クローネンバーグ初期傑作選その1 / 寄生虫に取り付かれてみんなエロエロになっちゃうんですね。〜映画『シーバース』

シーバース (監督:デヴィッド・クローネンバーグ 1975年カナダ映画)


シーバース』である。ウィスキー。それはシーバス・リーガル。「次は市役所前です〜お降りの方はブザーでお知らせ下さい〜」。それは市バス。そうではない。シーバース(Shivers)とは寒気とか戦慄とかの意味である。デヴィッド・クローネンバーグが1975年に撮った劇場初監督作品、それがこの『シーバース』なのである。
冒頭からむさ苦しいオッサンがいたいけな少女を絞め殺し、裸にひん剥く、なんてシーンから始まってびっくりさせられますね。さてこれからどんなエロイことが!?とダークな妄想にわくわくして観ていたら、なんとこのオッサン、メスを取り出し少女の腹を裂いちゃうんですよ!あらまあ猟奇!さらに裂かれた腹に硫酸らしきものを注いだ挙句今度は自分の喉を�惜き切って自殺しちゃいます!映画『シーバース』はこんなショッキングかつ隠微なシーンから始まるんですね。
実はこのオッサンというのは生物学者で、人間の臓器の代わりとして機能する寄生虫を研究してたんですが、この寄生虫を体に取り込むとエロエロになってしまうという副作用が発覚、そのため人体実験に使ったらエロエロになっちゃった教え子少女を殺して自分も死んだってことなんですね。いやあ若くてピチピチの教え子がエロエロになって毎日お楽しみだったら別に構わないんじゃないかと思いますけどね。しかもこの寄生虫というのが色といい形といいウンコそっくりなのが泣かせます!
で、お話はこの寄生虫がマンションで大繁殖して住人たちに取り憑き、みんなエロエロになって大騒ぎ!って内容なんですね!しかしこうやって書くと普通にポルノじゃねえかよ!そもそも取り憑かれると凶暴になるとかマタンゴやら物体Xみたいのに変身しちゃうとかじゃなくて、エロエロになるっていったいどこがホラーだ!?
…とは言いつつ、別にデカパイデカ尻のムチムチ美女が大挙して登場し、寄生虫で頭をすっかりクルクルパーにさせてあられもない姿でところ構わずくんずほぐれつハァハァしまくる背徳の館!というものでは全然なく、単に頭のおかしくなった住人の皆さんがアヘ顏しながらワアワアと襲ってくる、というものなんですね。しかもこの連中、相手構わずなので小汚いジジイや気色悪いババアまでが涎垂らして掴みかかってくるわけですから、考えようによっちゃ確かにホラーですよね!あとこの映画、郊外のリゾート・マンションが舞台ってことになってるんですが、リゾートっていうか普通にその辺のしょぼいホテルで撮った風にしか見えないところが低予算風味を存分に醸し出していますね。
で、寄生虫に取り憑かれてエロエロのクルクルパーになった暴徒の皆さんが健常者に襲いかかってくる、というビジュアルは、実はまんまゾンビなんですね。死体になったわけでもないし食いついてきたりとかもしないんですが、見た目はやっぱりゾンビが襲いかかってきているみたいなんですよ。ゾンビ映画の走りともいえるロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が1968年、それに続く『ゾンビ』が1978年製作、ということを考えると、1975年カナダで製作されたこの映画は、意外と早い時期にゾンビ的なものを映画化したホラーだ、ということも出来るんですね。にもかかわらず、「エロエロゾンビ」にしちゃった所が、まさにクローネンバーグらしい変態さ加減だと思いますが!
http://www.youtube.com/watch?v=eK9Wal9Dvic:movie:W620

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