4人組女性ロック・バンド、ウォーペイントがとても素晴らしい。


いつもエレクトロニック・ミュージックの音楽配信で利用しているサイト「Bleep」では少数ではあるがインディーズ・ロックも配信されている。しかしロック・ミュージックを見限って早数十年、インディーズ・ジャンルはことさら試聴するわけでもなく無視していた。ところがなぜかたまたま試聴ボタンを押して聴き入ってしまったバンドがあった。ジャケット写真はシルエットになっておりそれは男性なのか女性なのかは判別がつかないが、少なくともヴォーカルは女性のようだ。そのバンドの名はウォーペイントといった。

どこか胸騒ぎを覚えるそのサウンドにオレは矢も盾もたまらず衝動的にアルバムを購入、早速そのアルバムを聴きながら「これはいったいなんなのだ?」と思いつつウォーペイントというバンドが何者なのかを調べ始めた。するとウォーペイントはLA出身の女性バンドであるらしく、購入したアルバム『Heads Up』は彼女らの3枚目のアルバムになるのらしいことを知る。YouTubeで動画も観た。そしてこの動画がまた衝撃的だった。そこで観た動画は2ndアルバムからのものらしかったが、なにしろ動画に登場するメンバー女性4人が、清清しいほど超絶的に可愛げがなかったのである。

メンバー4人が4人とも目つきが悪くダルそうだ。色っぽくも美人でもなく、ただ「私は私」という実存だけがベークトポテトの化石みたいにゴロンと転がっているような不敵な面構えをしている。"ガールズバンド"という一般的な名称から連想させるような甘さや女っぽさは微塵もない。うおお。こいつらカッコイイじゃないか。クールじゃないか。そもそも"ガールズ"なんて但し書きが彼女らには不必要だ。彼女らはなによりもまず"ロック・バンド"だ。さらに"Warpaint"というバンド名自体が実にぶっきらぼうで挑戦的じゃないか。
ウォーペイントの音は重く鬱蒼としているが、しかしそれは耽美や虚無や悲嘆に繋がる暗さではない。その重さは、彼女らがとことんシリアスであるがゆえにもたらされているのだ。曲をリードしてゆくのはなにより確固とした意思を感じるベースラインだ。そしてアグレッシブで技巧的なドラムのビートだ。これらの音がウォーペイントの音を重量感のあるものにしているのだ。さらにどの曲も常にミディアムテンポをキープし続け、景気のいいアップテンポやメロウなスローテンポには全く目もくれない。頑固で意固地なぐらい基盤が安定してるのだ。そこに綺羅星のようなギターサウンドが儚く現れては消えてゆく。それだけでも十分聴き応えのあるサウンドだが、さらに彼女らの音を一筋縄にしていないのが奇妙に不安定なメロディラインを持つヴォーカルだ。重いリズム隊にメランコリックで不安を掻き立てるメロディ。これがウォーペイント・サウンドだ。
3rdアルバムがあまりによかったので1stも2ndアルバムもすぐさま購入して聴いた。1stアルバム『Fool』は追加曲の収録された『Fool:Deluxe Edition』を購入した。こちらは曲展開はストレートであり、またドラム少な目で美しいメロディのアコースティックな曲が並ぶ。この頃のウォーペイントは音楽好きの女性が集まって作られたまだ繊細さの残る所謂"ガールズ・バンド"であったように思う。

続く2ndは現メンバーのドラマ―、ステラが新たに加入し、それにより改めてバンド名を冠した『Warpaint』というタイトルになってる。彼女らに取ってこの音が目指していたものだったということだったのではないか。確かにステラのドラムによりウォーペイントの音は確実にロック・バンドらしく力強いものに変化しており、さらに実験的な要素も加味される余裕がうかがわれるようになった。そしてこのアルバム『Warpaint』をさらに発展させたのが最新アルバム『Heads Up』ということなのだ。
さらにデヴィッド・ボウイのカヴァー『Ashes To Ashes』のシングルも発見した。これがまた素晴らしいのだ。こうしてオレとウォーペイントの間にボウイという共通項を見出し、オレのウォーペイント熱は高まるばかりだ。もしも来日したら是非ステージを観に行きたい、そんなふうに思うロック・バンドが現れたこと自体オレにとってはとてもありえないことだからである。

ヘッズ・アップ

ヘッズ・アップ

Warpaint

Warpaint

Fool

Fool

Fool: Deluxe Edition

Fool: Deluxe Edition