ダーク・ファンタジー系海外ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を観た

■ベストセラー・ファンタジーのドラマ化

海外ドラマ『スパルタカス』の興奮が冷めやらず、「何か他にオレ好みの海外ドラマは無いのか?」と探していたところ見つけたのがこれ、『ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記』(以下『GoT』)。海外ドラマ好きの方の間では相当評価が高いようです。しかしダーク・ファンタジー系のドラマということなんですが、かの名作ファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』3部作あたりと比べると、予告編を観る限りではずっと人間ドラマ寄りみたいで、モンスターや魔法がばんばん出てくる物語とはちょっと違うようなんですね。異世界における権力闘争の物語らしいということは判るんですが、このドラマがなぜこんなに人気を博しているのか、いったいどんな所が面白いのか体験してみたくて、早速Blu-rayで全10話を一気観してしまいました!
この『GoT』、もともとはジョージ・R・R・マーティンによるベストセラー・ファンタジー小説氷と炎の歌』シリーズが原作となっています。全世界で1,500万部を売り上げたというこのシリーズは、現在第5部まで執筆され、最終的には7部作になる予定だという長大な作品なんですね。そしてこの『GoT』は原作の第1部、『七王国の玉座』をドラマ化したものなんです。既に本国ではシーズン3が放送されており、さらに第4シーズンまでの撮影が決定しているようですから、その人気のほどがうかがわれるというものでしょう。このままの人気で盛り上がっていけば原作全ての映像化も有り得そうですね。ただし、自分は原作は読んでいないんですが!

■2つの大陸、3つのドラマ

物語は架空の世界の架空の大陸ウェスタロス、そして海を隔てたもうひとつの大陸エッソスを舞台にしています。『GoT』は大まかにいうと、ここで同時進行する3つのドラマが中心となります。

【その1】大陸ウェスタロスには7つの王国が存在し、その7つの王国をさらに一人の王が総べていました。その玉座を物語では《鉄の玉座》と呼びます。しかしこの王の死去により、《鉄の玉座》を巡って大陸ウェスタロスに戦乱の足音が近づきます。
【その2】隣の大陸エッソスにはかつてウェスタロス全土を支配しながら叛乱によりここを追われた《ドラゴンの血が流れる一族》の後継者が亡命しています。彼らはエッソスを支配する蛮族を取り込み、ウェスタロス奪還を虎視眈々と狙います。
【その3】古代よりウェスタロス北部には《異形》と呼ばれる超自然的脅威が存在し、歴代の王はそれを巨大かつ長大な雪山《壁》によって防ぎ続けていました。そしてその《壁》の向こうで《異形》が再び目を覚まし、今まさに7王国に襲いかかろうとしています。

これら3つのドラマが同時進行しながら、ここに登場する様々な人々の視点で描かれる群像劇、それがこの『GoT』というわけなんですね。3つの舞台による3つのドラマは、それぞれが極寒の雪山、暗い森や厳めしい城郭、そして南国の海辺といったロケーションで分けられ、それらが交互に現われ物語を紡ぐさまは何かこの世界の大陸を俯瞰しているかのような気分にさえなります。そしてここで物語られるドラマの背後には膨大な歴史的遍歴があったことがきちんと設定されており、重厚な世界観を作り上げているんです。物語世界は中世イギリスとその周辺諸国、そして当時の政治状況から着想を得ているようですが、それを換骨奪胎することにより独特の異世界を作り上げているというわけです。

■驚くべきリアリティ

3つのドラマにはそれぞれ中心となる一族・登場人物が存在しますが、それをとりまく人々の数は膨大です。そしてそれぞれが一族の絆、忠誠心、自らのエゴ、王座への渇望、過去の遺恨などの理由により共闘・反目しあい、さらに陰謀と裏切りによる複雑な人間関係が形成されてゆきます。まさに蛇の巣と化した2つの大陸で、誰が敵で誰が味方なのか分からないまま、緊張感を孕みつつ物語は進んでゆくのです。この辺確かに複雑で、自分などは観ていて時々「この人とこの人の関係って?あれこの人誰?この人はいったいどこの一族の所属?」などと分からなくなったりしてしまいましたが、一緒に観ていた相方さんは全て把握していて、いちいち教えてもらっていました(面目無い)。まあ公式HPなどのチャートなどを調べると分かりますので、オレのように記憶に自信の無い方は小まめにチェックされるとよいでしょう。ただし非常にダイナミックに進んでゆく物語なので、逆に細かな部分を取りこぼしてもそのエグイ人間関係に恐怖しながらきちんと面白く観られます。
こういった複雑で予断を許さない人間関係、それにより生み出される波乱万丈の展開だけがこの『GoT』の面白さではありません。このドラマが真に魅力に溢れたものに仕上がっているのは、細微に渡り周到に構築された世界観と、それを驚くべき見事な美術で再現したリアリティ溢れるビジュアルなのです。この『GoT』は、同じファンタジーという以外『ロード・オブ・ザ・リング』とは関係ありませんが、しかし『LOTR』が、徹底的に作りこまれたビジュアルにより圧倒的な世界を創出したのと同じぐらいの情熱とイマジネーションによって、この『GoT』が作り上げられたであろうことは間違いありません。あたかも異世界に投げ込まれ、その異世界を旅し、自らもそのドラマの中の住人のようにさえ感じさせる臨場感、これが『GoT』というドラマの魅力となるのです。
http://www.youtube.com/watch?v=6CbDw3vou54:movie:W620

七王国の玉座〔改訂新版〕 (上) (氷と炎の歌1)

七王国の玉座〔改訂新版〕 (上) (氷と炎の歌1)

七王国の玉座〔改訂新版〕 (下) (氷と炎の歌1)

七王国の玉座〔改訂新版〕 (下) (氷と炎の歌1)