サルマーン・カーンが『ダバング 大胆不敵』に先駆け出演したアクション映画『Wanted』

■Wanted (監督:プラブデーヴァ 2009年インド映画)


現在大ヒット公開中の『ダバング 大胆不敵』で主役を務めたサルマーン・カーンが、『ダバング』に先駆け2009年に出演したアクション映画です。

主人公の名はラーデー(サルマン・カーン)。彼は金の為なら殺しすら厭わないヤクザ者だ。銃の腕も格闘も誰にも負けはしない。ただし一目惚れしたジャーンヴィー(アーイシャー・ターキヤー)にはちと弱い。しかしジャーンヴィーはいつも自分を守ってくれるラーデーには感謝しているものの、ヤクザ者であることを気にしていた。

ところでラーデーはムンバイの街をしきるギャング団に手を貸していたが、ある日そのボスが殺され、替わりにギャング団の大ボス、ガニー・バーイー(プラカーシュ・ラージ)がバンコクからやってくる。ガニー・バーイーはムンバイの街を恐怖に陥れるある計画を持っていた。しかしそのガニー・バーイーがムンバイ入り直後警察に秘密裏に拘束されたため、ギャング団は警視総監の娘を拉致、ガニー・バーイー釈放を要求する。その時ラーデーは「若い娘を誘拐とはやりすぎたな…」と暗く目を輝かせ始めた。

物語だけ書きだすと相当シリアスな犯罪ドラマのようにも見えますが、実際には気は優しくて力持ちな主人公ラーデーの、ちょっぴりコミカルでロマンチックな恋愛模様と、向かう所敵なしの爽快なアクションがメインとなる物語なんですね。そしてそこにマフィアの陰謀や殺しが同時進行で描かれ、メリハリのあるものとして描かれてゆくのですよ。そしてアクション・シーンともなるとサルマーン・カーンが無敵の超人となって暴れ回る!というものなのですね。

もちろんインド映画らしい極彩色の歌と踊りがふんだんに盛り込まれおり、徹頭徹尾エンターティンメントとして仕上がっているんですね。しかもこの映画、監督のプラブデーヴァ自体が、「インドのマイケル・ジャクソン」と呼ばれるほどの名振付師でもあり、この作品でも相当キレのいい振付を施しているばかりか、自身もちょっぴり踊りのシーンに参加して、その素晴らしいダンスを披露してくれています。インド映画の踊りは数々観ましたが、プラブデーヴァの振付は相当早い動きのものが多くて目を見張りますね。

そもそもこの映画はこれまでライトだったボリウッド作品に南インド映画の粗っぽいアクションを持ち込み大流行させた、という先駆けとなる作品のひとつとして功績が高いと言われているようです。その反面、2009年製作の作品なので、最新型のボリウッド・アクションを最初に観てからこの作品を観てしまうと、少々物足りなく感じてしまうかもしれません。それだけこの作品やこの後の『ダバング 大胆不敵』で元型が作られたボリウッド・アクションが、とんでもない高速度で進化していった、という見方もできるでしょう。

映画としてみると構成が若干ドタバタしており、散漫に思える部分もあるのですが、サルマン・カーンの大見得切った立ち姿はやっぱり格好いいし、アクションも保証できます。ただし個人的にヒロインがちょっと魅力が薄く感じたなあ。胸は大きかったけど。