俺はボディーガード!携帯電話の大好きなボディーガード!〜映画『Bodyguard』

■Bodyguard (監督:シッディーク 2011年インド映画)


俺の名はラヴリー・シン!変な名前だけど最強のボディーガード!何があっても顧客は守る!刃向う奴らは地獄行き!でも…女子にはちょっと弱いんだ…(テヘペロ)。という2011年公開のインド映画『Bodyguard』でございます。

『Bodyguard』とは申しましても「♪あんだぁ〜いあぁ〜い」とホイットニー・ヒューストンが甲高い声で歌い上げる『ボディーガード』とはちょっと違います。リメイク等ではございません。主演はいよいよ7月26日に公開が迫った『ダバング 大胆不敵』でも主役を務めたサルマン・カーン、そしてこの作品は『ダバング 大胆不敵』が公開され人気冷めやらぬ翌年に出演したラブコメ(?)アクションなんですね。しかも公開されたその年、インドで最高の興行成績を上げた作品なんだそうです。ちなみに共演は『きっと、うまくいく』のカリーナー・カプール

お話は主人公ラヴリー・シン(サルマン・カーン)が人身売買組織をぶっ潰すところから始まります。ここでラブリーさんの鬼のような強さと、口笛に合わせて胸筋をヒクヒク動かすというお茶目極まりないダンスが披露されるというわけです。そして「人身売買とは物騒な世の中になったもんじゃのう」と思ったとある大実業家が、ラブリーさんに娘の身辺警護を依頼します。娘の名はディヴィヤー(カリーナー・カプール)、大学生の彼女は、トイレにも授業にもしつこく付いてくるラブリーさんが鬱陶しくてたまりません。

そこで思いついたのが携帯電話を使い他人の名前を騙ったラブラブ詐欺。誰とも知れぬ女性から「あなたのことが好き!」という電話を掛け、ラブリーさんをからかおうとしたんです。果たして当のラブリーさん、なんとかなりのウブらしく、電話をまともにとらえてドキドキワクワクしてしまいます。そんなある日、ディヴィヤーさんは暴漢に襲われてしまい、それをあっという間にノシてしまったラブリーさんに本気で惚れてしまいます。しかし今まで騙していたばかりに、自分の本心が伝えられず、嘘の女性になりすましたままラブリーさんにラブコールを送り続けてしまうのです。

えー、なんといいますか、結構しょーもない脚本です。初っ端のアクションで「うおおっ!」と盛り上げ、その後のラブコメ展開、ここまではいいんです。サルマン・カーン主演映画『タイガー 伝説のスパイ』でも、派手なスパイアクションモノと見せかけてラブコメ展開から始めてしまう、という落差が楽しい作品でした。しかしそんな展開が中盤からいきなりシリアスな方向へとシフトチェンジする、というメリハリの利かせ方が物語を盛り上げていたんですね。しかしこの『Bodyguard』では、携帯を使った「ラブラブ詐欺」がただただずーっと続き、その合間にアクションが入っている、という芸の無い脚本なんですよ。

確かに当初のラブコメ展開は、本気で好きになっちゃったばかりに悲恋展開とも呼べるものに変化しているとはいえ、「今まで嘘ついてたの!許して!」って言やあそれで済む話なんじゃないの?と思えてしょうがないんですよ。挙句の果てに嘘の内容はどんどんエスカレートしラブリーさんを傷つけるんです。いったいディヴィヤーさんが何をしたいのかよくわかんないんです。多分素直になれない女なんですねえ。面倒臭いですねえ。そしてこれらが延々携帯電話だけのやり取りで、観ていてじれったいこと甚だしい。おまけにラストはインド映画らしく仰天展開を入れてるんですが、これがあまりに唐突過ぎて「はあ?」ってなっちゃうんですよねえ。アクションシーンがよかっただけに少々残念な仕上がりとなった作品でした。