まるでFPSゲームそのもののPOVアクション・ムービー『Hardcore Henry』!

■Hardcore Henry (監督:イリヤ・ナイシュラー 2016年ロシア/アメリカ映画)


ゲームと言えばFPSばかりやっているオレである。まあTPSも悪くない。RPGは疲れるからもうやらない(さらば『FF』シリーズ)。でもなにしろFPSだ。この間も『バトルフィールド1』『タイタンフォール2』『コール オブ デューティ インフィニット・ウォーフェア』と続けざまにプレイだ。FPSの良さ、それは取り敢えず撃って撃って撃ちまくり殺して殺して殺しまくることの爽快感だ。あとゲームシステムが基本一緒でややこしいルールを覚える必要がないというのと、ストーリーをいちいち覚えなくていいというのもあるな。年寄りだからもうシステムだのルールだのストーリーだのが覚えられないんだ。コマンドなんて若い時から覚えるのを止めてるしな。兎に角撃って殺すんだ。簡単じゃないか。

そんなFPSタイプの映画が話題になっている、というからこれはFPSゲームファンと観なければなるまい、と思ったわけだ。タイトルは『Hardcore Henry』、ロシア/アメリカ合作の日本未公開作だ。監督イリヤ・ナイシュラーはロシア人で、ミュージシャンでもあるらしい。これ出演者がなかなか渋くて、『第9地区』のシャルト・コプリー、『イコライザー』のヘイリー・ベネット、『レザボア・ドッグス』のティム・ロスが参加していたりするんだよ。

物語は秘密研究所で一人の男がサイボーグ化されているシーンから始まる。男の名はヘンリー(アンドレイ・ディメンテフ、イリヤ・ナイシュラー)、彼を看取るのは妻と名乗る女エステル(ヘイリー・ベネット)。しかし声帯を付けられる寸前に謎の武装集団が襲い掛かってきて、ヘンリーとエステルはからくもそこから逃げ出すんだ(声帯が無い、ということから劇中主人公は一言も喋らない)。しかし抵抗も空しくヘンリーとエステルは再び拉致される。そこへ謎の男(いやあ謎だらけだ)ジミー(シャルト・コプリー)が現れ、脱出の手助けをしようとする。自分はなぜ武装集団と戦わねばならないのか?エステルを救うことはできるのか?謎が謎を呼びながら、ヘンリーの銃弾と硝煙に満ちた戦いが始まるのだ。

いやあなにしろとことんFPSな映画だったよ!まあ今までFPSタイプの映画が無かったわけでは無くて、ゲーム『DOOM』の映画版では一部FPS視点だったし、近未来SF映画『GAMER』でもやはり一部FPS視点を採用していた。探せばまだあるんだろうな。しかしこの映画『Hardcore Henry』は全編がFPS視点だ。FPS視点って変な言葉だが、まあ要するに銃撃ちまくりに特化したPOVってことで納得して下され。実の所最初は「はいはいPOVPOV」と余裕かまして観ていたが、段々と飛ぶわ跳ねるわぶっ転ぶわとアクションが激しくなくなってくるとすっかり没入状態、バルクールしまくるシーンなんて「ぶつけるとイタイ落ちるとシヌ」とあわあわしながら観ていたほど。

敵の急襲や電光石火の反撃に「うひょうう!」とか「うわあああ!」とすっかり激情しまくり高所から飛び降りるシーンでは「うお・お・お・お・お」と叫び出す始末、アサルトライフル乱射しながら敵を蹴散らすシーンともなると「オラオラオラオラ!」ともはやジョジョキャラだかケンシロウだかになってしまったような興奮状態だったな!あとこの作品、ただ銃撃戦があるだけではなくて、敵の親玉が超能力者で念動力を使って対抗してくるところがまた独特の面白さがあるんだ。そう、超能力でふっ飛ばされちゃうんだよ!この辺なにしろPOVなんで物凄いスピードで宙に弾き飛ばされちゃったりすると一瞬見当識が喪失してびっくりさせられるんだよな。そういった部分ではただのFPS視点だけじゃなくてあの『クロニクル』的展開もあるってことなんだ。お話も謎だらけで最後まで飽きさせないし、こりゃあFPS好きも納得の快作だったね!