ある少年(?)の大冒険活劇~映画『Jagga Jasoos』

■Jagga Jasoos (監督:アヌラーグ・バス 2017年インド映画)

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 『バルフィ!人生に唄えば』の監督による新作映画『Jagga Jasoos』は一言でいうなら「ある少年の大冒険活劇」である。主演は『バルフィ!』にも出演したランビ―ル・カプールと、日本では『チェイス!』他幾つか公開作があるカトリーナ・カイフがヒロインを務めている。カトリーナはちょいお姉さんな役だからいいとして、ランビ―ルが少年役、というのはいろいろ意見もあるだろうが、その辺は置いておこう。

物語の主人公の名はジャッガー(ランビール・カプール)。孤児だった彼はトッティフッティ(サスワター・チャタルジー:実はこの人、『女神は二度微笑む』で不気味な殺し屋役だった人)という男に養子に迎え入れられ、二人は幸せに暮らしていた。海外を飛び回り留守にしがちのトッティは毎年ジャッガーの誕生日にメッセージVHSを送っていたが、その年、トッティからのメッセージは届かず、行方知れずになってしまう。一方、国際的な事件を追うジャーナリストのシュルティ(カトリーナ・カイフ)もトッティを探しに町を訪れていた。ジャッガーとシュルティは意気投合し、トッティ探索の旅に出る。そこで明らかになったのは世界的な武器闇取引の結社の存在だった。トッティはそれを追うスパイだったのだ。

とまあ大雑把にいうとこんなお話なのだが、ある種クライムサスペンスを思わせるテーマであるこの物語を、アヌラーグ・バス監督はコミカルでファンタジックな、あたかもカートゥーンジュブナイルを思わせるような冒険活劇に仕上げているのである。それはまず、ジャッガーのヘアスタイルがバンドデシネ作品『タンタンの冒険』の主人公タンタンを彷彿させるものである部分からも伺えるであろう。『タンタンの冒険』は2011年にスティーブン・スピルバーグ監督により『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』としてCGアニメ映画化されているが、あれと同じように一人の少年が世界を股にかけて冒険を繰り広げるのがこの『Jagga Jasoos』なのだ。

「コミカルでファンタジック」な部分は、まず主人公ジャッガーに集約される。ジャッガーはどもりがひどくまともな会話が出来ない少年なのだが、場面によって突然ミュージカルシーンとなり、ここではジャッガーは自分の思ったことを歌(ラップ?)で伝えることが出来るのだ。インド映画というと兎角「歌と踊り」が取り沙汰されるが、物語にエモーショナルな味付けをする為の場合が多く、逆にこの『Jagga Jasoos』では 「歌と踊り」によって台詞が説明されることから、よりミュージカル的であるといえ、その部分に野心的かつ実験的であることを感じさせられた。そしてこれらミュージカルシーンがどれもコミカルな味付けが成されており、それがとても楽しく、また強烈にカラフルでファンタジックな味わいを醸し出しているのだ。

物語の流れそれ自体もコミカルでファンタジックだ。ジャッガーの相方を務めるシュルティがまたドジっ子で、どこかジャッガーと凸凹コンビのようにすら思わせる。悪党どもと追いつ追われつの緊張したアクションシーンも山ほど盛り込まれるけれども、これらのアクションはどこかバスター・キートンのサイレント・コメディを思わせる味わいがあり、緊張の中に可笑し味が籠っているのだ。そして場面場面の美術の美しさはまるで夢の中の出来事のようにすら感じさせてくれる。そしてこれら全ては、アヌラーグ・バス監督の前作『バルフィ!』と非常に多くの共通点を持っている。主人公が会話によるコミュニケーションに困難であるといった部分も一緒だ。

物語の最初の舞台となるのはインドのマニプール州。これ、調べてみたら、インド東部の殆ど飛び地みたいになっている州のことだったんだね。ミャンマーに国境を接していることから、ミャンマーもまたもう一つの舞台となっているぐらいだ。ミャンマーの首長族とか登場してびっくりさせられた。また、こんな飛び地な土地なので、分離独立運動も存在するのらしく、物語で武器商人が暗躍するのはそんな背景があるからなのだろう。

さらに舞台はアフリカへと飛ぶ。ここで登場するケニアの都市モンバサの光景をインド映画で観ることになるなんてある意味びっくりさせられる。アフリカンミュージックでインド俳優が踊るなんてありそうでなかったことじゃないか。さらにキリンやダチョウまで登場し、否応なくアフリカ気分が高まる。インドのカラフルさとアフリカのカラフルさは似ているようでやはり別物で、そういった部分を確かめるのもまた楽しい。面白いのはミャンマー、インド、ケニアは地図で調べると一直線上にあることで、「武器供給ルート」として説得力がある。

ただ、非常に意欲的であり画期的であり野心的であるこの作品、十分よく出来ているにもかかわらず、所々で飽きてきてしまう部分があるのも確かだ。というのは、演出がどうにもクドイのだ。繰り返しのシーンがあり、説明過多なシーンがあり、変化があるように見えて一本調子のシーンがあり、さらに緊張感の高まったシーンでジャッガーにドモられると、気の毒とは思うがちょっとイラッとさせられるのだ。アクションは引用の多用のせいか新味に乏しくさらにスピード感に乏しい。悪党どもは残忍と思わせながら時として愚鈍でキャラがはっきりしない。最大の難は主人公ジャッガーがエキセントリックすぎて今ひとつ感情移入できないという点だ。これらは実は『バルフィ!』にも感じた不満でもあって、多分アヌラーグ・バス監督とはちょっと相性が合わないのではないかという気もする。『ギャングスタ―』は面白かったんだけどなあ。
Jagga Jasoos | Official Trailer | In Cinemas July 14