キメて行こうぜ!〜映画『Tashan』

■Tashan (監督:ヴィジャイ・クリシュナ・アチャルヤー 2008年インド映画)


3人の男と1人の女が、現金を巡ってド派手な争いに巻き込まれてゆく、という2008年インド公開の娯楽作品です。主演はサイーフ・アリ・カーン、アクシャイ・クマール、カリーナー・カプールアニル・カプールという豪華メンツ。

《物語》コールセンターに勤めながら英語教師をしていたジミー(サイーフ・アリ・カーン)は、プージャ(カリーナー・カプール)という女に頼まれ富豪のバイヤー・ジー(アニル・カプール)に英語のレッスンを始める。ジミーとプージャはいつしか恋仲になるが、ある日プージャはバイヤー・ジーの金を盗み出そうと持ちかけ、まんまと成功する。だがバイヤー・ジーは実は冷酷な顔を持つ裏社会のボスだった。バイヤー・ジーはゴロツキのバッチャン・パンデー(アクシャイ・クマール)を呼び出し、二人と金を探し出そうとする。

うーん…なんというか微妙な作品でした。登場人物同士が騙し騙され、ころころと変わる意外な展開を主軸にしようとした物語のようなんですが、実の所先が読めちゃうんですね。さらに登場人物たちの行動にブレが多く、結局何をしたいのかよく分からないのですよ。ジミーを騙してマフィアの金を独り占めしたプージャはジミーに発見された後妙にしおらしくなってしまうし、ゴロツキの追跡者として派手に登場するバッチャンはジミーとプージャを発見したのに何故か意気投合しちゃうし、さらに金を奪ったプージャは簡単にマフィアに金を返すことを同意しちゃうんですよ。おまけに最初ジミーと恋仲だったプージャが最終的にバッチャン・パンデーとくっついちゃうんですが、ここになんの葛藤も諍いも起こらないんですよ。

だから本来なら「敵か味方か!?」というプロットでサスペンスを盛り上げるところを最終的に「マフィアのボス以外はみんな仲間」とナアナアになってしまうので、観ていてずっこけてしまうんですね。ただしかし、これはこの映画にサスペンスを期待したことによる齟齬で、実はこの映画の主眼とするところはそこではなかったとも言えるんですね。じゃあこの映画は何かというと一つはジミーとプージャ、バッチャン・パンデーとプージャのロマンス展開なんですね。そしてもう一つ、この作品の最大の主眼としたところは「いかにキメてるか」というスタイリッシュ展開にあるようなんですよ。

この作品のタイトル『Tashan』は「Style」という意味なのだそうですが、映画の最中に登場人物たちがちょくちょく「これが俺のTashanさ!」とか「これが私のStyleよ!」とか言い放つんですね。じゃあこの「スタイル」って何かというと、いかにキマってるか、キメてるか、そのキメ方ということみたいなんですね。確かに物語の最中は必要以上にケバケバしい衣装がとっかえひっかえ現れたり、踊りのシーンも妙に前衛っぽかったり、アクションにしてもなんだか過剰なぐらいキメキメな展開を見せるのですよ。かといって「スタイリッシュ」と言えるほどクールじゃなく、ただ単にドギつくアクどくギンギラギンなわけなんですよ。まあこれが思惑の通り成功しているのかは謎なんですが、とりあえずアクションは馬鹿馬鹿しく派手派手にキマってはおりました。この作品は2008年作ですが、意外とこの時期には新しいことをやっていたのかもしれません。

http://www.youtube.com/watch?v=KEazXPDj7a0:movie:W620