2015年オレ的映画ベストテン!!

さて今年観たインド映画以外の映画ベストテンをお送りします。実のところ、例によって家でインド映画DVD観るのに忙しくて、今年もそんなに劇場で映画観てないんですよ。あと最近劇場に行くのが億劫になってきてねえ…。年取るとどんどん気力体力衰えてくるんですわ…。そんななので「ベスト10」なんていうのもおこがましくて、むしろ「つまんなかった映画を省いたら10本ぐらいになっちゃった」程度のものです。しかも並べてみたら殆ど大作ばかりでそれほど面白味のないベストテンなんですが、どうかご勘弁を!では行ってみよう!

第1位:マッドマックス 怒りのデス・ロード (監督:ジョージ・ミラー 2015年オーストラリア/アメリカ映画)


もう今年はこれ1本だけで十分なぐらい超弩級の大傑作でしたね。今年No.1どころかオールタイムでベストテンに入れておきたい名作でしょう。この作品自体が今後現れる映画作品の試金石ですらあり、そしてマイルストーンであると言えるでしょう。こんな作品の誕生に出会えたことは本当に喜びです。非常に素晴らしい作品でした。

『怒りのデス・ロード』においてマックスたちは、人智を超えた恐るべき暴虐と不可能にすら思える試練を乗り越えギリギリの生死の境から生還を果たそうとする。そして神話は、その英雄譚は、困難の中に旅立ち、幾多の苦難に出遭いながら、それに勝利して生還する英雄の姿を描く物語である。その姿を通し、不条理な生と死の狭間に生きねばならない人の運命に、道筋を与え、その意味するものを掘り下げてゆくのがこの寓話の本質にあるものなのだ。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はその神話に新たな章を刻み付けた作品であり、我々はそこで展開する原初の物語に、太古から無意識の血の中に存在している英雄たちの姿に、生の本質と、乗り越えるべき運命を見出す。だからこそ我々は魂をも揺さぶる大いなる感銘を受け、そして歓喜するのだ。
マッドマックス、スター・ウォーズ、そして新たなる神話の物語〜映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第2位:スターウォーズ / フォースの覚醒 (監督:J・J・エイブラムス 2015年アメリカ映画)


ルーカスの手を離れた新生SW第1作は、結局のところ従来的なSWという概念から一歩も出ることのない新鮮味に乏しい作品でしたが、にもかかわらずこういう形にしか作れなかっであろうことも容易に想像でき、一つの巨大な文化現象となったSW自体の抱える「業」のようなものすら感じてしまいました。そんな作品を第2位にしたのは、SWという作品大系が既にして映画の範疇を凌駕した「何か」と化していることをまざまざと見せつけられた、という部分があったからです。

さてそれではこの新たなる3部作の1作目である「フォースの覚醒」は何なのか、1〜6作に対して何であるのか、というと、これはもう「再会の物語」である、と言い切っていいでしょう。誰もが知るようにこの『フォースの覚醒』には「ルークの物語」で登場した主要人物たちが総出演しています。彼らが今どこでなにをしているのか?そしてそんな彼らが今回はどのように関わるのか?が今作の焦点です。当然新たなキャラも登場し、物語自体はそんな彼らが中心となって動きますが、彼らの今後の活躍はまだまだ未知数であり、とりあえずはお披露目の形となっています。これらの新キャラにどのように旧キャラがバトンタッチするのかも今後の展開でしょう。そしてこの作品は、多くのSWファンとの、10年ぶりともなる「再会の物語」としても構成されています。物語のそこここに、SWとはこういう物語だったよね?というキーワードがあらん限り詰め込まれ、ある意味これまでの6作のおさらいのような体裁ですらあります。
再会の物語〜映画『スターウォーズ / フォースの覚醒』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック(初回スリーブ仕様)

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 オリジナル・サウンドトラック(初回スリーブ仕様)

第3位:カリフォルニア・ダウン (監督ブラッド・ペイトン 2015年アメリカ映画)


地震でぐっちゃぐちゃになった街と逃げ惑う人間たちの阿鼻叫喚の様子を見てとことん楽しもうぜヒーハー!というパニック映画なんですが、適当なB級映画かなと思ってナメてかかってたら実は相当に良く出来た作品だったのでびっくらこきました。これ、ロック様こと主演のドウェイン・ジョンソンの存在感が物語にぴったりはまっていたからなんですね。やっぱあの筋肉なら大地震とタイマン張ったって勝てそうだもんなやっぱし!

というわけで「グヂャグヂャに崩壊してゆく現代建築(「アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン」ってことな)」の様子を堪能しに劇場に足を運んだオレであるが、いやこれが、破壊だけにとどまらない面白さを兼ね備えた作品で正直感心した。まあなにしろ、最新VFXでこれでもかこれでもかと描写される破壊映像はホントに最高でね、「スッゲエ!スッゲエ!コエエ!コエエ!」と小学生みたいな感想漏らしながら手に汗握って観ておりましたが、まあ実際、物語がちゃんとしてないと、「まあでもそこだけだったよね」てな感想で終わっちゃうんだよね。しかしこの作品、意外とシナリオが誠実に作ってあって、また、飽きさせないような様々な見せ場を作っていて、そういった堅実さも印象良かったんだよな。
大地震のひとつやふたつ、ロック様の力こぶでイチコロだ!?〜映画『カルフォルニア・ダウン』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第4位:ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション (監督:クリストファー・マッカリー 2015年アメリカ映画)


ミッション:インポッシブル」シリーズは新作が出るたびに「最高傑作!」と喚いてるような気のするオレですが、今作もまごうことなき最高傑作でいいのだと思います。というか完全無欠のトム君の作品は「M:I」シリーズに限らずどれも嫌味の無い傑作に仕上がっているという点が凄いですね。観終わった後もあんなシーンやこんなシーンを思い浮かべて「いやーよかったわー」としみじみ感嘆しておりましたよ。

アクションの良さについては言及するまでもないし、ひとつひとつ取り上げて書き出すことも避けるが、今作では一箇所だけ目立ったりということもなく、どの見せ場も流れるように均等に配されることにより、常に驚きの連続で画面に注視することができるのだ。それぞれのロケーションも実に効果的に使っていて目を楽しませた。だいたいポスターでお馴染みの飛び立つ飛行機に掴まったイーサン・ホークが!という絶対の危機の場面しろ、あんな箇所であっさり演じられて次に進む、という大盤振る舞いにびっくりさせられた。これは構成と編集の巧さの賜物だろう。
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』はとても面白かったぞ - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第5位:コードネーム U.N.C.L.E. (監督:ガイ・リッチー 2015年アメリカ映画)


60年代レトロ・テイストがたまらなくそそられる映画でしたね。主演の二人もなかなかに色男なうえに妙なキャラ付けされていて、オレは男なんですがなんだか見惚れてしまいましたよ。そういった「雰囲気」のよく出たアクション作品でした。

まず主人公である二人がそれぞれに癖の強いキャラ分けがされていて面白いんです。二人ともスパイとしては一級の腕前を持っているんですが、ナポレオン・ソロは女好きで手癖の悪いインチキ野郎、一方イリヤ・クリヤキンはメンヘラでブチ切れ易い、といった具合なんです。この二人の持つキャラクターが物語を盛り上げる役割を果たしているんですね。まあ殆どコミカルな展開でですが!そして主演を演じるヘンリー・カヴィルアーミー・ハマー、この二人が男のオレでも見惚れてしまうぐらいいい男に描かれていて、なかなか目の保養になります。ヘンリー・カヴィルは『マン・オブ・スティール』で愁いのこもったスーパーマンを演じていたし、アーミー・ハマーは『ローン・レンジャー』が有名かもしれませんが、むしろ『白雪姫と鏡の女王』のおバカな王子様役が印象に強くて、「お馬鹿な色男させたら抜群だなあ」と一緒に観ていた相方さんが申しておりました。
アメリカとソ連の腕利き諜報部員が手を組んだ!?〜映画『コードネーム U.N.C.L.E.』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

「コードネームU.N.C.L.E.」 オリジナル・サウンドトラック

「コードネームU.N.C.L.E.」 オリジナル・サウンドトラック

第6位:イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 (監督:モルテン・ティルドゥム 2014年イギリス・アメリカ映画)


第2次大戦!突破不可能な暗号装置!その解読に挑む天才数学者!というだけでわくわくさせられますが、それだけではなく様々なドラマが錯綜しながら描かれている部分でとても楽しめた作品ですね。

この作品にはあらゆる要素が詰まっている。不世出の天才のその煌びやかな知性の奔出を垣間見る物語であると同時に、この作品は諜報戦をクローズアップさせた戦争映画であり、その中心となる暗号機エニグマの物語であり、それを打破するために制作された人類最初期のコンピューター誕生の物語であり、それと同時に、一人の男の愛と孤独の物語であり、もう一人の天才数学者ジョーン・クラークを通して描かれる女性民権問題であり、さらにはこの物語のもう一つのキーワードである同性愛への、当時の法律が下した愚劣な無理解と差別の問題である。こうして一つの物語の中に、これらあらん限りの要素がひしめき、それらは相互に化学反応を引き起こしながら、結果的に非常に芳醇で、そして知的な物語として完成することに成功しているのだ。まさに今年を代表する堂々たる傑作のひとつと言っていいだろう。
アラン・チューリングは電子頭脳の夢を見るか?〜映画『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第7位:キングスマン (監督:マシュー・ヴォーン 2015年イギリス映画)


コミック原作ということもあってか、中盤から繰り広げられるハチャメチャな展開が大いに盛り上げてくれました。全体を通して「大英帝国」の匂いをプンプンさせた雰囲気もいかしてましたね。

だが、この作品は、後半において突如【乱調】する。どういったものかは書かないが、なにしろ、突然、【狂う】のである。これを「度が過ぎている」と取るか「ギャハハおもしれえもっとやれ」と取るかでこの作品の評価が分かれるのだと思うが、少なくともオレはこの「狂いっぷり」で一気にこの作品の評価を上げた。そしてこの「狂いっぷり」こそが、監督が「紋切り型」を廃するためにこの作品に持ち込みたかったカラーなのだろうと思う。そもそもこの狂気の在り方は、物語冒頭の著しく馬鹿馬鹿しい肉体破損の描写で予兆があったではないか。監督はこの「馬鹿馬鹿しさ」を早く画面の中に表出させたくてウズウズしていたことだろう。この【乱調】と【狂気】に通底するのは、徹底したシニシズムである。そしてエスタブリッシュメントを地獄の底に叩き落そうとする階級闘争の表出である。これはもう、「モンティ・パイソン」を引き合いに出したくなるような、見事に【イギリス的な狂気】を具現化したものではないか。
メイド・イン・イングランドの狂気〜映画『キングスマン』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第8位:007 スペクター (監督:サム・メンデス 2015年イギリス映画)


なんだか開き直ったような展開はこれまでのクレイグ・ボンド作品のなかでも一番好きな部類に入ります。007はこうじゃなくちゃ。それにしても今年はこの作品も含めスパイ映画の当たり年だった、というのも面白い現象でしたね。

ストーリーとかあえて紹介しませんが、今回の007、なんとなく馬鹿馬鹿しいんですよ。クレイグ・ボンドの「辛気臭い上に世知辛いリアル路線」が、旧007の「飲む打つ買うの三拍子揃った親父スーパーヒーロー」に結構接近しているんですね。まずアクションが、「手に汗握る熾烈な戦いから生まれる緊迫感」というよりも「オッサン無茶しなはってますなあ」という有り得ないものと化しているんですね。冒頭のヘリコプター・シーンなんて「007が操縦士ボコってるもんだからヘリコプターが宙返りしてるわ」と半分笑って観てましたよ。極めつけは翼もげた飛行機で地べた滑走するって、あんたなにやってんだよ007!
《悪の秘密組織》ってことでメシ3杯は行ける映画『007 スペクター』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

「007/スペクター」オリジナル・サウンドトラック

「007/スペクター」オリジナル・サウンドトラック

第9位:マップ・トゥ・ザ・スターズ (監督:デヴィッド・クローネンバーグ 2014年カナダ・アメリカ・ドイツ・フランス映画)


ここの所ずっと、どんよりと暗い作品、シチュエーションのきっつい作品を避けて観るようにしているんですが、クローネンバーグ作品となれば別です。この作品もクローネンバーグ一流の暗くいやらしい世界が口を開けていました。

ではクローネンバーグは映画を通して「現代人の持つ不安」を描こうとしたのか、というとそうではない。クローネンバーグがその程度の文学趣味で満足するわけがない。奴はインテリだが変態、【インテリ変態】なのだ。クローネンバーグはかつて多くの初期作品で「観念の肉体化」、平たく言えば「情念がグヂョグヂョのバケモノの形になって体中の腔という腔から滴り落ちてくる様」を描いた。「観念の肉体化」ならまだ思索的なのに、それが「グヂョグヂョのバケモノ」になってしまうところがクローネンバーグの変態の所以なのだ。この『マップ・トゥ・ザ・スターズ』ではラテックス製のバケモノは確かに登場しない、しかし、この映画に登場する者たち全てが、己の情念の果てに自らがバケモノと化しているではないか。そしてクローネンバーグ映画に登場するバケモノたちが皆おぞましい破滅を迎えるように、この作品の登場人物たちもまたおぞましい破滅へとひた走ってゆくのだ。
ハリウッド大通りの亡霊〜映画『マップ・トゥ・ザ・スターズ』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

第10位:ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜 (監督:テイト・テイラー 2014年アメリカ/イギリス映画)


ファンクの帝王ジェームス・ブラウンの生涯を描いた作品となると音楽ファンとしては見逃せません。再現されるステージもよかったし、JBを演じたチャドウィック・ボーズマンのなり切りぶりも素晴らしかった。

ここで驚かされるのはJBを演じるチャドウィック・ボーズマンの完コピといってもいいほどのJBへの成り切りぶりだ。顔つきこそは違うけれども、仕草や表情、ポーズのとり方はもとより、その声はJBそのものとすら思わせる。さらに目を見張るのがパフォーマンス・シーンだ。ここではチャドウィック・ボーズマンのみならずステージに登場するミュージシャンの動きまでもがJBのステージを完璧にコピーしてみせる。予告編を観た後にYouTubeでJBのオリジナル・パフォーマンスを探して観てみるといい。そしてこれにより、再現とはいえ、映画の中でJBの白熱のパフォーマンスの一端を体験できるというわけなのだ。確かにこれは映画というまがい物かもしれない。しかし、そこにはJBのソウルがしっかりと宿っていることに気付かされるはずだ。
ゴッドファーザー・オブ・ソウル、JBのファンクに酔い痴れろ!〜映画『ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ