バンクシー出没にニューヨークは大騒ぎ〜『BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク』

BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク【日本語版】
随分前からゲージツには興味が無くなってしまったし、美術館にも行かなくなった。オレのさもしい日常に、ゲージツやら美術館やらがなんだかそぐわなく思えてきたのだ。そんな中バンクシーはいまだ好きなアーチストなんだと思う。洋書屋で(まあ、こういう所ももう行かないが)何も知らずバンクシーの作品集を見つけた時はそれなりにショッキングだった。エクジットなんちゃらいう映画も観たな。やってることも面白いと思ったよ。例の「Dismaland」も近所で1000円ぐらいでやってたら行きたかったね。

バンクシーについて何かを語るような語彙は持ち合わせていないが、あいつの皮肉さが多分好きだったのだろうと思う。作品も、ただクオリティが高いだけではなく、どこか生々しく感じるんだ。厳めしく権威主義的な美術館ではなく薄汚い裏道に忽然と現れる所や、多くが安っぽいグラフィティ・アートの手法をとっている所や、額縁に飾られることなく(飾られているものもあるが)壁の上で朽ちるか消されてしまう運命にあるなんてところもいい。

そんなバンクシーが2013年10月、ニューヨークに出没し、一ヶ月かけて日毎夜毎どこかに作品を残して去ってゆく、なんていうことが行われていたのらしい。バンクシー作品観たさに好事家ニューヨーカーたちは西へ東へ狂奔し、警察やら怪しげなバイヤーまで登場して大騒ぎ、その一部始終は『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』というタイトルの映画に収められ日本でも3月に公開されたらしいが、なぜだか観ていない。きっと映画館でスノッブ気取った連中の顔を見るのが嫌だったんだろう。

そんなわけで映画の存在は忘れていたが、その時の写真集が出ていたのを知り、ちょっと買ってみた。本のタイトルは『BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク』、バンクシー・ファンであるレイ・モックなる人物がその時のバンクシーの作品を写真に収めたものをまとめた写真集だ。全体的に「ああ、バンクシーらしいな」という作品ばかりで、それはつまり特別驚かされるような作品は無かったということなんだが、しかし「一ヶ月間ニューヨークに出没して作品を残す」という行為自体が今回の趣旨だったのだろうから、個々の作品を云々することはあまり意味が無いだろう。

だからこの作品写真集、もともと美術書の解説なんてまるで読まないオレが、今回に限って著者レイ・モックが写真に添えた文章を全部読んでみた。そこに書かれた「どんな一ヶ月だったのか」を含めて初めて「ニューヨークのバンクシー」を知ることになると思えたからだ。まあ、レイ・モックの文章はそれほど造詣のあるものではなかったが。それにしても見逃した『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』、早くソフトにならないかな。買って観てみたいな。(↓は映画の予告編)

BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク【日本語版】

BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク【日本語版】