5億ルピーの密輸ダイヤを巡り上を下への大騒動!〜映画『Apna Sapna Money Money』

■Apna Sapna Money Money (監督:サンギート・シヴァン 2006年インド映画)


マフィアが無くした5億ルピーの密輸ダイヤを巡り、あれやこれやの人々がてんやわんやの大騒ぎを繰り広げちゃう!というインドのスラップスティック・コメディです。ちなみに5億ルピーは日本円にして8億5千万相当。この映画、登場人物が多く、それぞれが集団を成しながら別個に行動しつつ時に交わり合う、といった形で物語が進んでゆきます。しかし決してややこしいわけではなく、大勢の人間がいつもドタバタしまくっている、という部分が可笑しい作品です。ちょっと長くなりますが粗筋を紹介してみましょう。

◎主人公の名はアルジュン(シュレーヤス・タルパデー)。彼は隣家の娘シヴァーニー(リヤー・セーン)に恋していたが、シヴァーニーの父、サティヤボール(アヌパム・ケール)はシヴァーニーの縁談を勝手に決め、花婿の父を呼び寄せてしまう。こんな縁談は破談にしちゃる!ということでアルジュンが呼んだのがペテン師の従兄弟、キシャン(リテーシュ・デーシュムク)。


◎一方、5億ルピーもの密輸ダイヤをハイヒールに隠し列車に乗っていた運び屋の女サーニヤーは、検問をやり過ごす為にダイヤの入ったハイヒールを同室の男の荷物に忍ばせた。しかし実はその男、アルジュンの元に向かう途中だったキシャンだった!結局サーニヤーはその場で連行されるが、ハイヒールの中身を知らないアルジュンはそれをシヴァーニーにプレゼントしてしまう!


◎キシャンは花婿の父になりすまし、メチャクチャをやらかしてまんまと破談に持ち込む。さていざ帰ろうとしたキシャンの前に現れたのが以前キシャンが騙したネパール人ギャング御一行様。こりゃヤバイ!と咄嗟に隠れた家で女装したキシャン、その場は何とかやり過ごすが、今度はたまたま通りかかったシヴァーニーの父サティヤボールに「うおおお、こんな美人ちゃん見たことない!」と見初められてしまう!!


◎紛失したダイヤを取り返す為、インド人マフィア御一行様がムンバイに乗り込む。ネパール人マフィアもダイヤの存在を知りこれを奪おうとする。さらに運び屋の女は警察官に脅され、やはりダイヤを探し始める。他方、主人公アルジュンもダイヤの存在を知り、近所に住む重病の女の子の手術費用になれば…と考えた。というわけで、主人公アルジュン、インド人マフィア、ネパール人マフィア、運び屋の女、その他もろもろが入り乱れ、ダイヤの争奪戦が始まる!

…とまあこんな具合に物語が進んでゆくわけですが、いやあ、インド・コメディはそんなに沢山観たわけじゃないけど、これまで観た中で一番ドタバタ指数が高かった作品ですね!物語それ自体よりも、登場人物たちがなーんだかオカシい人たちばかりで、彼らが常に忙しなく変なことをやりまくってくれているんです。この映画の【おかしい】見所をちょっと並べてみましょう。

【1】ネパール人ギャングがおかしい
ネパール人ギャングという段階でいろいろおかしいです。変な服着てます。変な喋り方してます。変な歌うたってます。動きもおかしいです。なぜだか時々踊ったりもします。もう完璧にイロモノ扱いです。
【2】インド人ギャングがおかしい
とってもコワ〜イ登場の仕方するんですが、だんだんおかしなことになってきます。ムンバイから来るのになぜかコンテナに入ってやってきます。ムンバイに来てからは、なぜだかずっと墓場に居座っています。なんでだか分かりません。
【3】花婿の父がおかしい
キシャンがなりすました花婿の父のホンモノのほうは、キシャンの策略でネパール人ギャングに拉致されていました。で、この花婿の父が映画が始まってからず〜っとボコられているんです。何かあるたびにボコられ、後半はもうボロボロなんですが、意外と元気がいいのが気に食いません。あといつもキーキー甲高い声で喋るので鬱陶しいです。基本的単なる小汚いジジイです。
【4】ムンバイのギャングがおかしい
インド人ギャングの協力者として登場します。でもギャングのくせに牛舎経営してます。牛のウンコだらけです。もうなんだかひたすら田舎者の雰囲気を漂わせているのが悲しいです。
【5】ダイヤを追う警官がおかしい
運び屋の女サーニヤーを捕まえた警官はヘボで名が通っていて、捜索の度にお約束のようにガセを掴まされます。上司からは「どうせまたガセだろ」と新洋されず、留置所に入ってるチンピラからは「いつもヘボかます愉快な警官」として大笑いの種となっています。
【6】キシャンの女装がおかしい
おかしい、というよりも似合いすぎだ!大丈夫なのかキシャン役のリテーシュ・デーシュムク!?その後の人生に影響なかったのか!?女装したまま拉致監禁され、あわや貞操の危機が!?というシーンはバカバカし過ぎて頭が壊れそうでした。
【7】シャーストリーの親父、サティヤボールがおかしい(おかしすぎる)
しかしキシャンの女装すら食ってしまったのがこのおっさん、サティヤボール。女装姿のキシャンに大いにベタベタしながら愛を語る姿はそれだけで笑わさせてくれますが、それよりも何しろ動きがおかしい、というか動きが怪しすぎる。そしてこの妙に腰の軽い動き方、グルーチョ・マルクスビートたけしあたりの、喜劇俳優やボードヴィリアンの動きを思わせるんですよ。実はこの変な動き、そもそも映画では半盲という設定だったというのを観終わってから知ったですが、それにしても可笑しすぎました。このおっさんを演じたアヌパム・ケール、結構な俳優とお見受けしました。

こんな具合に、おかしな人たちおかしなドタバタが速いテンポで次々に繰り出されますが、これがどれもイカレてるとしか言いようのない部分がインド映画コメディとして新鮮でした。さらにアルジュンと女装じゃないキシャンの恋の行方も描くこの物語、お腹一杯まで楽しめる作品に仕上がっていましたよ。

http://www.youtube.com/watch?v=m2qB16oWYTs:movie:W620