アジャイ・デーヴガンが演じるウルトラスーパーバイオレンス・ガイが暴れ狂うマサラアクションムービー『Action Jackson』!

■Action Jackson (監督:プラブーデーヴァ 2014年インド映画)


AJ!AJ!
三白眼に口髭のむさ苦しい伊達男、アジャイ・デーヴガン!
その彼が『Singham』に続き再びウルトラスーパーバイオレンス・ガイを演じる!
その名は『Action Jackson』!
憤怒の表情に鋼鉄の剛腕!両手に握るは日本刀!
AJにたてつく者は地獄で後悔するがいい!
AJ!AJ!ヤツの名はAJ!

インド映画一バイオレンスとターバンの似合う男アジャイ・デーヴガン。というかオレがバイオレンスとターバン以外のアジャイ映画を観たことが無いからかもしれないが(コメディもちょっと観ました)。そのアジャイが2014年、『Singham Returns』に続いて出演したマサラアクションムービー大作がこの『Action Jackson』だ。『Action Jackson』…ゴロはいいが何も考えて無さそうなタイトルである。しかし何も考えて無くても少しも構わないのである。むしろ何も考えて欲しくない…そしてそれを観るオレのほうも何も考えたくない…オレがアジャイ映画に期待するのはグタグダした理屈だのベチャベチャした情緒だのではなく、パキッとカリッとクリスピーにハジケきった軽快なアクションだからである。

『Action Jackson』の物語は、物凄く大雑把に言うとアジャイ扮する苦み走ったバイオンス・ガイが、凶悪なマフィアの軍団を叩き潰す、といったものである。実はもうちょっとアレコレあるのだけれども、煎じ詰めればそういうことなのである。監督はコレオグラファーであり映画監督としても『Rowdy Rathore』、『R...Rajkumar』でガッツンガッツン激しいアクションをキメてくれたプラブーデーヴァ。スマートで踊りも巧い伊達男のくせに泥臭いアクション映画撮らせてもスゴイ、とは卑怯な男である。このプラブーデーヴァとアジャイがタッグを組み、新たなアクション・ヒーローA.J.を生み出したという訳である。さらにヒロインはソーナークシー・シンハー。『ダバング 大胆不敵』ではサルマーン・カーンと、『Rowdy Rathore』ではアクシャイ・クマールと、そして今作ではアジャイと、もう【暴れん坊キャラのガールフレンド】といえばこの人しかいないッ!!という鉄板ヒロインではないか。

さてあんまり物語の内容を説明しなかったのには訳があって、何か書くとネタバレしそうだったからである。物凄いネタ、というわけではないが、オレは途中で「おおそういう話だったのか!」とびっくりしたからである。しかし別の方の感想を読んだら「普通に最初からわかる」といったことが書かれていて自分自身の理解力に著しく不安を持ったのも確かである。まあちょっと書くと同じプラブーデーヴァ監督の『Rowdy Rathore』と若干構造的に似ているかもしれない。プラブーデーヴァ、意外と芸の無いヤツなのかもしれない。まあしかし象を助けに行くアクション映画にばかり出ているトニー・ジャーというタイ人俳優もいるぐらいだから、アクション映画のストーリーに小賢しい小手先の芸なんかいらないんだよッ!ということでいいのかもしれない。いやそういうことにしておこう。

そしてメインとなるアクションが、惚れ惚れするぐらい馬鹿馬鹿しくていい。インドのアクション映画は馬鹿馬鹿しくてナンボ。笑って観られるアクション映画、それがマサラアクションムービーの醍醐味である。アジャイが地球の重力を完全に無視した空中殺法を繰り出すのは当たり前、やられた敵が慣性の法則を無視してぶっ飛んでゆくのも当たり前なのである。アイザック・ニュートン先生がこの映画を観たら高熱を出して臥せってしまうこと必至であり、万有引力の法則も発見されなかったかもしれないぐらいである。しかしここまでならマサラアクションムービーとしてはまだ普通。後半ではなんと二刀流に日本刀を構えたアジャイが障子張りの部屋でザックザックと敵をぶった切ってゆく超展開が待ち構えているのである。さらにBGMは尺八だ…。このあたかもタランティーノ映画の如き何か勘違いしてるジャポネスクが愉快で楽しくて堪らない。ああ…アホアホやん…この段階で既に映画『Action Jackson』は2014年を代表するヒンディー映画に決定したのである。

このアホアホぶりを加速させるのがアジャイの敵となるマフィア軍団だ。ザコキャラは全員赤いスーツ着用、そのザコキャラを率いるのがプロレスラーみたいな巨漢の不細工な顔したキャラだ。この段階で既にショッカーの怪人と戦闘員である。そしてマフィアのドンとなる男は骸骨みたいな禿げ頭にゴルバチョフ書記長の如くベーコンを乗っけ、さらに片目が銀色の光彩をした義眼的ななにかである。まあいわゆるショッカー幹部である。そしてアジャイに横恋慕かました挙句振り向かないアジャイを亡き者にせんとするドンの娘が適度に気の狂ったメンヘラキャラで、これがインド映画では珍しい種類のイカレ具合を見せていて新鮮なのだ。演じているのはマナスヴィー・マムガイという女優だが今後が楽しみである。こんな具合に馬鹿馬鹿しいアクションとコミック乗りの悪役、そしてアジャイの三白眼に眉間の皺と、愉快なものだらけで構成されたマサラアクションムービー『Action Jackson』、評論家の評価は低いようだがだからこそ信用できる傑作である。