インディアン・シネマ・ウィーク/ICWジャパン2017でインド映画三昧だった

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《目次》

【インディアン・シネマ・ウィーク/ICWジャパン2017】を観に行った

先週はSpacebox主催によるインド映画まつり【インディアン・シネマ・ウィーク/ICWジャパン2017】でインド映画三昧でした。

公開作は『リンガー』『ピンク』『マーヤー』『今日・昨日・明日』『デモンテの館 』『キケンな誘拐』の6作。このうち『リンガー』と『ピンク』は既にDVDで観ていたので残り4本を日曜から水曜まで4日間かけて観に行きました。いやーオレの55年もの人生で4日間映画館通いしたのは初めてかもしれない。それだけ興味たっぷりの映画まつりだったんですよ。なんといっても観に行った4作は、日本では結構視聴の難しい南インドタミル語の映画だったからなんですね。ジャンルもホラー、SF、犯罪コメディと様々。これは面白そうじゃないですか!という訳でここで観た4作をざっくり紹介してみようかと思います。

マーヤー /MAYA (監督:アシュウィン・サラヴァナン)

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<あらすじ>チェンナイの郊外にあるマーヤヴァナムの深い森。近寄る者もいないその森は、過去の陰惨な記憶を封じて静かにたたずんでいた。イラストレーターのヴァサントは、出入りしている雑誌社の編集者から、この森にまつわる怪談を聞かされ、信じはしないものの興味を惹かれる。同じころ、女優志望のシングルマザー、アプサラは、女性が主役のとある映画のオーディションを受ける。彼女には、その作品がマーヤヴァナムにまつわるものだとは知る由もなかった。出演:ナヤンターラー、アーリ、ラクシュミ・プリヤー、マイム・ゴーピ
(2015年/ タミル語 / 142分)

 タミルのホラー映画です。初っ端から「過去精神病院で起こったおぞましい事件」の話やら心霊写真やらが描かれ、「ま、順当なホラーかな」と余裕で観てたんですが、なぜかモノクロ画面とカラー画面の二つで別々の物語が進行していることに気付き始めると、この構成が物語をいったいどこへ向かわせているのか段々気になってくるんですよ。

そしてこのトリッキーな構成の意味がクライマックスで明らかにされた時に、この作品のクオリティの高さを思い知らされた感じですね。欧米のホラー作品みたいに目を覆うような残酷さや肉体破壊があるわけではないんですが、それを補って余りあるしっかりとしたシナリオなんですよ。それはただホラー演出に終始するだけではなく、人の悲しい運命やその絆をエモーショナルに描き出そうとしていて、ここにこそこの物語の真骨頂があると思いました。

舞台となる南インドの暗い森は、これもまた欧米ホラーの寒々とした雰囲気とはまた違うねっとりと湿った熱を帯びた暗さで、この「闇の持つ熱量」が何かがそこに蠢いているような独特の薄気味の悪さを醸し出してるんですね。このダーク・ファンタジー的な要素もまたこの作品を見せるものにしていました。

今日・昨日・明日/ INDRU NETRU NAALAI (監督:R・ラヴィ・クマール)

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<あらすじ>恋人との交際がうまくいかず、意気消沈する無職の青年イランゴーは、占い師の親友プリヴェッティに慰められていた。そんな2人の目の前に、ある日忽然と姿を現した青く輝く謎の機械。それは何と未来の科学者が2015年に送り込んだタイムマシーン。2人はタイムトラベルを使ったある商売を思いつき、それが大成功する。ところが彼らの「過去」での行動が、世間を恐怖に陥れている極悪人・コランデヴェールにかかわる、ある大問題を引き起こしてしまうことになる。出演:ヴィシュヌ・ヴィシャール、ミア・ジョージ、カルナーカラン
(2015年/ タミル語 / 139分)

インド映画ってびっくりするほどSF映画が少なくてちょっと不満だったんですが、この映画がSF作品だと知って、一人のSFファンとしては相当楽しみにしていたんですね。

物語はタイムマシンを巡って繰り広げられるドタバタとアクションが中心になります。ひょんなことからタイムマシンを発見してしまった主人公と友人ですが、その超科学の産物でなにをやるかと思ったら単なるお金儲け!せっかく過去にガンジー見に行ったんだからついでに暗殺阻止してやれよ主人公!

とはいえ、そんなみみっちさが可笑しさを生む物語なんです。まあねー、オレだってタイムマシンがあったら楽なお金儲けに走りますよ!しかしそんなコメディ要素たっぷりの物語が後半、「過去を変えてしまった」ことによるとんでもない事件へと発展してゆき、緊迫感漂うサスペンスアクションへと様変わりするんですね。

時間旅行テーマにつきものである「歴史改編のツケ」は、ここでは実にシンプルに分かり易く描かれており、ある意味相当敷居が低く作られています。この辺が自分には物足りなかったんですが、その分ロマンスや大悪党との戦いなどインド映画らしい要素がたっぷりつまった作品になっており、十分満足できました。

デモンテの館 / DEMONTE COLONY (監督: R・アジャイ・ガーナームットゥ)

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<あらすじ>ラーガヴァン、スリニ、サジット、ヴィマルの4人の仲間は、デモンテ集落にある不気味な廃墟に肝だめしに向かう。その後、かつてその廃墟の主であったポルトガル人の資産家・デモンテ一家に起きた惨劇と、それにまつわるあるネックレスの物語を知ったラーガヴァンは、3人にそのストーリーを語りつつ、そっと告白する。あの廃墟で美しいネックレスを見つけた彼は、売ってカネにするためにそれを持ち帰っていたのだ。その時、誰かが部屋の扉をノックする音がー。出演: アルルニディ、アビシェーク・ジョーセフ・ジョージ、サナント、ラメーシュ・ティラク
(2015/ タミル語 / 113分)

またもやホラー!と思いつつ観始めると、冒頭は結構コミカルです。コミカルどころか陽気に歌って踊ってます!大丈夫なのかこのホラー!? と心配させといてその後じわじわとホラーっぽく責めて来ます。

主人公たちはとある幽霊屋敷に肝試しに入るんですが、ずっとこの幽霊屋敷で物語が展開するのか?と思わせといてそこはあっさり退散するんですね。本当の恐怖はその後主人公たちが部屋でダラダラし始めるあたりから始まります。彼らは悪霊に部屋に閉じ込められ、あらゆる恐怖を体験させられるのですよ。

この密室となった部屋で悪霊からあの手この手の嫌がらせを受ける、という展開はホラー映画『TATARI』『死霊のはらわた』を彷彿させていました。ゴア表現はまるでないんですが、低予算ながらあれこれ工夫してショッカーを生み出そうとしている点ではやはり実に『死霊のはらわた』ぽいんですよね。

面白かったのは人体発火のシーンで、普通なら「超常的な力が働いた」だけで済ますところを、妙に筋道立ててなぜ発火したかを見せるんですよ。勢いだけで作っているのかと思ったら変な所で理屈っぽいんですよね。それとホラーマニアの主人公たちがジャパニーズホラー作品『呪怨』をメッチャ推していて、そこもなんだか可笑しかった。

キケンな誘拐/ SOODHU KAVVUM (監督:ナラン・クマラサーミ)

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<あらすじ>セーカル、ケサヴァン、パガラヴァンの失業3人組は、酒場で出会った小銭稼ぎの誘拐犯ダースから仲間に誘われる。彼独特の『誘拐のルール』をレクチャーされた3人は迷いながらも彼に同行、チームは次々と身代金目当ての誘拐を成功させてゆく。そこへある日、突如として舞い込んだ一発大逆転の儲け話。そのミッションが『誘拐のルール・その1』に反すると知りつつも、勢いで引き受けてしまった彼らは、案の定とんでもないトラブルに巻き込まれることになる。出演:ヴィジャイ・セードゥパティ、サンチター・シェッティ、カルナーカラン
(2013年/タミル語 / 127分)

成り行きで誘拐犯になっちゃったボンクラ3人組を描くクライムコメディーです。犯罪者が最初の計画から逸脱して次第にのっぴきならない方向へと進んでゆく、という犯罪ドラマのセオリーを踏襲しつつ、これを暗く陰惨な方向ではなくコメディー作品として仕上げているところに面白さがありました。

まずなにしろ予想の付かない方向へとどんどん迷走してゆくシナリオがとても素晴らしいんですよ。誘拐計画が二転三転し、なんとかしのいだと思ったらまたまた思わぬ危機が勃発し、と全く予断を許しません。

ボンクラ3人のボスとなる男がまたまた強烈な個性の持ち主で、この人、なんといつも妄想のカノジョをはべらせています。しかもそれを周囲に公言しています。なんだか訳が分からないんですが、男ばかりのむさ苦しい犯罪ドラマに華やかさを持ち込んでいるので、あながち無意味でもないんです。

さらに強烈なのが彼らを追う凶悪な暴力警官の登場です。暴力警官が正義の鉄拳を振るう!というインド映画は数ありますが、この作品では「そもそも暴力警官なんて悪だよ」とある意味当たり前のことをつらっと描いちゃってるところが逆転の発想でした。

さらに物語は誘拐犯たちの犯罪だけではなく政界の汚濁ぶりまでも描いており、これらを含めたブラックな展開にまたもやシナリオの練り込みぶりを見せつけられましたね。

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