世界びっくり紀行『クレイジージャーニー』のDVDを観た

クレイジージャーニー [DVD]
いつも読んでる雑誌「TVBros」(雑誌はこれと「ファミ通」を読んでいる程度のしょうもない大人なんである)で「クレイジージャーニー」なるTV番組のDVDが紹介されていて「なんだこれは」と思ったのである。もともとTVを観ない人間なので(こういうこと書くと「TV観ないアピールしやがって」とか言われそうだが、TV番組が下らないから観ないのではなくもっとさらに愚劣で無意味なネット記事を読んでいるほうが好きなだけなのである)、この番組のことは知らなかったのだが、これまでの番組内容の紹介を読んでいても「ぶっ飛んだことを好きでやってる人たちがいるなあ…」としみじみ感嘆させてくれたのだ。そしてどうやらそのコンセプトとするところは「独自の目線や強いこだわりを持って世界や日本を巡る人々(=クレイジージャーニー)がスタジオに集結し“その人だから話せる”、“その人しか知らない”…常人離れした体験談を語る」というバラエティ番組なのらしい。
例えばアメリカあたりだと「jackass」あたりのエクストリームな馬鹿アホまぬけ行為に体を張ったしょうもない人たちがいたりするのだが、この「クレイジージャーニー」はそういった徹底的なナンセンスさではなく、世界や日本の危険ともいえる場所に立ち入り「なんでそこまで突き詰めるのか」といった過剰な入れ込み方をするクレイジーともいえる人たちを紹介しているのだ。「なんでそこまで」というかそれは「それが好きだから」でしかないのだが、番組は彼らの語る驚異の世界を楽しむだけではなく、そんな世界に飛び込もうとする彼らの「偏愛」振りを掘り下げようとしているのらしい(DVDだけを観た感想だが)。また、番組の進行を松本人志・設楽統・小池栄子が行っていて、この辺でドキュメンタリーではなくバラエティ番組らしさを出している。
DVD『クレイジージャーニー』は2枚組みとなっており、以下の番組放送分が収録されている。

DISC1
「マンホールタウンに潜入」 - 丸山ゴンザレス(2015年4月17日放送)
「恐怖と神秘の洞窟探検」 - 吉田勝次(2015年5月14日放送)
「アラスカに取り憑かれた男」 - 松本紀生(2015年5月29日放送)
DISC2
「世界四大廃墟巡礼の旅(前編/後編)」 - 佐藤健寿(2015年6月11日、18日放送)
「マサイ戦士の妻」 - 永松真紀(2015年6月25日放送)

それぞれの回のざっくりした内容と感想を書くと、まず「マンホールタウンに潜入」は危険地帯ジャーナリストの丸山ゴンザレスという人がルーマニアのマンホール生活者をルポしたもの。これはチャウシェスク政権崩壊後のルーマニア経済悪化と、世に溢れたいわゆる"チャウシェスク・ベイビー"たちの現在を扱ったものなのだろうが、その辺にはあまり言及せずバラエティ寄りの視点の取り方に終始していまひとつノレなかった。
次の「恐怖と神秘の洞窟探検」あたりからジワジワ来始める。これは「国内外1,000以上の洞窟を探検した男」洞窟探検家の吉田勝次が紹介されるのだが、「まあ、好きでやってるんだしなあ」と思って観ていたら、次第に「いやそれ普通に危ないって!死ぬって!」と思わせるエピソードが語られ始め、『クレイジージャーニー』のなんたるかを徐々に思い知らされることとなる。
「アラスカに取り憑かれた男」は「1年の大半をアラスカの大地で過ごし、写真を撮り続ける男」アラスカ写真家の松本紀生を紹介。零下30度という厳寒のアラスカで撮られるオーロラの写真には素直に驚かされるし、夏のアラスカの動物たちの写真もまた美しい。同時に、松本氏がその極限状態の中でどう毎日を過ごしているのかが語られる部分がやはり面白い。冬のアラスカでしたウンコって、環境保持の為に全て持って帰るんだって!?
そしていよいよ「世界四大廃墟巡礼の旅」前編・後編。これは以前拙ブログ記事世界26ヶ所の名だたる廃墟を収めた写真集『世界の廃墟』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミで紹介した奇界遺産フォトグラファー・佐藤健寿が登場。紹介されている廃墟は:

1イギリス「水辺に浮かぶ廃墟」…マンセル要塞
2ブルガリア「山頂にそびえる巨大廃墟」・・・ブルガリア共産党ホール
2ベルギー「廃墟マニア憧れの冷却塔」・・・パワープラントIM
4ウクライナチェルノブイリ」・・・正確には遺棄された原子力発電所従業員居住都市プリピャチ

なにしろ最近廃墟付いているオレは興味津々で観ていたが、本やネットの写真で観る以上に、動画映像で観る廃墟は、やはり凄みがある。荒波で接近できないマンセル要塞、巨大な空虚の中をそぞろ歩くブルガリア共産党ホール、どこまでも幾何学的に構成されたパワープラントIM、そしてプリピャチではその光景だけではなくそこにいること自体の危険さがひしひしと伝わる。しかもプリピャチでは巨大秘密レーダーアンテナDuga-3の映像まで飛び出し、さらに放射能に冒されたプリピャチに住む老婆のインタビューまであり充実の内容だ。これを観て思ったのだが佐藤氏は写真集だけではなく記録映像を収めたDVDないしはBlu-rayを出してもいいんじゃないだろうか。
ラスト「マサイ戦士の妻」はアフリカ・ケニアを代表する民族「マサイ族」の戦士に第二夫人として嫁いだ日本人女性・永松真紀が登場。ここでは"結婚"を通してマサイ族の、日本人にはとうてい信じられないような風習が語られるが、これはよくあるドキュメンタリーではあまりとりあげられそうにない"性生活"というある意味下世話な内容に肉薄しており、逆にバラエティ番組のよさが浮き彫りになっていたと思う。
こういった内容はもとより、番組進行の松本人志・設楽統・小池栄子がとてもいい。オレはあまりTVを観ないとは書いたが、松本サンはもともと好きだったし、こうして見てもやっぱりおもしれえなあ、と思える。そしてなにより小池栄子だ。この人はなにか神々しく包容力に溢れた魅力を感じさせる女性タレントだな。それと番組で取り上げられた"クレイジー"な旅人たちというのは、よく話を聞いていると誰もがとても知的であり世界への興味が常に尽きない人たちなのだということがおのずと判ってくる。
以前からTVで観ていたファンの方には番組セレクトに疑問もあったりするだろうし、なんで全話収録での発売がないんだ、という声もあるようだが、DVD2枚組で6番組収録、価格が2970円というのはお徳であり、今まで『クレイジージャーニー』を観たことのなかったオレは十分に楽しめたな。