帰省 (その3)

この日は昼過ぎの便で東京に帰ることにしていた。時間がまだあったので、弟が宗谷岬を見るため車を出してくれた。丘の上に風力発電のプロペラが見える。

海上に不気味な岩礁が顔をのぞかせている。なにか未知の巨大な生き物のように見えた。

間宮林蔵出発の地。

間宮林蔵の像。遠く樺太の方角を見ているのだそうだ。

宗谷岬に着き、日本最北端の碑の前で弟に記念写真を撮ってもらう。

平和とかなにかそういった類のモニュメント。

遠くに風車小屋。実際は売店か何かなのだろう。

日本最北端の地のラーメン屋に入る。

弟と二人で帆立ラーメンを注文する。醤油と塩。トッピングはちょっと寂しい。

空港の外れには牧草地が広がる。

時間がきたので空港に向かい、弟と別れる。これに乗ってまたあの日常へ戻るのだ。


とまあ、これがオレの4日間の帰省のあれこれである。
病気で入院中の母親を見舞う帰省だったが、見た通りその期間の殆どをあちこちに出掛けて過ごしていた。なにしろ母は薬で眠らされたままだったので、他にどうしようもなかったのだ。
ただ今回の帰省は、母の見舞いだけでなく、暫くぶりに会う弟妹と、お互いの存在を確認し合う意味合いも強かった。情けないことにこれでも長男なのだが、こんな長男でも、弟妹には何がしかの支えになっているようだった。オレの家庭には父はいない。だからオレがどこかで父親代わりだったりもするのだろう。
そして、不義理ながら10数年振りに実家に帰り、自分がなにでどういうふうに生きていた人間なのか再び思い出した。10代を過ごした田舎は、実の所唾棄すべき土地として記憶に刻まれていたのだが、上京から30年余り経ったこの今、この土地を改めて踏みしめて、ああ、ここも、そんなに、悪い場所なんかじゃない、という気すらした。ある意味今回の帰省は、30年を経た、自分と自分の故郷との和解だったのかもしれない。