ロボット怪獣映画『パシフィック・リム』は「オレ的に・ムリ」でした

パシフィック・リム (監督:ギレルモ・デル・トロ 2013年アメリカ映画)

  • 子供の頃TVでよく見ていた特撮ヒーロー番組がDVDのBOX-SETになって売っていたりする。ちょっと欲しかったりするけど、買ったりはしない。値段が高いこともあるけど、子供の頃はあんなに楽しんでいたあれらヒーローたちのドラマを今見ても、実は全然楽しめなかったりするんだろうな、と思うからだ。結局、それは単なるノスタルジーだからだと判ってしまうからだ。
  • ギレルモ・デル・トロのロボット対怪獣の戦いを描く映画『パシフィック・リム』、オレの好きそうな題材を描いているのに、何故だかあんまりノレなかったのは、「昔はこういうの好きだったんだよなあ」ではあっても、「今も現在進行形で好きかといわれるとどうかなあ」だったからかもしれない。
  • パシフィック・リム』は要するに怪獣相撲、ロボットプロレスのお話だ。それは少しも悪いことではない。自分も昔はこういうのが好きだったし、多分今でも嫌いじゃない。しかし『パシフィック・リム』は「昔こういうのが好きだった」ようなロボットと怪獣の戦いの物語ではあっても、今現在それを描くなら、もうちょっと物語をアップトゥデイトに描いて欲しかったなあ、と思えてしまったのだ。
  • 例えば怪獣というのなら、マット・リーヴス監督の『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、本多猪四郎の『ゴジラ』にオマージュを捧げつつ、POVでもってモンスターとしての怪獣の存在を実に恐怖たっぷりに、そして現代的に描いていた。
  • ロボット、というよりも機械生命体ではあるが、マイケル・ベイの『トランスフォーマー』(これだって結局ロボットプロレスだ)だって、車両からロボットへ高速に変身する姿を最新VFXでもって巧みに描き、目を見張らせた。
  • これらの怪獣とロボットは、現代的でスマートだったのだ。だが『パシフィック・リム』のロボットは圧倒的な重量感で描かれつつも鈍重にしか見えず、その怪獣は醜く禍々しい姿だが、少しも恐怖心を感じさせなかった。
  • 要するに監督ギレルモ・デル・トロの「昔から好きだったロボットと怪獣」を、その愛ゆえに「昔のまま今に」再現しちゃった、という部分で、オレはなんだかつまらなく思えてしまったのだ。
  • そんな「昔から好きだったロボットと怪獣」の戦いを、その"オタク"力で現代的に進化させ再現したのは、庵野秀明エヴァンゲリオンだったのではないかと思うが、『パシフィック・リム』はエヴァ的な要素まで近づきつつ、しかしエヴァと比べるならまだまだアナクロな部分が多かったように感じた。
  • 一番大きな問題は、登場人物にまるで魅力を感じなかったということだ。主人公と目されるイェーガーパイロット、ローリーは、戦いで兄を失ったという痛ましい経緯があるにもかかわらず、単なるステレオタイプなマッチョ以上のものを感じない。その他のパイロットも個性的ではあるが人間味が伝わってこず、司令官もまた同様に薄っぺらで存在感が無い。博士二人は単なる道化で、闇商人ハンニバル・チャウは面白いキャラだがなんだか浮いている。
  • まあこの映画はロボットと怪獣を愛でるためにあるのだろうから登場人物のキャラクターは二の次になったのかもしれない。だがあまりドラマ性が無いのには少々キツかったのだ。このへんもうちょっと掘り下げて欲しかったなあ。
  • そんな中で菊地凛子扮する森マコは、芦田愛菜演じる森マコの少女時代も含めその情念の在り処が説明されていて、人間としての存在感があった。確かにあの程度の説明でしかないが、逆にあの程度でさえ充分なのだ。実は正直なところ、この森マコが主人公であったなら、この物語はより悲壮感が増したと思うし、そしてオレはもうちょっとこの映画を気に入ったような気がするのだが。


Pacific Rim Original Motion Picture Soundtrack

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パシフィック・リム (角川文庫)

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