最近ダラ観したブルーレイだのDVDだの

キングコング:髑髏島の巨神 (監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ 2017年アメリカ映画)

この作品については劇場でも観ていてブログにその時の感想も書いているが、ブルーレイが発売されたので改めて見直し、思ったことを幾つか書こうと思う。ベトナム戦争が裏テーマだったこの映画のロケ地が実際にベトナムで特典映像で監督が「素晴らしい国だ」と言っているのを見るにつけ(リップサービスだけではないだろう)この映画にはある意味アメリカ人なりの贖罪と克服があったのかなと思った。一見単なる怪獣バトル映画なんだけどよく見るとあちこちにインテリジェンスが感じられて侮り難いものがあるんだよな。あのロケ地がベトナムで、すると謎の部族を演じたのもベトナム人と考えられるじゃないですか。その部族の守り神であるコングをアメリカ兵から守るという構図は、かつてアメリカに蹂躙されたベトナムベトナム人を現代の時間軸からアメリカが救おうとした映画作品とも言えませんかね。

◎レゴ(R)バットマン ザ・ムービー (監督:クリス・マッケイ 2017年アメリカ/デンマーク映画

最初ナメてたけど観てビックリ、これは孤独についての物語でありその孤独を生み出した自らの独善と不寛容さに対峙する物語であり、さらにヒーローとヴィランとが近親憎悪という名の歪んだ愛で結びついている事をあからさまにした物語じゃないか。これ、歴代バットマンムービーの系列に堂々と並べてもいい映画じゃないかと思ったよ。

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち (監督:ティム・バートン 2016年アメリカ映画)

ティム・バートンが遂に『フリークス』のリメイク映画を撮ったのかッ!?」と思って観てみたら『フリークス』というよりティム・バートン版『X-メン』だった。いつものティム印不思議映画で楽しめました。しかしあの水全部吸い込めちゃう女子ってある意味チートだよね……。

ドクター・ストレンジ (監督:スコット・デリクソン 2016年アメリカ映画)

これ面白えなあ、ニューエイジ論者と懐疑主義者が一緒にLSDやって「今見えているものはなんだ?」って議論しているような物語と映像じゃんか。高層ビル群が万華鏡化するVFXがなにしろもんの凄かった。『インセプション』をさらに進化させた感じの夢幻性。これは映画館で観たかったなー。VFXが派手な分アクションが軽かったのが難かな。ベネディクト・カンバーバッチは相変わらずいい仕事してたけど、個人的にはこれ以上マーベルには関わってほしくない気がするなー。

ネオン・デーモン (監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 2016年フランス/デンマーク/アメリカ映画)

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これは要するに女性主人公版『オンリー・ゴッド』なわけで、ドラッギーな映像・音楽、血塗れの物語などみんな『オンリー・ゴッド』を継承しているけど、訳の分からなさも一緒に継承しちゃってるんだよなー。とはいえこの消化不良な部分も含めて嫌いな映画じゃない。『ブラック・スワン』と比べられるらしいけど、むしろこれは『裏ラ・ラ・ランド』だろ?

◎人魚姫 (監督:チャウ・シンチー 2016年中国映画)

チャウ・シンチー映画ってことで結構楽しみにしてたんだが、う~んなんだか前半のゲスっぷりとCGIやギャグのエグさがどうも鼻に付いてノレなかったなあ。

◎幸せなひとりぼっち (監督:ハンネス・ホルム 2015年スウェーデン映画)

偏屈爺さんの毎日をペーソスたっぷりに描くスウェーデン映画なんだけど、実によかった。爺さんはあらゆる事が面白くないけど、実はそれは愛する人を亡くした孤独ゆえで、そして人生に付いて回るこんな孤独さを人はどうすればいいんだろう?というのがこの映画のテーマだったんだろうなあ。既にジジイのオレはとても感情移入した。

マグニフィセント・セブン (監督:アントワン・フークア 2016年アメリカ映画)

七人の侍』も『荒野の七人』も特に思い入れが無いしアメリカ公開時の評判もイマイチだったからスルーしてたんだけど、ツイッターで熱く語っているファンが多かったのでついつい観てみたらこれがなんと実に面白かったじゃないですか。名作2作と比べるとナニなのかもしれないけど、むしろこの今風なカジュアルさのほうが断然好みだな。

イコライザー (監督:アントワン・フークワ 2014年アメリカ映画)

「不死身な男のマッチョで乱暴な殺戮映画なんだろうな」と思って観始めたけど、何これ最初の25分、とっても切なく辛い人間ドラマじゃないか…その後の展開は最初の想像通りではあったけど、でも観終わってみると実はこれ虐げられた弱い者同士の一抹の淡い夢だったという観方もできるんだよな。

◎ザ・ターゲット 陰謀のスプレマシー (監督:フィリップ・シュテルツェル 2012年アメリカ/カナダ/ベルギー/イギリス映画)

ザ・ターゲット 陰謀のスプレマシー [DVD]

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『エンド・オブ~』シリーズのアメリカ大統領役アーロン・エッカートが主役を張ってアクションしまくると聞いて観てみたが、いやこれ普通に面白い映画じゃないの。プロット的にはリーアム・ニーソンの『アンノウン』とちょっと似ているんだが、この作品では主人公の娘が大活躍する部分がいい具合に物語を盛り上げてるんだね。

◎ドラゴンxマッハ! (監督:ソイ・チェン 2015年香港/中国映画)

トニー・ジャー主演のアクション映画!と思って観始めましたが、主人公はどちらかというと警察官役のウー・ジンなんですね。しかも今作のトニー・ジャーはそんなに強くない。でもそんなに強くないトニー・ジャーというのも新鮮だったし、あまりよく知らなかったウー・ジンという俳優のカンフー技の凄さに目を見張ってしまいました。さらに悪役で登場のマックス・チャンという方がこれまた水も滴るイイ男で(しかも強い!)、こりゃあ女性ファンたっぷりだろうと思わされた。しかも物語も結構複雑なものがあって飽きさせない。情緒たっぷりで泣かせる要素も満載。これは良作でしたね。というか、この作品ドニーさん主演の『SPL /狼よ静かに死ね』の続編だったの!?知らないことだらけのオレじゃないか!?

◎ヘッド・ショット (監督:ティモ・ジャイアントキモ・スタンボエル 2016年インドネシア映画)

ヘッド・ショット [Blu-ray]

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特に芸も技も無くただひたすらエグくて血塗れなアクションシーンが延々と続くんでゲンナリしてしまった。爽快感が無いんだよなー。ヒロインのチェルシー・イスランの超絶美女ぶりだけがみっけもんだった。

◎Mr.&Mrs. スパイ (監督:グレッグ・モットーラ 2016年アメリカ映画)

ワンダーウーマン』で今をときめくガル・ガドット様主演!なわけだし、スパイ・コメディだからそこそこ楽しめるだろう!と思って観始めました。やはりガル・ガドット様サイコー!美しい!スパイ・コメディだからそこそこ楽しめた!……んだけど、いざなにか感想を書こうとしたらなにも印象に残ってないので今愕然としている。

モーガン プロトタイプ L-9 (監督:ルーク・スコット 2016年アメリカ映画)

これなー、『スプリット』のあの子が出てるし他の役者もいいし頑張れば『ブレードランナー』のレプリカント誕生秘話ぐらいにもなっただろうにシナリオも演出も拙くて古色蒼然としたフランケンシュタイン物語以上のものじゃなくてこれならまだ『エクスマキナ』のほうがマシだよなー。

◎ダーティ・グランパ (監督:ダン・メイザー 2016年アメリカ映画)

ダーティ・グランパ [Blu-ray]

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『ダーティーグランパ』、これが想像を遥かに超えるクソど下品な映画でさらに驚くことに想像もしなかったほど胸にくるイイ映画なんだよ!いやースゲエよなここまでやりたい放題なのに最後にきっちり名器のオソソみたいにキュッと締めるとはな!いかんオレまでオゲレツになっちゃったよ!やっぱなーああいうアッパークラスやら権威やらをきちんとコケにしまくる気概がある所がアメリカ映画観て胸がスッとする部分なんだよなー。

ホドロフスキーの惑星 (監督:ルイ・ムーシェ 1994年スイス映画)

ホドロフスキーの惑星 [DVD]

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ホドロフスキーの惑星』、彼の演劇時代映像や未公開初期作品のショットが挿入され、さらにピーター・ガブリエルが登場し自らのホドロフスキー愛とジェネシスのアルバム『魅惑のブロードウェイ』(ちなみにこれ大傑作)との関連を語りだしたあたりで陶然としてきたが、次はなんとあのメビウスが登場!ひょっとしたら『ホドロフスキーの惑星』、同じくドキュメンタリーの『ホドロフスキーのDUNE』よりも凄いことになってるんじゃないのかコレ?!水木しげる大本尊亡き後ホドロフスキーがオレの神秘主義における精神的主柱なのだよ。

ラスト・ウィッチ・ハンター (監督:ブレック・アイズナー 2015年アメリカ映画)

ヴィン・ディーゼルのオカルトアクション映画ということでとりあえず手を出してみた。興行成績的にはフロップだったらしいし、評判もどうもイマイチなんだけど、どうしてどうして、個人的には禍々しい雰囲気たっぷりでなかなか面白かったですよ。マイケル・ケインイライジャ・ウッド、ローズ・レスリーの助演も手堅かったな。

◎モアナと伝説の海 (監督:ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー 2016年アメリカ映画)

題材もグラフィックも『アナ雪』と比べ物にならない位よく作られてて楽しめたけど部分部分子供騙しに陳腐化するシナリオが惜しかったしなにより『アナ雪』の二番煎じみたいな音楽が酷い。そもそもポリネシアが舞台なのになんで白人臭い歌歌ってんだよ。そこはチャカポコだろ。それにしてもなんでアレは「緑の豊穣の女神」なんだよ?海洋民族の伝説の神ならむしろ海や漁の神であるべきなんじゃないのか?ま、ディズニーのこの辺のアニメは完璧低年齢向けにシフトしてるから大人が観てどうこう言うのは野暮なんだろうなあ。

◎皆さま、ごきげんよう (監督:オタール・イオセリアーニ 2015年フランス/グルジア映画)
皆さま、ごきげんよう [DVD]

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作品紹介では「パリに生きる人々の織り成す人間ドラマ」となっていて、それは間違いはないのだけれど、この作品の本質はむしろ、説明を徹底的に省いた摩訶不思議な構成と、ユーモラスではあるが奇妙にニヒリズムの横溢する内容にあるんじゃないかな。これは監督が旧ソ連構成国にあったグルジア出身の移民であり、そんな彼がフランスとフランスの生活に抱く感情がこの作品に見え隠れしているからじゃないだろうか。