ、着想の段階で一個抜きんでてるものがあるのも確かなんだよな。

アオイホノオ(17) / 島本和彦

ホノオ君遂にメジャーデビューである。ヤッタ!とはいえメジャーにはメジャーの「あなたの知らない世界」が広がっていたのである。まあしかしここからは果敢に未来に突き進んでゆくんだろうなー。頼もしくなったもんだなー。

監獄学園(25) / 平本アキラ

やっと!「監獄学園体育祭極限騎馬戦編」が終了!長かった!そしてなにやら新キャラが!?まあ25巻目ともなるとダラダラですが、こっちもダラダラ読むから構わんです。巻末の「巨悪学園」コラボはちょっとつまらんかったです……。

いぬやしき(9) / 奥浩哉

いぬやしき(9) (イブニングKC)

いぬやしき(9) (イブニングKC)

大殺戮と大破壊が終わってその後始末ってことですか。しかし次の10巻で完結ですか。ダラダラやるよりしっかりまとまっていいかも。しかもアニメ化で実写映画化ですか。