戦慄!鮮血男爵との芋煮会!

それは芋煮だった


連休最終日は知り合いの皆様と一緒に東北名物「芋煮会」なんぞをしてきたのであった。
芋煮、それはただ芋を煮るというだけのことではない。芋を中心とした山の幸を大鍋でぐつぐつ煮ることにより、今年一年の豊穣を感謝し来年の豊かな実りを祈願する、というものなのである。芋は里芋、みっちりねっとり詰まった塊茎は、粘り強さ、辛抱強さをを表し、その里芋を中心として白菜、大根、ニンジン、ゴボウ、コンニャク、などが曼荼羅の如く同心円を描いて取り囲み、そこに【芋煮宇宙】が出現するのである。そしてその【芋煮宇宙】を守護する二つの仁王が《しょうゆ味・牛肉》と《みそ味・豚肉》であり、この二つが【芋煮宇宙】の物理法則を決定し、それは陰と陽として対立しつつも大局では一つの統一した場、いわゆる統一場理論、超いも理論と呼ばれるものへと収斂してゆくのである。

戦慄の鮮血男爵邸!


という訳で「芋煮会」である。ただし、この日の芋煮会は屋外で催される予定であったが、雨天により急遽主催者であるRAW MEAT氏こと鮮血男爵邸で行われることとなった。
鮮血男爵邸へ続く道は鬱々たる墓地を通り、既に葉を落とした寂しい樹林に分け入らねばならなかった。途中出くわした沼には、タールの様に黒く信じられないほど大きい、何かの生き物が水面に波紋を作っていた。鴉の鳴き声が不吉なほど大きく聞こえるのを意識し出した頃、鮮血男爵邸の門が見えてきた。そして古代の呪われた邪神が祀られた庭園を抜け、重々しい鉄扉を開けると、そこには鮮血男爵の妻室、フラウ・ケロが燭台を持って待ちかねていた。
「どうぞこちらに」案内されるまま長く暗い廊下を恐る恐る渡ってゆく我々。そこかしこに置かれた中世の拷問具、鈍く光る甲冑、鬼火のように燃え立つ眼をさせた代々当主たちの肖像画などを通り過ぎ、呪われた実験が行われたと思しき薄暗い部屋、異形の生き物たちがホルマリンに漬けられた瓶が所狭しと並ぶおぞましい部屋を抜け、当主・鮮血男爵の待つ大広間へ通されたのであった。
我々が辿り着いたそこには、壁一面に映画の歴史が始まって以来製作された、数千数万とも及ぶ夥しい残虐映画の映像記録がみっしりと並べられ、さらにテニスコートほどもある巨大スクリーンには、惨たらしい折檻を受ける血塗れ女子が苦痛に顔を歪ませる映像が躍り、部屋の四方に備え付けられたスピーカーからは、スクリーンの中の女子の上げるつんざかんばかりの絶叫が鳴り響いていたのであった。流石はホラーマエストロ鮮血男爵の邸宅である。
唖然とする我々を吐血の如き暗紅のマントを翻しながら鮮血男爵が出迎えた。「ようこそ我が鮮血邸へ。今宵は共に芋煮の宴を楽しむと致しましょう…」。その時、どこからともなくふっと生臭い風が吹いたかと思うと、刃の付いた銀色の球体が唸りを上げて頭上を舞い、床ではカニの足をはやした人間の頭がカサコソと横切って行った。かくして我々は鮮血邸において、呪われた夜を過ごすこととなったのである。

飛び交うナマニク!煮込まれる魔術植物!

そして魔宴は幕を切って落とされた。まず最初に供されたのは血の滴る野獣のナマニク(別名:馬刺し)。我々はこのとろける様なナマニクを悪鬼の形相を浮かべながらむしゃぶりつき、その血の臭いと血の味に舌鼓を打った。そしていよいよ古代に滅ぼされた邪教徒によって綴られた「死者の書」のレシピ通りに、大鍋でとろ〜りとろりと煮込まれた魔術植物マンドラゴラのスープ(別名:芋煮)が我々の前に出された。「おお…なんと豊潤な味わい…」禁断の味覚を法悦の表情で味わう我々に、既に理性など残されていなかった。

小悪魔摩亞璃にサインをもらう

そこに現れたのは魔道の父・川崎電ノコ殺戮鬼とその娘、小悪魔摩亞璃だった。「いやー皇帝、今度マーリーもイラストで参加した本が出たんですよ。「イカ本」と「タコ本」。よかったら皇帝もいかがですか?」そう、伝説の魔女・御下劣蜂女氏が編集した、海の悪魔・多足軟体動物を特集した呪われた書である。

「あ、これ、土屋さんの。欲しい欲しい。マーリーちゃんサイン書いて!」そしてこれが小悪魔摩亞璃のサインである。将来値打ちモノになることは間違いない。

邪悪な夜は更けていった

そして邪悪な夜は更けていった。我々はおぞましい生と無残な死を夢見た。殺戮と破滅について語り合った。暗く冷たい闇に包まれるであろうこの世界を讃え合った。新たなる魔の世紀こそが我らの時代だった。血塗られた素晴らしい夜であった。しかしこの魔宴もいつかは終わらなければならない。死と血と腐敗を合言葉に、再び集うことを約束しながら我々は別れた。そしてこれがその時の記念写真である。それでは皆さんまたお会いしましょう。