移植用心臓を運べ!タイムリミットは2時間半!〜映画『Traffic』

■Traffic (監督:ラジェーシュ・ピッライ 2016年インド映画)


緊急心臓移植を要する女の子を救うため、移植用の心臓を積んだ警察車が大渋滞のムンバイ/プネー間150キロを疾走する!タイムリミットは2時間半!しかしそこで思わぬ事態が!?という2016年に公開されたサスペンス映画『Traffic』です。しかもこの映画、チェンナイで起こった実話に基づいて製作されているそうなんですね。
出演は『Gangs of Wasseypur-Part1』(2012)、『Aligarh』(2016)、『Tevar』(2015)のマノージュ・バージパーイー、『Tanu Weds Manu』(2011)、『Bang Bang!』(2014)のジミー・シャーギル、『Veer-Zaara』(2004)『ミルカ』(2013)ディヴィヤー・ダッタ、『女神は二度微笑む』(2012)のパランブラタ・チャタルジー。監督はマラヤラム映画界で活躍するラジェーシュ・ピッライ。この映画自体も彼自身が監督したマラヤラム映画のセルフ・リメイクになります。

《物語》2008年、インドのプネー。俳優のデーヴ・カプール(プローセーンジト・チャタルジー)の娘は重い心臓病で入院しており、緊急の心臓移植をしなければ今日にも命を失う状態だった。一方、ムンバイではある青年が交通事故に遭い脳死状態に至る。急遽彼の心臓を移植することが決定し、ムンバイ/プネー間を搬送することになったが、悪天候により空路は使えず、陸路を行かざるを得なかった。その距離150キロ、さらに道は恐ろしいまでの交通渋滞にみまわれていた。不可能とも思われるその作戦に交通巡査のゴードボーレー(マノージュ・バージパーイー)らが挑む。タイムリミットは2時間半。

ムンバイ/プネー間150キロとはいいますが、日本に当てはめると東京駅から静岡県富士駅、長野県軽井沢駅ぐらいまでの距離になるようですね。日本に当てはめてみましたがやっぱりピンときませんね。さらに150キロの距離を2時間半といいますと、渋滞も信号も無ければ時速60キロもあれば辿りつける計算になりますから、もっと飛ばせばなんとかなりそうじゃないですか。もちろんこれは数字の上だけの話で、映画じゃムンバイは大渋滞なわけで、搬送命令を出されたムンバイ警察交通局長のグルビール(ジミー・シャーギル)さんなんかは「無理っすよ!できませんよ!」と最初断ったぐらいなんですよ。

でも交通警察だろー交通規制かませりゃなんとかなんじゃね?と思ってたらやっぱり規制入れちゃって、あーこれだったらなんとかなるよねーと観ているほうは思います。でもこれじゃあサスペンス映画として盛り上がりに欠けてしまいますね。TVの「世界仰天ニュース」みたいな番組で5分とか10分かけりゃあ説明できてしまう物語になっちゃいます。ところがですよ。ここでとんでもないことが起こっちゃうんですよ!「こんな時にまさかこんなことが!?」という展開に思わず唖然呆然ですよ!

それと併せてねー、搬送車は1台だけしかいなくて、「他の車やとかバイクで先導しろよ!」と思うし、「カーナビもないのかよ!」と思ったし(一応2008年という設定なんだけど)「何でこんな時お祭りやってんだよ!邪魔だよ邪魔!」とも思ったんですが、そこは全部「インドだから」ということで無問題だということにしておきましょう!いや問題ですが!

そんなこんなの複合的な悪事情と、それと例の「とんでもないこと」のおかげで、中盤からクライマックスにかけて「なんじゃこりゃ!?どうなっとんのじゃこりゃ!?」と大いに盛り上がってくれました。ただ、最初の40分ぐらいはドナー家族と病気の家族の愁嘆場が描かれて少々出足は遅いです。その辺優しい目で観てあげれば100分という上映時間、サクッと観られて楽しめる物語なんじゃないかな。
http://www.youtube.com/watch?v=IGXw0NMwcS8:movie:W620