『アウトロー』のジャック・リーチャーが帰ってきた!〜映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』

ジャック・リーチャー NEVER GO BACK (監督:エドワード・ズウィック 2016年アメリカ映画)


この『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』はクリストファー・マッカリー監督による2012年公開のアクション映画『アウトロー』のシリーズ第2作となる。今作のタイトルにもなっている主人公ジャック・リーチャーが前作に引き続き活躍するというわけなのだが、物語的な繋がりは無く、『アウトロー』を観ていなくても全然問題は無い。
前作の『アウトロー』、これが滅法面白かった。その年のベストテンの一作に加えたぐらいだ。感想についてはここで書いたが、見た目の派手さに頼ることなく、しっかりした演出と、要所要所でキチッとキメてくれるアクションが実に心地いい映画だった。原作は在米英国人作家リー・チャイルドのベストセラー・ハードボイルド小説だが、『アウトロー』があまりに面白かったので映画とは別のリー・チャイルド作品を読んでみたぐらいだ(小説タイトルは『キリング・フロアー』。感想はここで書いた)。そんなジャック・リーチャー・シリーズがまたまた映画化されたというからこれは非常に楽しみにして観に行った。
さて今作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』は監督をエドワード・ズウィックに替えての作品となる。エドワード・ズウィック、『ラストサムライ』でトム・クルーズと組んだことのある監督らしいが、バイオを調べてみても、あまり観たことがある作品が無く、観たことのある作品も、あまり印象に残っていなかったりする(実は『ラスト・サムライ』も観ていない)。前作のクリストファー・マッカリー監督が好印象だっただけに、吉と出るか凶と出るかちょっぴり不安はあった。
物語はスパイ容疑で逮捕された元同僚スーザン・ターナー少佐(コビー・スマルダーズ)を救い出す為ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)が熾烈な戦いに挑むというもの。この逮捕劇の裏に黒い陰謀が存在し、その首謀者が冷酷な殺し屋を雇って二人の命をつけ狙う。同時並行してリーチャーには身に憶えのない"実の娘"らしき少女が登場し、彼女もまたリーチャーらと命を狙われることになる。リーチャー一行は殺し屋の手から逃れながらターナー少佐にかけられた嫌疑を晴らしその背後の陰謀を暴こうとするのだ。
今回の特色となるのは"ハードボイルドな一匹狼"ジャック・リーチャーが今作ではターナー少佐という女性の相棒と共に行動するという点だろう。しかし女性とはいえなにしろ軍人なのでこれが相当腕が立つ。この二人が最初衝突しながら次第に息が合ってゆくのがバディ・ムービー的で面白い。ターナー少佐を演じたコビー・スマルダーズはハードな役を演じつつも十分魅力的だった。そして"実の娘疑惑"のサマンサ(ダニカ・ヤロシュ)の存在は一見足手まといに見えつつ彼らの逃走劇に様々な形で寄与してゆく。次第に親の愛情を見せてゆくリーチャーの姿はこそばゆいが、家族愛がテーマにある原作を選んだのは案外トム・クルーズの趣味だったのではないか。
そして主人公リーチャーは今回もまたしても「俺の観察眼と思考力は全てお見通しだぜ!」とばかりに先手先手を打ちながら敵を翻弄し、立ちはだかる相手は訓練し尽くされた格闘技で倒してゆく。元米軍エリート秘密捜査官という設定なのだが、地味にスーパーマン的なキャラなのだ。しかし前作でも描かれた原作設定では「荷物を持ち歩かない風来坊なので下着は夜洗って朝まで乾かしておく」という妙に所帯じみた部分もあり、映画を観ながら「リーチャー、今夜はパンツ洗ったのかなあ」とついつい心配してしまった。それとトム・クルーズ、54歳ともあって流石に老けてきたなあ。
全体的に感じたのは前作とは違うアプローチの"ジャック・リーチャー"だったということだ。前作は丁寧にドラマを積み重ねながら合間合間に強力なアクションを挟んでゆく作品だったが、今作は逃走劇が中心となって矢継ぎ早のアクションで盛り沢山となる。しかも130分と長かった前作と比べ今作は118分、割りといい時間で収まっている。その分、じっくり見せてゆく前作と違いスピード感重視の若干ラフな構成だ。飛行機でのエピソードは結構インチキやっているな、というのは気になった。また、悪の親玉が少々弱い。ミステリ要素も楽しみたいなら前作、サクッとアクションを楽しみたいなら今作といった感じか。
http://www.youtube.com/watch?v=Jj77jql0Mbg:movie:W620

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