炭鉱大パニック!『Kaala Patthar』 / 親の敵を成敗だ!『Naseeb』【アミターブ・バッチャン特集 その2】

■炭鉱大パニック!〜映画『Kaala Patthar』 (監督:ヤシュ・チョープラー 1979年インド映画)


インドの炭鉱町を舞台に、男同士の友情!ぶつかり合い!乙女との恋!経営者との対立!などなどが描かれる作品です。そしてクライマックスには大規模な炭鉱事故というパニックも盛り込まれるんですな。原題の「Kaala Patthar」 は「黒い石」という意味。主演はアミターブ・バッチャン、シャシ・カプール、監督にヤシュ・チョープラー。彼らのコラボレーションは『Deewaar(1975)』『Kabhie Kabhie(1976)』『Trishul(1978)』に続いて4作目となるそうです。

《物語》かつて客船の船長だったヴィジェイ(アミターブ)は海難事故による不祥事を起こし、今はしがない炭坑夫に身を落としていました。ヴィジェイは鉱山技師のラヴィ(シャシ)と友人となり、また炭坑の女性医師スーダ(ラーキー・グルザール)との間にもほのかな恋心が芽生えます。そんなある日脱獄犯のマンガル(シャトゥルガン・シンハー)が炭坑町に逃げ込んで坑夫になりすまし、ヴィジェイと一触即発の関係になります。さらに技師ラヴィは現在掘り進んでいる坑道の危険性を経営者に訴えますが、経営者は全く耳を傾けず、そして遂に事故は起こるのです。

炭鉱を舞台としたインド映画というと『Gangs of Wasseypur』『Gunday』を思い出しますが、それもそのはずインドは中国アメリカに続いて世界第3位の石炭生産国だからなんですね。この『Kaala Patthar』ではヴィジェイことアミターブが終始無精髭に煤まみれの真っ黒い顔で登場し、なかなかに男臭さを演出しています。炭坑町はやさぐれた坑夫だらけで、その労働は過酷を極め、全体的にも男臭さ汗臭さ満開の作品といえるでしょう。しかしそんな中でなぜかいつも真っ白なズボンを履いているヴィジェイに彼のジェントルマンぶりがうかがえます。きっと毎日こまめに洗い、漂白までしているのかもしれません。

そんなヴィジェイと絡むのが脱獄犯のマンガル。煮ても焼いても食えない悪党の彼ですが、敵か味方か!?といった部分で面白さを加味しています。しかし全体的に登場人物が多すぎるような気もします。ヴィジェイ、ラヴィ、マンガルの主要3人にさらにそれぞれ恋愛相手が出てくるので散漫になっちゃうんですよ。そんなドラマですが見所はやっぱりラスト30分に渡る大事故の描写です。浸水し坑道に噴き出す水水水、パニックに至る坑夫たち、少しでも多くの命を救おうと主人公たちと、この辺で大いに盛り上がってくれます。しかし落盤してきた岩が水にプカプカ浮いてモロ発泡スチロールと分かるのがちょっとお茶目ではありますが!

■親の敵を成敗だ!〜映画『Naseeb』 (監督:マンモーハン・デーサーイー 1981年インド映画)


かつて父を殺し、現在のうのうと金持ち生活を送っている男たちを成敗だ!とアミターブ・バッチャン演じる主人公ジャンが暴れまわる1981年公開のインド映画です。とはいえ、この時代のインド映画なもんですから、それだけではない盛り沢山の内容となっています。共演はジャンの友人役にシャトゥルガン・シンハー、ジャンの弟役にリシ・カプール、ヒロインにヘマ・マリニ。

冒頭では宝くじの高額当選券を巡り、友人同士の裏切りと殺人、そして陰謀がドロドロと描かれ、固唾を呑んで見守ることになります。そして10年の歳月が流れ、金を奪った連中はホテル経営で金持ちとなり、殺された男の息子ジャンは何も知らずにそのホテルでウェイターをしています。しかもジャンの友人というのが実は父を殺した男の息子、というのが因果を感じさせますよね。そしてそのウェイターを演じるのがアミターブ・バッチャン。冒頭はシリアスだったのに、ウェイター姿のアミターブがにこやかな笑顔で歌ったり踊ったりし始めるしているもんですからちょっとずっこけます。ただやっぱりアミターブ、たっぱがあって手足が長いから踊りが映える。このシーンでは往年のインド映画名スターが総出演なのらしいのですが、この時代のインド映画には暗いので自分には分かりませんでした…。

その後主人公ジャンが歌ったり踊ったり、恋や友情にハートを焦がしたり、ストリートファイトで逞しさを見せつけたかと思うと酔っぱらってたちの悪い兄ちゃんになったりしてなかなかに忙しい展開が続きます。そして死んだ父は生きていた!とびっくりさせ、親父を不幸な目に遭わせた連中に復讐してやろうぜ!という流れになり、次から次にエピソードの盛り込まれた娯楽映画に仕上がっているんです。クライマックスなんて復讐に赴いたジャンと仲間たちが何だか知らないけど全員コスプレしてる!しかもそのコスプレがなんだか脈歴が無い!君たちはゴレンジャイか!というサービス満点ぶり。しかしいかんせん全体的にとっちらかり過ぎているもんですから観ていて集中力が続きません。まあ当時のマサラ〜な映画の標準的な構成なのでしょうが、ちょっとオレには辛かったなあ。とはいえインドでは大ヒットし、ブロックバスター映画として記録されているらしいんですけどね。