3人の娘に惚れた3人の男の大騒動!?〜映画『Housefull 3』

■Housefull 3 (監督:サージド-ファルハド 2016年インド映画)


お金持ちの美人3人娘の恋した3人の男。しかし3人娘のお父さんは娘を嫁にやりたくない!男3人はなんとかして結婚に漕ぎ着けようと策を弄するが!?人気コメディシリーズ『Housefull』第3弾、『Housefull 3』であります。主演は『Housefull』シリーズでお馴染みアクシャイ・クマールとリテーシュ・デーシュムク、今回の新メンバーとしてアビシェーク・バッチャン。ヒロインにジャクリーン・フェルナンデス、ナルギス・ファクリー、リサ・ヘイドン。さらにボーマン・イラーニーとジャッキー・シュロフが脇を固めます。この作品、つい先ごろインドで公開され大ヒットを記録しましたが、日本でも上映会が開催され早速観に行って参りました。

《物語》ロンドンの大邸宅に住む富豪バトゥック・パテル(ボーマン)には愛しい3人の娘がいました。3人の名前はそれぞれガンガー(ジャクリーン)、ジャムナ(リサ)、サラスヴァティ(ナルギス)。お年頃の3人には交際している男性がいます。彼らの名前はサッカー選手のサンディ(アクシャイ)、カーレーサーのテディ(リテーシュ)、ラップミュージシャンのバンティ(アビシェーク)。しかし娘を嫁にやりたくないバトゥックはインチキ占星術師をでっち上げ、「もしも〇〇な男を連れて来たら父親は心臓発作で死ぬ!」と嘘の予言をします。それは「家に足を踏み入れた男」、「父を見た男」、「父に声を掛けた男」です。黙っていられないのは3人の男、彼らはそれぞれ「下半身不随」、「盲目」、「聾唖」のふりをしてまんまと父親の前に姿を現します。しかしそんな嘘もだんだんほころび始めて……。

さてまず最初にざっくり『Housefull』シリーズのおさらいをしてみましょう。

負け犬男の起死回生を賭けた七転八倒を描くドタバタコメディ〜映画『Housefull』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ(監督:サジード・カーン 2010年インド映画)
男4人・女4人・父親4人が、結婚を巡って大騒ぎ!?〜映画『Housefull2』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ(監督:サージド・カーン 2012年インド映画)

『Housefull』シリーズは1、2作目とも大好評で迎えられましたが、その後監督のサジード・カーンはこんなコメディ映画を撮って大失敗しています。

そっくりさんが3組!?インドのしょーもないドタバタ・コメディ映画『Humshakals』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ(監督:サージド・カーン 2014年インド映画)

自分はこの映画、大好きなんですけど、インドでの評判はケチョンケチョンだったみたいですね。それでなのかどうなのか、今回の『3』は監督コンビ、サージド-ファルハドにバトンタッチされているんですね。サージド-ファルハドはもともと『Singham』『Bol Bachchan』『チェンナイ・エクスプレス 愛と勇気のヒーロー参上』などのシナリオ担当者でした。

お犬様の相続した遺産を狙え!?〜映画『Entertainment』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ(監督:サージド-ファルハド 2014年インド映画)

この監督交代劇が吉と出るか凶と出るかが今作の見所となるんですが、実際観たところ、「全体的にあっさりさっぱり小振りになったかな」といった感想です。例えば『1』は上映時間が155分、『2』は160分でしたが、この『3』は134分。上映時間だけから作品の良し悪しを判断する訳じゃありませんが、今までの『Housefull』シリーズが「しつこく・くどく・どこまでも引っ張りながら多数の登場人物が入り乱れくんずほぐれつの大騒動になる」部分で魅力があったところを、この『3』は妙にすっきりしてて、ネタを全然引っ張らないんですよ。その辺が上映時間にも反映されているんじゃないのかな。

自分はこれまでのシリーズの長時間に渡るどこまでもしつこいコテコテさを予想して、体力を温存しながら若干身構えつつ劇場で観ていたんですが、意外にあっさり終わったものですから「え?もう終わったの?」と思ってしまったぐらいです(それでも134分なんだけどね)。じゃあつまらなかったのかというとそうでもなくて、結構楽しんで観たんですけどね。劇場で英語字幕でコメディということから、全部のギャグを理解することは無理でしたが、それでも大笑いして観ることができましたね。ソフト化されたら是非購入して、今度はきちんと字幕を確認してもう一度楽しみたい、と思えたぐらいです。ギャグのネタはどれも大変下らないし、子供じみているといえばそれまでなんですが、だからこそ言葉のよく分からない自分でも大いに笑えたし楽しめたんですよ。気軽に観れるバカ映画としては十分なセンスではないでしょうか。

確かにネタの引っ張り具合が足りない分で小振りにはなっていると思います。主人公男性3人の「嘘」が、後半から割とどうでもよいものになってしまうからです。インド・コメディならここで「嘘に嘘を塗り固めた挙句、にっちもさっちもいかなくなる」部分に面白さを持ってくるのですが。中盤から登場するジャッキー・シュロフ扮するある男は、そんな物語に十分テコ入れすることに成功していますが、同じく登場する"3人のコワモテ男性"は物語を引っ掻き回しはしても、あまり効果的に生かされていません。しかしそれを補うのがアクシャイの二重人格演技。このジキルとハイドみたいなアクシャイ、メッチャ怖い顔をして暴れるんですが、この「危なさ」が作品の面白さに寄与していました。それと、アビシェークの徹底的な楽屋落ちネタ!何が登場するかは書きませんが、インド映画の好きな人ほど笑い転げること必至でしょう!歌と踊りもいい湯加減で登場し、「あーボリウッド娯楽作観たなー」と良い気分で劇場を出ることができました。