ベータマックスじゃない〜映画『V/H/S シンドローム』『V/H/S ネクストレベル』

■V/H/S シンドローム (監督:アダム・ウィンガード,デヴィッド・ブルックナー,タイ・ウエスト,グレン・マクエイド,ジョー・スワンバーグ,レイディオ・サイレンス,アダム・ウィンガード,ジョー・スワンバーグ 2012年アメリカ映画)


映画『V/H/S』、最初は「宮崎勤の部屋の中みたいのを舞台にしたホラーなのか?」などと勝手に思い込んでスルーしていたのだが、若手監督によるP.O.V.ホラーのオムニバスと知って興味が湧き、1作目『V/H/S シンドローム』と2作目『V/H/S ネクストレベル』をまとめて観ることにしました。で、これが結構面白かったのでざっくり感想などを。
まずは『V/H/S シンドローム』。お話はバカガキどもが侵入した家でオッサンの死体と大量のビデオテープを発見するところから始まります。で、ガキどもがビデオを一個づつ再生したところ…という流れ。収録作は5本。
『AMATEUR NIGHT』クラブでナンパした女が実は…というお話。「はいはいキチガイキチガイ女」と思ってたんですが、そしたらアナタ、なんかもういきなりびっくらコキましたね。なーんすかこれは。ラストも「うわっ!」とか言っちゃいましたよ。【顏裂け度:★★★★★】
『SECOND HONEYMOON』旅行中のカップルがビデオカメラであちこち撮ってるわけですよ。そして夜。そのビデオカメラで、誰かが、寝てるカップルを撮りはじめるんです…うあああジワジワ来たわ。【歯ブラシは止めて度:★★★★★】
『TURSDAT THE 17TH』森にやってきた男女…って導入から「はいはい殺人鬼が現れてみんなぬっ殺すのね」とか思ってましたが、確かにそうなんだけどその殺人鬼が独特でさ。【その罠はいつ仕掛けたんだ度:★★★★★】
『THE SICK THING THAT HAPPENED TO EMILY WHEN SHE WAS YOUNGER』ビデオチャットする男女。「部屋になんかいるのよ…」と女が言いだして「はいはい幽霊幽霊」と思って観てたけどやっぱり現れると「うあああ!」とびっくりするという。でもそれだけでなくて、女もなんか変で、腕のグジグジを抉りはじめたりとかさ…。【目をつぶったらもっと怖いだろ度:★★★★★】
『10/31/98』4人のバカガキが人気のない屋敷に侵入して…って話なんですが「はいはいお化け屋敷お化け屋敷」とか思ってたら天井裏で怪しい儀式やっててさ…これは結構凝ってましたね。【壁から腕度:★★★★★】
全体的にノイズだらけのザラついた画質、ブレまくる撮影、ブツブツに途切れまくる映像と、具合が悪くなるほど見難い事ことこの上ないんですが、逆にその「見えそうで見えない」「何が写っているのか分からない」というのが不安感をあおって、とても怖くて楽しかったですね。物語的にはありがちなんですが、それぞれ一捻り加えているのと、作品が短いのでアイディア一つで一点突破出来る、という部分も成功の原因じゃないでしょうか。こういったパンクな雰囲気もまたよかったですね。

■V/H/S/ネクストレベル (監督:サイモン・バレット,アダム・ウィンガード,エドゥアルド・サンチェス,グレッグ・ヘイル,ティモ・ジャイアント,ギャレス・ヒュー・エヴァンス,ジェイソン・アイズナー,アダム・ウィンガード 2013年アメリカ映画)


『V/H/S』シリーズ第2弾となるのがこの『V/H/S/ネクストレベル』であります。しかしねー、今時ビデオの録画媒体はスマート・メディアとかDVDとかBlu-rayとかなんじゃないのか?第1弾はまだいいとして、この第2弾でも相変わらずビデオテープなのか?と思う訳ですよ。でも観てみたらやっぱり今回も扱われているのはビデオテープでした!それぞれの収録作を観ても、録画している時はデジタル機器使っているみたいなのに、なーんか作中ではテープにして残されているんですよね。さらにビデオ収集していた本人とみられる映像が「これらのビデオを観る事で脳に影響が…」とか言ってるんですが、これはクローネンバーグの『ビデオドローム』へのオマージュってヤツなんでしょうね。ある意味この『V/H/S』シリーズ自体が『ビデオドローム』の子供たち、と言えなくもないですね。余談になりますがその『ビデオドローム』、ビデオ媒体はVHSではなくてベータマックスだったんですよね。
さて今回あばら家に侵入してコワ〜イビデオを観る羽目になるのは探偵とその助手の男女。しかしビデオを観ているその後ろで怪しい人影が動いて…とかなってるわけですな。収録作は4本。
『PHASE I CLINICAL TRIALS』事故で片目を失った男が代わりにビデオ機能の付いた義眼を入れられるが、この義眼を入れたばっかりに見えない筈の死者の姿が見えるようになる、というお話。目それ自体が録画している、という部分がこの作品の特徴でありましょう。まあしかし、どちらにしてもお化けが出てきてこわいよー!という部分は一緒なわけで、アイディア倒れな作品のように思われました。【片目つぶってればよかったんじゃないのか度★★★】
『A RIDE IN THE PARK』ヘルメットにビデオカメラを付けてサイクリングする男がゾンビに襲われ、自分もゾンビになって…という、なんと「ゾンビ視点」のP.O.V.作品なんですね。ゾンビ視点で人間を貪り食う!という部分が新しいといえば新しいのですが、まあそれだけっちゃあそれだけの作品なんだよなあ。【臓物ドアップ度★★★】
『SAFE HAVEN』とあるカルト教団に取材に訪れたドキュメンタリー映画スタッフが出遭うとんでもない恐怖を描くお話。教祖は狂いだすわ信者は集団自殺しちゃうわ、映画スタッフも追い掛け回されてぶっ殺されちゃうわ、さらにその後もっともっととんでもないことになって、まさに地獄絵図。これは結構長めな上にお話もきっちり作り込んでいました。しかもロケーションがインドネシアで、それにより異様な呪術的雰囲気を醸し出す要因となってるんですね。これはインドネシアのバイオレンス・アクション『ザ・レイド』のギャレス・エヴァンスが監督したということもあるのでしょう。もう後半までなんでもアリの展開でパワフルな作品でした。【でも最後のアレは作りモノ臭くて大いにシラケた度★★★】
『SLUMBER PARTY ALIEN ABDUCTION』留守番中の家が宇宙人に襲われ阿鼻叫喚となる少年少女のお話。そしてこの作品はなんと子犬に取りつけられたカメラによるP.O.V.!まあ新しいといえば新しいんですが、別に子犬である必然性はあまり感じなかったんだが…やりゃあいいってもんじゃないだろ…。あと宇宙人もなあ、子供さらう時毛布にくるむって、仮にもスッゴイ科学力で地球来たとは思えないんだが…。【要するにナマハゲですね度★★★】
全体的に画像の鮮明さが逆に仇となっており、1作目の「画像が汚すぎるゆえのなんだかわからない恐怖」が薄れて、P.O.V.を生かした、というよりはどれも普通にホラーな作品になっちゃってるような気がしました。