開催直前!インド映画祭IFFJはこれが観たい!

■インド映画の祭典なんだ!

今年も「IFFJ / インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン」の季節がやってまいりました。このIFFJ、日本未公開のホットでスパイシーなインド映画最新作をお腹いっぱい観られる!という映画祭なんですな。もちろん日本語字幕付きだよ!
まず会期・会場・チケット情報・スケジュールなどはこちらをどうぞ。

・2016年10月7日(金)〜10月21日(金) 東京@ヒューマントラストシネマ渋谷
・2016年10月8日(土)〜10月21日(金) 大阪@シネ・リーブル梅田
・チケット情報 (リンク)
・スケジュール(リンク

また、作品情報はこちらであれこれまとめられておりますので是非ご参考までに。

「インディアン・フィルム・フェスティバル・ジャパン IFFJ2016」オフィシャル・ホームページ
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このIFFJ2016では12本の最新インド映画と短編1作の上映が予定されております。オレはこのうち11作を既にDVD視聴しブログでレヴューを書いておりましたので、今回はこのレビューを踏まえながらそれぞれの作品をごくザックリと紹介してみたいと思います。これから映画を観に行く方の何かの参考にされてください!

■プレーム兄貴、お城へ行く (原題:PREM RATAN DHAN PAYO) /  監督:スーラジ・バルジャーティヤ


●テーマ:気のいい兄貴はインド貴族のそっくりさんだった!?
《物語》戴冠式の近づくプリータムプルの王子ビジェイは暗殺犯に襲われ、命こそ助かったが意識不明となる。大臣であるジワンは秘密裏にアジャイを古城で看護するが、戴冠式は4日後に迫っていた。 一方気のいい舞台俳優のプレムは憧れの王女を一目見たくてプリータムプルに訪れていた。そんなプレムをたまたま見かけた王室警護長官は驚きに大きく目を見開く。なんとプレムは王子と瓜二つだったのだ。サンジェイとジワンはプレムを説得し、プレムを王子の替え玉として戴冠式に挑ませようとする。
贅を尽くした絢爛豪華なインドの宮殿、そこに暮らす煌びやかな衣装のインド貴族たちの物語。映画『PRDP』はこんな、古式ゆかしいトラディショナルなインド家族ドラマを予想させます。そしてその物語は「そっくりさん登場!」といったボディ・ダブルネタでもあるんです。大衆的な娯楽作品としての側面も十分優れています。ロケーションと衣装、歌と踊りも十二分に美しく、目を楽しませます。主演のサルマーン・カーンは優れた演技とキャラクターを見せ、ヒロインのソーナムはひたすら美しく、そしてサルマーンとアヌパム・ケールの掛け合いがこれまた心憎いほどに楽しく、物語をより温かく豊かなものにしています。
そしてなによりこの物語を盛り上げるのはプレムとマイティリー王女とのロマンスでしょう。最初結婚に乗り気ではなかったマイティリー王女はプレムの真心に触れることで彼への想いを強くします。しかしそれは王子ビジェイに成りすましたプレムなのです。一方プレムもマイティリー王女を愛しながら、自分が別人を偽っているという明かすことのできない嘘をついていることに苦悶します。この映画はこうして胸締め付けられる鮮やかなクライマックスへとひた走ってゆくのです。クライマックスはアクションもたっぷり、「これぞインドの娯楽映画!」と拍手喝采したくなるような名作です!
インド貴族の屋敷を舞台にしたボディダブル・ストーリー〜映画『Prem Ratan Dhan Payo』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:サルマーン・カーン、ソーナム・カプール、ニール・ニティン・ムケーシュ、アヌパム・ケール (2015/ ヒンディー語/164分))
☆この作品のそっくりさん度:12000点

■ファン (原題:FAN) / 監督:マニーシュ・シャルマー


●テーマ:スターへの憧れが憎しみに変わるとき。
《物語》デリーに住む青年ゴウラヴにとって大スター、アーリヤン・カンナーは世界の全てだ。夜も日も明けずアーリヤン漬けの生活を送る彼はアーリヤンの住む夢の街、ムンバイへとやってくる。だが一般人が大スターと容易く会えるわけがない。アーリヤンの気を引くため脅迫事件を起こし投獄されるゴウラヴ。そこにアーリヤンが面会に来て彼に言う。「君のような男はファンなんかじゃない」。憧れが憎しみへと変わり、ゴウラヴの狂気がゆっくりと頭をもたげ始める。
御大シャー・ルク・カーンの主演映画であり、そのシャー・ルクが一人二役を演じ分けるのが今作の見所。本人そのものの大スターを演じるシャー・ルクだが、しかし彼はあからさまな営業スマイルを浮かべ時に疲れた顔をしスタッフに当り散らす等身大の人間だ。大観衆を前にポーズをとる様はいかにも決まって見えるが、それも「そういう営業中」であることがうっすらと透けて見えてしまう……というメタな演技は流石だなと思わされた。
一方ストーカー青年ゴウラヴ、これがスゴイ。シャー・ルクの演じ分けも素晴らしかったが、一人二役とはいえ大スター・アーリヤンとゴウラヴの顏が微妙に違うのだ。これはゴウラヴの顏を特殊メイクとさらにCGでもって製作しているからであり、さらに体型すらもCG加工されている。こうして出来上がった特殊メイク+CGのゴウラヴはシャー・ルクに似て非なるいわば「不気味の谷」ともいえる薄気味悪い造形をしており、この気持ち悪さを眺めているだけでも面白い作品だった。
憧れが憎しみに変わるとき〜映画『Fan』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:シャールク・カーン、ワルーシャー・デスーザ、シュリヤー・ピルガオーンカル、サヤーニー・グプター (2016/ ヒンディー語/ 2時間18分))
☆この作品のストーカー度:800点

ボンベイ・ベルベット (原題:BOMBAY VELVET) / 監督:アヌラーグ・カシュヤプ


●テーマ:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落。
《物語》60年代ボンベイ。ケチなチンピラだったジョニーと相棒のチマンは、ある日怪しげな資本家カイザードに雇われる。それは殺人、誘拐、脅迫といった薄汚い裏稼業だった。一方、安酒場の歌姫だったロージーは、クラブ「ボンベイ・ベルベット」のオーナーとなったジョニーと出会い恋に落ちる。しかしそれは、政界大物の脅迫写真を取り戻すためにロージーの愛人が差し向けた罠だったのだ。

ボンベイ・ベルベット』に感嘆させられたのは、まずその徹底的に作り込まれた美術だ。60年代ボンベイの街並みを完璧に再現したというセットは、逆に夢のような非現実感を伴う。西洋風にあつらわれた屋敷やホテルの内装は徹底的にインド臭を排除され、クラブ「ボンベイ・ベルベット」は豪華であり頽廃的だ。男たちは誰もが小粋でパリッとしたスーツに身を包み、洒落者ならではの黒いあくどさを醸し出す。そうして現出するボンベイの姿は、もはや、インドですらない。これには震撼させられた。
この作品の魅力のもう一つは徹底的に説明を廃したその演出だ。台詞やモノローグに頼ることなく、幾つかのカットの連なりと、更に故意に描かれないシーンによって、カシュヤプは物語の状況を描き出そうとする。そこから現れる効果は、情緒を否定し目の前の実存だけがごろりと転がる寒々とした非情さだ。
そして通俗だからこそ銃撃戦は『ランボー』でも観ているかのようにどこまでも派手であり、痛快だ。インド映画的な歌と踊りはないにしても、クラブ「ボンベイ・ベルベット」で披露されるハイレベルなレヴューがどこまでも楽しませてくれる仕組みになっている。こうしてみると、映画『ボンベイ・ベルベット』は、カシュヤプ監督なりの大衆的な娯楽作を作りだそうとしたその結果であると思えるのだ。
この作品の真の主役は作り込まれた"ボンベイ世界"にある。この"ボンベイ世界"で、登場人物たちの命は陽炎のように現れては消えてゆく。彼らの運命に思いを馳せ、今は無き幻影の"ボンベイ世界"を夢想する、これは、そんな物語だと思うのだ。
IFFJ先行レビュー:ボンベイ裏社会を生きた男の栄光と没落〜映画『ボンベイ・ベルベット』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:ランビール・カプールアヌシュカー・シャルマー、ケイ・ケイ・メーノーン、カラン・ジョーハル、マニーシュ・チョウドゥリー (2015/ヒンディー語/150分))
☆この作品のノワール度:1000点

■ニールジャー (原題:NEERJA) / 監督:ラーム・マドゥワーニー


●テーマ:ハイジャック犯に立ち向かった一人の女性を描く実話物語。
《物語》ムンバイ発ニューヨーク行きパンナム航空73便は突如過激派によるハイジャックを受ける。パイロットらはいち早くコックピット内より脱出、飛び立つことの出来ない旅客機の中には乗客乗員377名が残された。窮地に立たされた4名のハイジャック犯はパイロットの搭乗を要求、受け入れられない場合は乗客を一人ずつ殺してゆくと宣言した。そんな中、客室乗務員の一人ニールジャーは乗客の命を救う為、決死の覚悟で力を尽くす。その時、彼女はまだ22歳だった。
1986年に起こったハイジャック事件を描く実話ドラマ。ハイジャックを描いたものとしてこの作品がまずユニークなのは、「飛び立つことの出来ない航空機の中の立て籠もり」であるという部分だ。さっさとコックピット・クルーに逃げられてしまうというのはある意味滑稽ではあるが、現実だからこそこんな滑稽な状況が生まれ、それがまたドラマになってしまうというのも確かなのだ。
そしてこの物語の主人公が、たった22歳の女性客室乗務員である、ということだ。マッチョな警官や軍人という訳ではないのだ。確かにハイジャックを含む航空機サスペンスでは客室乗務員が重要な役割を充てられるが、この作品ではか細くか弱い若い女性が、孤軍奮闘して乗客たちを守ろうとし、ハイジャック犯と交渉するのである。時には不安に怯え、恐怖に泣き出すこともありながら、彼女は命懸けでそれをやり通そうとするのである。
物語はいたってシンプルでストレートであり、上演時間も122分とインド映画にしては十分にタイトなものだ。サスペンスは直球であり、描写に情け容赦なく、そしてこれらが殆ど現実にあったことだという重さが胸にのしかかる。娯楽映画としてもドキュメンタリーとしても非常に秀逸な作品であるのは間違いない。
ハイジャック犯に立ち向かった一人の女性を描く実話物語〜映画『Neerja』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
出演:ソーナム・カプール、シャバーナー・アーズミー、シェーカル・ラヴジヤーニー (2016/ ヒンディー語/ 122分))
☆この作品のサスペンス度:999点

カプール家の家族写真 (原題:KAPOOR & SONS (SINCE 1921)) / 監督:シャクン・バトラ


●テーマ:家族の再会が引き起こした大きな波紋。
《物語》インドのクーヌール住むカプール家のお爺ちゃんが心臓発作を起こす。お爺ちゃんと同居していたカプール夫妻は急遽海外で生活していた二人の息子を呼び戻した。お爺ちゃんは一命を取り戻し、なんとか安心に見えたのだが、実はカプール家の面々はそれぞれに問題を抱えていて、彼らが一堂に会したことによってその問題が大きく吹き上がってしまうのだ。
一見して非常に巧みなシナリオを持つ作品だと感じた。この物語では家族の多くが秘密を抱えている。その秘密は冒頭から様々な伏線を張りながら交錯しあい緊張感を高めてゆきながら、ある日嵐の中のダムのように決壊を起こす。この破局のポイントまでの構成が恐ろしいくらいに巧みなのだ。よくもまあここでここまで繋げたなあ、と思う。そしてこうした破局を経ながらもどうやってもう一度家族の輪を取り戻してゆくのかがこの作品の大きなテーマとなる。彼らの秘密は秘密のままであったほうがよかったものなのかもしれない。だがその秘密が発露したその先でさえも、あくまで誠実な家族同志であろうとするのがこの物語なのだ。
家族の再会が引き起こした大きな波紋〜映画『Kapoor & Sons (since 1921)』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:リシ・カプール、シッダールト・マルホートラ、ファワード・カーン、アーリヤー・バット、ラトナー・パータク、ラジャト・カプール (2016/ヒンディー語/132分))
☆この作品の家族崩壊度:1000点

■ハウスフル 3 (原題:HOUSEFULL 3) / 監督:サージド-ファルハド


●テーマ:3人の娘に惚れた3人の男の大騒動!?
《物語》ロンドンの大邸宅に住む富豪バトゥックには愛しい3人の娘がおりました。そしてお年頃の3人にはそれぞれ交際している男性が。しかし娘を嫁にやりたくないバトゥックはインチキ占星術師をでっち上げ、「もしも〇〇な男を連れて来たら父親は心臓発作で死ぬ!」と嘘の予言をします。それは「家に足を踏み入れた男」、「父を見た男」、「父に声を掛けた男」です。黙っていられないのは3人の男、彼らはそれぞれ「下半身不随」、「盲目」、「聾唖」のふりをしてまんまと父親の前に姿を現します!しかしそんな嘘もだんだんほころび始めて!?
大笑いして観ることができました。ギャグのネタはどれも大変下らないし、身障者ネタはかな〜りヤヴァさが満載ですが、気軽に観れるバカ映画としては十分なセンスではないでしょうか。まずなにしろアクシャイの二重人格演技。このジキルとハイドみたいなアクシャイ、メッチャ怖い顔をして暴れるんですが、この「危なさ」が作品の面白さに寄与していました。それと、アビシェークの徹底的な楽屋落ちネタ!何が登場するかは書きませんが、インド映画の好きな人ほど笑い転げること必至でしょう!歌と踊りもいい湯加減で登場し、「あーボリウッド娯楽作観たなー」と良い気分で観終りました。
3人の娘に惚れた3人の男の大騒動!?〜映画『Housefull 3』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:アクシャイ・クマール、リテーシュ・デーシュムク、アビシェーク・バッチャン、ジャクリーン・フェルナンデス、リサ・ヘイドン、ナルギス・ファクリー、ボーマン・イラーニー (2016/ヒンディー語/145分))
☆この作品のドタバタ度:777点

■エアリフト 〜緊急空輸〜 (原題:AIRLIFT) / 監督:ラージャー・クリシュナ・メーノーン


●テーマ:クウェート侵攻により置き去りにされた17万人のインド人を救え!
《物語》実業家のランジートは家族と共にクウェートに住み、順風満帆な生活を送っていたが、イラク軍のクウェート侵攻によりその生活は一変する。ランジートは国外脱出を考えるが、脱出もままならず右往左往するインド人同胞の姿を見て、彼らを救うことを決意する。実業家のコネを活かし、様々な政府機関に掛け合うランジートだったが返答は色よくない。さらに国連経済制裁による海上封鎖のため海路での脱出も望みが絶たれた。食料も底を突きかけ不安だけが広がってゆくインド人同胞たちの為にランジートは打つ手があるのか。
イラク首相サダム・フセインによるクウェート侵攻はその後の湾岸戦争へと広がるきっかけともなった侵略行為だった。アメリカのブッシュ大統領多国籍軍を編成してサウジアラビアに派兵、さらにペルシャ湾の海上封鎖を敢行する。それに対しイラクは欧米人を一斉に拘束、出国を禁止した上に軍事施設に収容するという人質作戦を展開する。双方睨み合いのまま人質は徐々に解放されてゆくが、経済封鎖の影響は次第にイラクに影響を与えてゆく。そこでは17万人の在クウェート・インド人たちも孤立無援となっていた。
そんな中、一人の男が同胞を救う為に立ち上がる。映画『Airlift』は湾岸戦争の初期、実際に起こった脱出計画を描くスリラー作品である。戦時下の街で恐怖に怯える人々を描き「その時クウェートのインド人はどうしたのか」を描いたのがこの作品となる。避難所に集められたインド人たちの憔悴しきった様子、膨らんでゆく不満、やっと脱出手段が見つけられたと思ったらそれが次々に不可能になってしまうことの絶望感、「もしも自分もそこにいたら」と考えるとやはり恐ろしい。
クウェート侵攻により置き去りにされた17万人のインド人を救え!〜映画『Airlift』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:アクシャイ・クマール、ニムラト・カウル、プーラブ・コーホリー、フェリーナ・ワズィール (2016/ヒンディー語/126分))
☆この作品の危機一髪度:880点

■キ&カ 〜彼女と彼〜 (原題:KI & KA) / 監督:R.バールキー


●テーマ:「俺、主夫になりたいっす!」
《物語》「私、仕事に人生賭けてるの!将来の夢はCEO!」というキャリアウーマンと、「俺、主夫になりたいっす!家事のことなら俺に任せろ!」という男性とが知り合って、これで結婚しちゃえばWin-Winじゃね?ということで目出度くゴールイン!しかし二人の結婚生活は夫が「カリスマ主夫」として注目を浴びてしまったばかりに思わぬ方向へ!?というロマンチック・コメディ。
夫であるカビールには「亡くした母のような"主婦"になりたい」という動機がありました。主婦/主夫を極めたい彼の向上心は並大抵のものではなく、掃除洗濯料理をこなすのは当たり前、インテリア・コーディネートしてみたり、妻キアとそのお母さんの健康管理まで始めちゃいます。
当然こんな主夫が成り立つためには、女性でも能力があるなら性別関係なく安定した収入を得られる、そういう社会である、という大前提も必要です。例え女性であってもCEOを目指せるし、例え男性であっても最高の主夫を目指せる。目指すものがCEOや主夫じゃなくても、性別に関係なく自己実現を達成できる。そんな社会を夢見た物語であるとも言えるんですよね。
とはいえ、キャリアウーマンと主夫が結婚してメデタシメデタシ、ではお話が終わってしまいます。お話を転がすのにいったいどんな波乱を持ち込むのかな?と思いながら観ていたら、おやおやそっちの方向に!?というのが楽しいドラマでした。
「俺、主夫になりたいっす!」〜映画『Ki & Ka』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(主演:カリーナー・カプール、アルジュン・カプール (2016/ ヒンディー語/ 126分))
☆この作品の主夫度:1000点満点

■アリーガルの夜明け (原題:ALIGARH) / 監督:ハンサル・メータ


●テーマ:インドにおけるセクシャル・マイノリティ差別。
《物語》大学で教鞭をとる教授がゲイであることを理由に退職に追い込まれ、裁判となった事件を元に描かれた実話作品。教授の名はラーマチャンドラ、彼は男性と自宅で愛し合っているところを見知らぬ男たちに乗り込まれ、暴行を受けた上にビデオに撮られるという辱めを受ける。この事件は同性愛者を判じる裁判へと発展し、新聞記者のディープーはその取材としてラーマチャンドラの元を訪れるのだ。
インドは法律により同性愛が禁止されている国である。2009年にニューデリー高等裁判所により同性愛行為の合法判断が示されたにもかかわらず、2013年、最高裁判所によって最高禁固10年という違法行為へと判断が覆されたのだ。物語はラーマチャンドラ、彼を取材するディープーを中心としながら、裁判の様子と、事件当日の真実が明らかにされてゆく。とはいえこの物語は、ことさら大声で同性愛者の人権やそれを裁く法律の違法性を説く作品ではない。むしろ、ラーマチャンドラの内面を掘り下げ、それに寄り添う形で、彼の生き方を詳らかにしてゆく。
ここでラーマチャンドラは、自分の裁判にすら興味を持たない。愛とは法律で裁くことのできるものではない、それを彼は知っていたのだろう。そんな彼は自分のささやかな人生とその愛のみに喜びを感じて生きる内向的な男として描かれる。そしてそれは、当たり前のことだが我々と何も変わらない、己の幸せを願いながら生きる男の姿だ。ゲイであろうとヘテロセクシュアルであろうと、幸せの形は変わらない。だからこそ、ゲイであるだけで、差別や暴力が許されることなど決してない、映画は、ラーマチャンドラの生き方を通してそんなことを語りかけるのだ。
インドにおけるセクシャル・マイノリティを描いた映画3作『Aligarh』『Chitrangada』『Fire』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:マノージュ・バージパーイー、ラージクマール・ラーオ (2016/ ヒンディー語/ 118分))
☆この作品の社会派度:850点

■恐怖症 (原題:PHOBIA) / 監督:パワン・クリパラニ


●テーマ:広場恐怖症の女を襲う怪異。
《物語》新進アーチストのメヒカはパーティーの夜に乗ったタクシーの運転手に暴行を受ける。それ以来彼女は神経を病み、パニック障害広場恐怖症を発症してしまう。メヒカの男友達シャーンは彼女を憐れみ、彼のアパートに暫く間借りすることを許す。しかしそのアパートの部屋で、メヒカはありえないものの気配を感じ、そこにいない筈の誰かの姿を目撃してしまう。
物語は主にたった一つのアパート住宅の中だけで展開する。そしてこの映画のキモは、主人公が広場恐怖症であるばかりに、恐怖の漂う部屋から逃げることが出来ない、という部分だ。得体の知れない"何か"が出没する部屋も怖いが、部屋を出たくても出られない主人公が、助けを求めることさえできず、出口のドアの前で、苦悶の形相を浮かべながらパニックに駆られる姿もまたコワイ。
グロテスクさやショッキングさで煽ってゆくホラーではなく、不安と恐怖でじっくりと盛り上げてゆくホラーであり、さらにクライマックスに行きつくまでの伏線とその回収の様が鮮やかなシナリオを成しており、最後に「そういうことだったのか!」と感心してしまった。いわゆるサスペンス構造なのだが、本質はホラーであると言ってしまってもいいだろう。
様々な謎と疑問を配し、そしてそれがサスペンスを生み不安を生むといった構成がいい。ミニマルな舞台設定ではあるが必要最低限の登場人物を効果的に配し、彼らの行動によりさまざまな疑心暗鬼を煽ってゆく様も丁寧だ。インド・ホラー『Phobia』は小振りな作品でもあるけれども、見た目の仰々しさに頼らない確かなサスペンス演出が光る秀作だと感じた。
広場恐怖症の女を襲う怪異〜映画『Phobia』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:ラーディカー・アープテー、サティヤディープ・ミシュラ (2016/ ヒンディー語/ 112分))
☆この作品のおしっこちびり度:999点

■ガッバル再び (原題:GABBAR IS BACK) / 監督:クリッシュ


●テーマ:社会の不正は俺が正す!
《物語》10人の税務官が誘拐され、1人が縛り首に遭った。その後「ガッバル」と名乗る謎の男から犯行声明があり、彼ら税務官は汚職を繰り返す社会悪であることをメディアに広めた。一方、大学教授のアディティヤは事故を起こした女性を病院に連れてゆくが、不必要な検査と法外な治療費の請求を目の当たりにしたアディティヤは一計を案じて病院の不正を暴き、それをメディアに公表してしまう。事実を知り怒り狂った市民は病院で暴動を起こすが、その監視ビデオを見ていた大企業CEOパテルは驚愕する。ビデオに映っていたアディティヤは、5年前パテルの違法建築により倒壊したビルで妻を失い、抗議に訪れたところを殺した筈の男だったのだ。

「法が裁かぬ社会の悪を、天に代わって成敗する!」といった物語は数々ありますが、そんな中この作品はより政治的なメッセージを盛り込んだ物語として完成しています。主人公ガッバルが裁く悪はマフィアや連続殺人犯といった犯罪者ではなく、社会のシステムの中で不正を行い甘い汁を吸う役人や病院院長、企業トップなど強力な権力を有するものたちなんです。ですから当然そのメッセージは「社会をよりよいものに変えていこう!」となるんですね。しかし主人公は市井の市民としての登場し、彼の行動の背後には「正義の鉄槌」であるのと同時に個人的な怨念が存在しています。そういった情念の描かれ方があるがゆえに、単なる「正義の男の物語」というだけではない、より感情に訴えかける物語として観ることができました。
社会の不正は俺が正す!〜映画『Gabbar Is Back』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
(出演:アクシャイ・クマール、シュルティ・ハーサン 特別出演:カリーナー・カプール、チトランガダー・シン (2015/ ヒンディー語/ 127分))
☆この作品の大暴れ度:700点

■私が恋した泥棒 (原題:MONCHORA) / 監督:サンディープ・レイ


●テーマ:改心して働き始めた泥棒。彼の目の前に高価な宝石が。盗る?それとも?
(※この作品は観ていないのでIFFJホームページからのコピペでお茶を濁しておきます)
・あらすじ:泥棒のアビルはある家で盗みに失敗するが、その家に住むナンダーに、改心して祖父のもとで働くことを条件に逃がしてもらう。働き始めたアビル。ナンダーとの恋も芽生えるが、家宝の宝石を見て泥棒の本能がうずき出す。
・見どころ:サタジット・レイの息子サンディープ・レイ監督によるヒット作。軽妙なタッチのロマンチック・スリラー。2015年に日本でも公開された『女神は二度微笑む』で個性的な殺し屋ボブを演じた、シャーシュワト・チャテルジーも出演。
【見どころ要素】
(1) ドラマ
(2) ロマンス
(出演:アビル・チャテルジー、シャーシュワト・チャテルジー、ライマ・セーン (2016/ ベンガル語 / 135分))
☆この作品の泥棒度:??点