映画『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』と『X-コンタクト』が面白かったのでちょっくら駄文をしたためる

■映画『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』は悲嘆と喪失を乗り越えようとする少女の物語だった

ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ (監督:トッド・ストラウス=シュルソン 2015年アメリカ映画)


この映画、タイトルだけだとまんまホラー映画なんですが、内容を調べたらホラー・コメディなのらしく、しかも妙に評判がいい。いったいどんな映画なの?と思って観てみたら、確かにホラーだしホラー・コメディでもあるんだけど、しかしその本質的なテーマは亡くなった母への愛と悲しみで、しかもこれが大いに泣かせる出来だったのでびっくりしちゃいましたよ。
物語の主人公はB級ホラー女優を母を持つ娘マックス。この母親というのは女手一つでマックスを育てていたんですが、ある日事故で亡くなっちゃうんです。数年後マックスは劇場で母の出演していたスラッシャー・ムービーを観るはめになるんですが、ここで火事が起き、友人たちと右往左往しているうちになんと映画の世界に入っちゃうんですね。で、その世界でマックスは映画の中の母と対面しちゃうんです!しかしシナリオ通りだと母親は殺されちゃう、そこでマックスは母を守るために殺人鬼と対決する!というものなんですね。
映画世界の登場人物たちは80年代ホラーぽい頭が空っぽでダサいキャラばかりで、彼らがダサいホラー映画ならではの薄っぺらな言動や行動を繰り出すところがこの映画のコメディ要素ともなる部分なんですね。一方主人公たちはこのホラー映画のシナリオを熟知しているので殺人鬼に対抗しようとするんですが、それでもやっぱりみんな次々に殺されてゆく。この「話が違うじゃん!」という部分がまたもや可笑しいんですね。
そんな中主人公マックスは母を守ろうと奮戦しますが、この"母"は映画世界で架空の登場人物として存在しているだけで、母と同じ姿をしているけれども厳密には母ではない。つまりこの"母"を守れたところで本物の母が現実世界で甦るわけではないんです。それでもマックスは「再び母を失いたくない」という強い思いから戦おうとする。つまりそれは、自分自身の中にある"悲嘆"と"喪失"との戦いであるということなんです。こういう部分で実はこの作品、本質的にはとても内省的な物語でもあるんですね。
構成自体もメタであったりループであったりして、こういうテーマの気になる人にもうってつけなんじゃないかな。ドリュー・ゴダード監督によるホラー映画『キャビン』がホラー映画への批評で成り立っていたように、この『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』もまた別の形でホラー映画への批評になっていて、そういう部分も楽しめました。

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■『X-コンタクト』はアナログ特撮にこだわった『遊星からの物体X』ミーツ『エイリアン』なホラー映画だった

X-コンタクト (監督:アレック・ギリス 2014年アメリカ映画)


X-コンタクト!まるで『X-FILE』のパクリみたいなタイトル!『遊星からの物体X』のバッタモンみたいなポスター!これはいわゆるメガシャーク的な泡沫アサイラム作品のひとつなのか!?なのか!?とオレは思ったのである。普段なら見向きもしないような作品ではあるが、しかしこの『X-コンタクト』についてWebサイト「BEAGLE the movie」におけるこんなレヴューを読んだのである。(beagle-voyage.com - このウェブサイトは販売用です! - 映画 アニメ動画 ドラマ動画 映画動画 海外ドラマ リソースおよび情報
このレヴューによると『X-コンタクト』は「映画『遊星からの物体X ファーストコンタクト』でアニマトロニクスによるクリーチャー描写を担っていたアマルガメイテッド・ダイナミクスがポスプロ段階でCGが加えられたことを快く思わず、その中心人物がクラウド・ファウンディングにより資金を募り完全CG排除100%プラクティカル・エフェクトのみで製作されたSFホラー」ということなのらしい。要するに「アナログ特撮大好きなんだからそれをとことんやらしてくれ!」ということなんだが、これはプラクティカル・エフェクトへのこだわりだけではなく『遊星からの物体X ファーストコンタクト』のCG部分があまり出来がよくなかったということへの反発、これぐらいのことなら自分らでも出来る、という自負心からであるのかもしれない。
そして『遊星からの物体X』ミーツ『エイリアン』といったプロットは、新鮮さこそないにせよ安心して観られる上、これら作品へのリスペクトが充分に伝わってくる。確かにこれらの作品を決して越えられるものではないにせよ、プラクティカル・エフェクトへの愛情と熱意が功を奏し、少なくともその部分においては遜色ない仕上がりになっているうえ、アナログな動きの"楽しさ"すら感じられた。もちろん愛情と熱意だけならファン・メイド作品にしかならないのだが、そういった点を回避しているのは特撮の確かな技術によるものなのだろう。
実際自分としてみればプラクティカル・エフェクトだろうがCGだろうがさしてこだわり無く違いも分からず、例えばコンピューターと地道なロケにより低予算で仕上げたギャレス・エドワーズ監督のデビュー作『モンスターズ/地球外生命体』も「CG使って低予算でここまで仕上げたのってさすがだなあ」と素直に感嘆したぐらいで、何をどう使っていようが頓着しないのだが、むしろオレの愛する『遊星からの物体X』を『遊星からの物体X』的な技術で製作しようとしたところに心が惹かれたのだと思う。

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