今年面白かったエレクトロニック・ミュージック

■アルバム

◎From My Mind To Yours / Richie Hawtin

From my mind to yours

From my mind to yours

ミニマル・テクノ皇帝Richie Hawtinが自身のレーベルPlus 8の設立25周年を記念してリリースしたニュー・アルバム。Richie Hawtinと彼の別名義によるトラックを含め全15曲、音はもうお墨付きのRichie Hawtinミニマル・テクノが炸裂し、「なにはなくともこれ聴いとけ」と言いたくなるような聴き応えたっぷりの必聴盤! 《試聴》

◎Ultraviolet Music / Deepchord

Ultraviolet Music

Ultraviolet Music

デトロイトで活躍するミニマル・ダブテクノ・ユニット、Deepchordが久々に新作アルバムをリリース!スタジオが災害で水没したとかで暫くちまちまとリイシュー盤を出しながら資金を貯めいていたと思われるのだが、やっとスタジオ再建が成ったのだろうか。だとしたらこれは目出度い。音は例によってズブズブなミニマル・ダブテクノだが、今作はさらに深淵へと潜航しまくっていていい。それにしてもオレDeepchord好き過ぎ。 《試聴》

◎Another Night Together / t e l e p a t h


最近オレが相当気にいっている謎のユニットt e l e p a t hの2曲入りアンビエント・アルバム。国内販売はされていない筈だがなぜか「一緒に別の夜」という邦題が付いている。それぞれがきっかり44分44秒で統一され、そしてそこで聴けるのは延々とループする妖しくなまめかしくどこか切なげな涅槃の向こうにある音。深夜のサイバーワールドの電子的振動とそれに取り憑いた人間の声、溜息の残滓。美しくもあると同時にどこか微妙に歪んだ音の連なりには背徳の臭いすらする。それにしてもこの物寂しげで刹那的なアルバムジャケットの写真はなんなのだろう。ずっと聴き続けているとそのまま異世界に持って行かれそうなヤヴァさに溢れた作品だ。《試聴》

◎Outdoor Museum of Fractals/555hz / James Holden & Camilo Tirado/Luke Abbott

Outdoor Museum of Fractals / 555hz

Outdoor Museum of Fractals / 555hz

James Holden主催のレーベルBorder Communityからの新作は、James Holdenとタブラ奏者Camilo Tiradoとのコラボ曲「Outdoor Museum of Fractals」とBorder Communityの看板アーチストLuke Abbottの「555hz」の2曲が収録されたスプリット・アルバム。2曲とはいえ長さがハンパなくて、シングルというよりアルバム扱いだろう。「Outdoor〜」は46分56秒に渡りタブラをフィーチャーした極楽の旋律が延々ループするエクスペリメンタルなサウンド。一方「555hz」は32分55秒に渡りアブストラクトな旋律がループするが、これがなんとFrip & Enoの『No Pussyfooting』のエレクトロニカ・ヴァージョンと思わせるようなサウンドだ。 《試聴》

◎System Fork / Application (The Black Dog)

System Fork

System Fork

UKテクノ重鎮デュオThe Black Dogのユニットメンバーのうち、MartinとRichardのDust兄弟が始動したプロジェクトがこのApplicationで、これはその第1弾アルバム。The Black Dog譲りの非常に計算と抑制が成されたテクノ・アルバムで、エレクトロニカとは何か?と聞かれたらこれを聴かせればいいぐらいのバランスのいい作品。 《試聴》

◎Copper Vale / Yearning Kru

Copper Vale

Copper Vale

イギリス生まれ、韓国・台湾在住、活動拠点はサウジアラビア・イギリス・台湾、というユニークなプロフィールを持つプロデューサーYearning Kruの多分1stアルバム。内容的にはドローン、アンビエント、ノイズ、サイケ、音響、ダブ、ゴシックといったあたりがグジャグジャと混じりあいつつ、環境音のようにズブズブと鳴り続けている、といったもの。決して暗さや攻撃性は無く、かといって明るくも穏やかでもない、まさに"そこにある音"としか言いようのない中域をキープし続けるサウンドに、オレはなにか自然の中を歩いているよな奇妙な落ち着きを感じるのだ。 《試聴》

◎III (Deluxe Edition) / Moderat

III (Deluxe Edition)

III (Deluxe Edition)

Moderatはダブステップ/ヒップホップ/エレクトロをミクスチャーさせた音楽性を持つModeselektorとジャーマンテクノのApparatによるユニットでこのアルバムはその3枚目。メロディアスなテクノ/ハウスチューンを基本にエモーショナルなヴォーカルが乗るといった実にポップな音を展開しており、非常に聴きやすいので結構誰にでも勧められるエレクトロニック・ミュージックかもしれないな。 《試聴》

◎Yoyogi Park / Lawrence

Yoyogi Park

Yoyogi Park

特に新しいことをやっているとか、個性が際立っているとか言う訳でもないが、なにか耳に馴染み、いつまでも聴いていたいという音楽がある。ドイツ、ハンブルグを中心に活躍するピーター・カーステンのプロジェクト、ローレンスの音にはそんな安らぎと喜びがある。彼のニューアルバムのタイトルは『Yoyogi Park』、渋谷にあるあの代々木公園だ。このアルバムを聴いていると、あたかも休日の公園をそぞろ歩いているような豊かな落ち着きが溢れている。ジャンルで言うとディープ・ハウス/アンビエントになるのだろうが、決してビートレスではなく、淡い色調を感じさせる柔らかなリズムが淡々と刻まれる。それは歩くリズム、呼吸のリズム、普段の日常のリズムということなのだろう。 《試聴》

◎Borderland: Transport / Juan Atkins & Moritz Von Oswald Present

Juan Atkins & Moritz von Oswald Present Borderland: Transport

Juan Atkins & Moritz von Oswald Present Borderland: Transport

Moritz von Oswaldといえばなにしろダブテクノ・ユニットBasic Channelだろう。催眠的にループし続けるダブ音響は発表当時唯一無二の凄みを見せていた。だがMoritz von Oswald本名での活動は、オレにはどうもピンと来なくて、一応聴いてみたけどあんまり面白くなかったんだよな。さて今作はデトロイト・テクノ・プロデューサーJuan AtkinsとのタッグによるユニットBorderlandのアルバム第2作目となる。1作目はそこそこ面白かったが、プロデューサー両者のアイディアの融合がさらにスムーズになったのか、今作はさらに素晴らしく面白い。Moritz von Oswaldの催眠ダブにJuan Atkinsのテクノ・フィーリングがいい具合にトリートメントされ、絶妙の緊張感を生んでいるのだ。 《試聴》

◎Social Housing / Marquis Hawkes

SOCIAL HOUSING

SOCIAL HOUSING

ベルリンを拠点にするUK出身のハウス・プロデューサーMarquis Hawkesのデビュー・アルバムは、まず微妙にダサいアルバムアートワークが買いポイントだ。ハウスはダサいアートワークのものが意外と中身がカッコよかったりするが、これもドンピシャ、そんな1枚(このアートワーク、実はDJ T-1000ことAlan Oldhamが手掛けているらしい)。内容はシカゴハウス風味のドラムマシーンに80年代ファンク/R&Bのサンプルを重ねたサウンドだが、眩暈を起こさせるような幻惑的なループが実にクールであり現代的でもある。実にハウス的なのにベタベタにハウスではないのだ。 《試聴》

◎Good Luck And Do Your Best / Gold Panda

Good Luck And Do Your Best [ライナーノーツ封入・日本先行リリース / 国内盤]

Good Luck And Do Your Best [ライナーノーツ封入・日本先行リリース / 国内盤]

イギリス・ロンドン出身のプロデューサーGold Pandaのニューアルバム『Good Luck And Do Your Best』は非常にカラフルで多彩な音に満ち溢れた豊かな完成度のアルバムだ。その音はノスタルジックであると同時にスイートで夢見るようであるし、明るくポジティブであると同時にどこかセンチメンタルなロマンチックさがある。優しく暖かい曲調は製作したGold Panda自身も気さくでイイ奴なんだろなあとすら思わせる。 《試聴》

◎Victorious / Floorplan

VICTORIOUS

VICTORIOUS

デトロイト・テクノのパイオニアであり元URのRobert Hoodによるハウス&ディスコ・プロジェクトFloorplanのセカンド・アルバム。ぶっとくて真っ黒いファンキー&グルーヴがぶんぶん唸るお勧め盤。 《試聴》

◎A Mineral Love / Bibio

A Mineral Love

A Mineral Love

UK在住のプロデューサーBibioのニュー・アルバムはヴォーカルをフィーチャーした美しくどこか懐かしいフォークトロニカ。秋の空を眺めながら聴くととても爽やかな気分にある。 《試聴》

◎For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have) / Huerco S.

For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have)

For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have)

ブルックリンの音響アーチストHuerco S.のセカンド・アルバムはアナログ・シンセやカセット・テープを使い独特の温もりとメランコリックさを醸し出す実験的アンビエント・サウンド。 《試聴》

◎Appropriation Stories / Shifted

Appropriation Stories

Appropriation Stories

UKのプロデューサーShiftedのニューアルバム。重く無機的な実にテクノらしいテクノで、逆に今こういった音が妙にハマる。このごろ昔のSurgeonを引っ張り出してよく聴いているのだが、あの辺に通じるものがあるな。 《試聴》

◎Expressions / Linkwood

Expressions

Expressions

エディンバラのプロデューサーLinkwoodが2015年にリリースしていたアルバム。メロディアックでメランコリックな曲に始まり実験的テクノやスモーキーでエクスペリメンタルな音までも網羅した作者の才能を伺わせる一枚。良作。 《試聴》

■ミックス・アルバム

◎Sven Vath In The Mix: The Sound Of The 16th Season / Sven Vath

The Sound Of The 16th Season

The Sound Of The 16th Season

去年の暮れに発売されたCocoon総裁Sven Vathが自ら手掛けるMIX CDシリーズ「IN THE MIX」最新作。CocoonでSvenですから当然フロア向けなミニマル・テックハウスがガンガンに収録されています。割とこういうのもよく聴きます。 《試聴》

◎Dots & Pearls III / Daniel Stefanik/Various

DOTS & PEARLS 3 (MIXED BY DANIEL STEFANIK)

DOTS & PEARLS 3 (MIXED BY DANIEL STEFANIK)

いつもの作業用。まあ要するにCOCOONでありCOCOONのJD Mixアルバムであり、COCOONなんだからこれでいいじゃないか、という音である。実はCOCOON意外と好きなのである。 《試聴》

◎Do Not Sleep / Darius Syrossian/Various

Balance Presents Do Not Sleep

Balance Presents Do Not Sleep

人気Mixシリーズ"BALANCE"の新作はイビザのパーティー兼レーベル"DO NOT SLEEP"レジデントDarius Syrossianによるもの。軽快にハウス。 《試聴》

◎DJ-Kicks - Daniel Avery / Daniel Avery

DJ-KICKS (IMPORT)

DJ-KICKS (IMPORT)

Studio K7の人気DJミックス・シリーズ「DJ-KICKS」の新作担当はイギリスのプロデューサーDaniel Avery。これがまた陰鬱かつ冷ややかなテクノが並ぶ選曲で実にイイ!彼の『Fabriclive 66』もよかったがこちらも強力プッシュ作! 《試聴》

■コンピレーション

◎DJ Koze Presents Pampa, Vol. 1 / DJ Koze/Various

PAMPA VOL. 1

PAMPA VOL. 1

ドイツ/ハンブルグを拠点に活躍するプロデューサー、DJ Kozeはオレのお気に入りのDJの一人で、アルバムが出たらなにはともあれとりあえず買うことにしている。DJ Kozeはあの独特の明るさとカラフルで茶目っ気ある音が好きなんだよな。このアルバムはそのDJ Kozeが運営するレーベルPampaの初のコンピレーション・アルバムだが、DJ Koze同様、カラフルでバリエーションに満ちたアーティストの作品が並ぶ。全19曲あり、お買い得でお腹いっぱい楽しめる作品になっている。これはお勧めです。 《試聴》

◎Schneeweiss V / Oliver Koletzki/Various


ベルリンのテック・ハウス・レーベルStil Vor Talentを主宰するOliver Koletzkiによるコンピーレション5作目。メロディアスでメランコリックな曲調のハウス・ミュージックが並ぶ。 《試聴》

◎Schneeweiss VI / Oliver Koletzki/Various

Schneeweiss VI: Presented by Oliver Koletzki

Schneeweiss VI: Presented by Oliver Koletzki

同じくOliver Koletzkiによるコンピーレション6作目。ちなみに「Schneeweiss」はベルリンの有名レストランで、古株のクラバーとクラブ・プロモーターが経営しているらしい。 《試聴》