モンスターだって競争も試験もある!?〜『モンスターズ・ユニバーシティ』

モンスターズ・ユニバーシティ (監督:ダン・スキャンロン 2013年アメリカ映画)


モンスターズ・インク』のチビの目玉とでくの坊の毛モジャが再び主人公になって登場する『モンスターズ・ユニバーシティ』である。訳すと「化け物大学」。そう、前作より時を遡り、目玉と毛モジャが大学生だった頃を描いた映画なのだ。
目玉と毛モジャが大学生?モンスターになんの学位がいるの?というと、これが「怖がらせ学部」というのがあって、子供を怖がらせるためのありとあらゆるスキルを身に付け、怖がらせのスペシャリストとして活躍する人材、というかモンスター材を育成する学部らしいのである。お化けにゃ学校も〜試験もなんにもない、というのはゲゲゲの鬼太郎の主題歌ではあるが、あちらの国ではたとえモンスターであろうと常に勉学に勤しみ試験で高得点を上げ熾烈な競争を生き延びねばならないのである。朝は寝床でグーグーグーというわけにはいかないのである。モンスターでさえ世知辛い世の中なのである。
物語は大学に入学したチビ目玉が寄宿舎で相部屋になったモンスターと仲良くなったり仲違いしたり、いわゆるブルジョアなモンスターである毛モジャに敵愾心を抱いたり、最初は対立していたその毛モジャと次第に友情を育んでみたり、スクールカーストのトップの連中に見下されて酷い目に遭ったり、学校で爪はじき者になってるナードな連中と結託したり、その爪はじき者のナードの連中と努力に努力を重ねいつしか周囲に認められたり、なんかダンスパーティーに出かけたり、まあアメリカの学園ものストーリーにひたすらありがちな定番メニューのことごとくを呆れるぐらい丁寧にトレースした物語になっている。この物語に無いものは恋愛要素ぐらいである。
この、「人間の学生の学園ライフ」を奇態な姿のモンスターがやっていることに面白味を見出させよう、というのが製作者の狙いなのだろうが、そんな狙いとは相反して観ているオレは月並みすぎる物語展開に退屈してしまったのである。それと、モンスターは子供を怖がらせるのが本分、という建前で成り立っているこのモンスターズ・インク世界だが、その恐ろしいはずのモンスターをファンシーなデザインで登場させている所がこの物語世界を楽しいものにしている部分だった。しかしこの『ユニバーシティ』ではそのファンシーな主人公モンスターが一所懸命自分を怖くさせようと悩み葛藤し、そして努力するのだけれども、基本的にもともと怖くなんかない造形のヤツがあくせくする姿が描かれているというのが、どうにもちぐはぐに感じてしまった。
あとさあ、なんかもうのべつまくなし努力!勉学!常に前向き!とやられちゃうと、興醒めしちゃうんだよなあ。さっきのゲゲゲの鬼太郎の歌じゃないけど、モンスターなんだからさあ、もっと破天荒で超自然的な存在ってことでいい筈なんじゃないのかなあ?確かに前作は『怪物会社』ってことでモンスターは"怖がらせの仕事"をしていたけど、それは"そういうシステムで怖がらせやってました"って話で、あくまでファンタジーなんだけど、この『怪物大学』はあまりに現実の学校生活に似通ったものをそのまま持ち込みすぎちゃって、なんだか夢がないっていうか、想像力の広げ方の足りなさを感じちゃったんだけどなあ?どうも最近のピクサーってイマイチな感じがするんだけど、どうしたのかな?