あのハチャメチャ中華アクション・ファンタジーが帰ってきた!?~映画『西遊記2 妖怪の逆襲』

西遊記2 妖怪の逆襲 (監督:ツイ・ハーク 2017年中国映画)

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あの『西遊記 はじまりのはじまり』の続編が遂に公開されると聞きこれは観に行かねばと思ったのである。この『西遊記1』、誰もが知るあの三蔵法師孫悟空の物語を、『少林サッカー』『カンフーハッスル』のチャウ・シンチー監督が、シンチー独特のハチャメチャかつパワフルな映像と、意表を突く展開で描く傑作だったのだ。 

(しかしこの ↑ 記事、冒頭で「クリストファー・ノーランの新作はどうも観る気が起きないのだが、チャウ・シンチーの新作と聞くとこれは観なきゃマズイだろ、と思ってしまうオレである」とか書いてて、今回公開日のかぶったノーランのつまらなさそうな映画『ダンケルク』を無視してこの『2』を観に行ったのと完全に同じ状況なのが笑える) 

さてこの2作目、チャウ・シンチーは製作へとまわり代わりに監督を『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』『蜀山奇傅 天空の剣』のツイ・ハークが担うことになったのだが、結論から言うとチャウ・シンチーに勝るとも劣らないハチャメチャさとパワフルさを画面いっぱいに展開していて今作も相当に楽しめる作品だったぞ。

物語はというととりたてて紹介するまでも無い、三蔵法師率いる孫悟空猪八戒沙悟浄が、彼らの前に立ちふさがる妖怪どもをばったばったとなぎ倒してゆく、という愉快痛快娯楽アクションになっている。前作において彼らは「妖怪ハンター」という役割を負っていて(稗田礼次郎じゃないよ!)、今作ではそれら背景説明が既に終わっている分、とことん孫悟空とその仲間たちが暴れまわる様を観ることができるというわけだ。

さらに言ってしまえば、孫悟空の物語といえば誰もが知っている物語だろうから、『1』を観ていなくても今作からだって十分楽しめる!そして今作が楽しんでから改めて『1』を観たって全然問題はない!

とはいえ、逆に「今さら孫悟空だなんて新鮮味ないなあ」と思っている方もいるかもしれない。そんな方に改めて紹介すると、この『西遊記』、あの物語を徹底的に解体してもう一度組み立てたような作品になっているんだ。『1』を観た時なんてオレ、「もんの凄い面白いけど、いつからオレの知ってるあの「西遊記」になるの?」と少々どぎまぎしたくらいだ。それだけ斬新かつ予想のできない(脱線しまくりという気もするが)『西遊記』になっているんだ。

『1』と今作の違いというと、『1』に比べ今作はかなりストレートに話が進み、ハラハラドキドキしているうちにあっという間にエンディングを迎えてしまう、といった所だろうか。上映時間は108分とそこそこだし、内容もたっぷり詰め込まれ大いに盛り上がる物語なのにもかかわらず、『1』のように脱線続きの紆余曲折が無い分、すんなりと観れてしまうのだ。この辺は監督の資質の違いによるものなのかもしれない。個人的には物語を2つくらいぶち込みインド映画みたいに3時間ぐらいの大作にしてもらって、ずっとこの世界に中に入っていたいと思ったぐらいだった。

もうひとつこの作品を特徴的にしているのは登場キャラクターたちのあまりのクレイジーさだ。三蔵法師はサディスティックだし孫悟空はひたすら暴力的だし猪八戒は変態だし沙悟浄は何を考えてるのかさっぱり分からない。相対するモンスターたちも常に血管ブチ切れそうなぐらい訳の分からないテンションの高さだし、端役の一般人たちすら奇々怪々な連中ばかりで、物語にまともな人間が殆ど出て来ない。誰も彼もが性格破綻者で歪んだ自我を互いに押し付け合う気の狂ったような世界なのだ。このタガの外れた雰囲気がメチャクチャでいい。

そんな異様な登場人物たちの中でリン・ユン演じるヒロインの小善があたかも掃き溜めの鶴の如く美しい。暗い過去を持つ少女の薄幸な表情が実にいたいけだ。このリン・ユンはチャウ・シンチーの最新作『人魚姫』でもヒロインを演じていて、こちらはもうちょっとハチャメチャな役柄だったが、もう一度この『人魚姫』を観てみたいと思ったほどであった。 

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