人類滅亡後のロシア、地下鉄坑道に生き残った人々の戦いを描く『Metro: Last Light』


核戦争により都市は破壊され文明は崩壊した。そして2033年、ロシア。大地は汚染され、地上にはミュータントがはびこり、僅かに生き残った人々は地下を網の目のように結ぶ地下鉄坑道で細々と生き延びていた。しかし、その彼らを殲滅せんと新種のミュータント「ダークワン」たちが襲い掛かる。激しい戦いの末「ダークワン」を滅ぼすことに成功した人類だったが、その最後の生き残りの一匹に、人類救済の鍵があることを知る。

2010年に発売されたFPSゲーム『Metro:2033』の続編、『Metro: Last Light』です。ロシアという独特の舞台、破壊され都市の瓦礫だけがどこまでも続く地上、そのロシアの地下を結ぶ暗黒の地下鉄網、そこで生きる人々の薄汚れ倦み疲れた暮らし、彼らを襲う醜くおぞましいミュータントたち。それら腐敗と死と破滅が全てを覆う廃墟の光景が美しいグラフィックで細微に表現され、リアリティに満ちた異様で独特な世界観を形作り、ゲームをプレイしていると圧倒的な没入感に囚われます。

暗闇に包まれ、迷路と化した地下鉄坑道は、瓦礫と腐った植物に覆われ、白骨死体が山のように打ち捨てられ、蜘蛛の巣がそこここにかかり、巨大化した虫と虫の卵があちこちに固まり、そこを歩く気持ち悪さは半端ではありません。それと同時にそのビジュアルの再現度の高さに心奪われます。プレイヤーの装着したマスクに水滴が付着する描写はFPSゲームではよくありますが、この『Metro: Last Light』ではさらに飛んできたハエがぶつかってきたり、バカでかい蜘蛛がくっついたり、泥が跳ねたり、倒したモンスターの血痕が付着したりと恐ろしく細かいのです。それだけではなく、それらマスクの付着物を「拭き取る」というアクションが出来る、という細かい演出振り!いやあ、オレなんか結構神経質なんで、ゲーム中しょっちゅうマスク拭いてます…。その暗がりから突然モンスターが群れを成して襲ってくるんだからこれはビビりますよ!

そしてその地下から地上に出ると今度は汚染した空気を心配しなければなりません。ここでガスマスクを付けるのですが、フィルターの使用制限時間が設けられており、ここで腕時計のタイマーをONにする演出が入ります。ここも細かい。制限時間があるので地上をじっくり歩き瓦礫の都市に見惚れるなんてことなんて出来ません。ただ歩き回る、というだけで死と隣り合わせなんです。そしてここでもモンスターの襲撃が!しかもいちいち倒していると制限時間が迫ってきます。こういった緊迫感が堪らないんですよね。

モンスターだけではなく、この世界には主人公たちコミニュティの敵対勢力が存在します。つまり人間の敵もいるんです。これがドイツ訛りのネオナチ軍団で、(まあ舞台はロシアとはいえ、主人公らが喋るのもロシア訛りの英語なんですが)、こいつらとの銃撃戦も主人公を待っております。しかし、延々とモンスター殲滅や敵軍団との撃ち合いだけに終始するといった内容ではなく、そういった戦いも含めながら、この破滅した世界の光景をプレイヤーにじっくり味あわせる、とことん歩き回らせ世界を体験させる、といった演出が非常に多く盛り込まれているゲームになっています。そういった部分で凡百のシューターとはまさに一線を画したゲームとして完成しているんですよ。世界観の作り込み、といった点で非常に力の籠った優れたゲームですね。ひょっとしたら今年上半期最高のゲームということもできるかもしれません。

なお今のところ日本語ローカライズ版の発売はアナウンスされていないようで、プレイしたい方は輸入版Xbox360PS3、もしくはSteamでのDL販売で入手することになると思います。
http://www.youtube.com/watch?v=3FnZOczI9CY:movie:W620

Metro Last Light (輸入版:アジア)

Metro Last Light (輸入版:アジア)

Metro Last Light (輸入版:アジア)

Metro Last Light (輸入版:アジア)

Metro 2033 (輸入版:アジア)

Metro 2033 (輸入版:アジア)