凶悪暴走カーは俺の筋肉で止めてみせるぜ!〜映画『ラストスタンド』

ラストスタンド (監督:キム・ジウン 2013年アメリカ映画)


祝・シュワちゃん銀幕復帰映画『ラストスタンド』を観てまいりました。
今回のシュワちゃんの役どころはメキシコ国境に近い長閑な田舎町の保安官。今日も今日とて平和に過ごすシュワちゃんのもとに怪しい情報が。なんとラスベガスで移送中に逃亡した麻薬王が時速300キロのスーパーカーに乗り込みこの町目指して突っ走っているっていうじゃあ〜りませんか。というのもメキシコまで逃げ延びる最短距離にこの町が存在してたからなんですな。麻薬王は武装した凶悪な仲間たちの助けを借り、FBIの追跡を次々とかわし、ジェット機並のスピードで町へと迫ります。「もうあいつを止められるのは俺しかいねえ!」孤立無援・徒手空拳の状況の中、我らがシュワちゃんは立ち上がるのです!老体に鞭打って!
という『ラストスタンド』でありますが、80年代90年代を思わせるどことなくアナクロでもっさり、しかして質実剛健で安心して観られるアクション・ムービーとして仕上がっておりましたな。映画のこんな雰囲気それ自体がそこそこにお年を召したシュワちゃんの、現在の役者的立ち位置で彩られているということもできるでありましょう。
まあ麻薬王に逃げられた挙句にその後の追跡も黒星続きだったFBIの行動はいくらなんでもヘタレ&杜撰すぎると思いますし、麻薬王の一味の皆さんもあそこまで逃亡計画を遂行できる潤沢な資金と人材がいるのなら車なんぞで逃走させずに極秘に小型ジェット機ぐらい用意できるんじゃないのかとは思いますが、「時速300キロで爆走するスーパーカー!もう誰もあいつを止められない!」としたほうが絵的にもお話的にも面白いことは面白いですわな。
それと併せ、ベガス〜メキシコへの荒涼とした道なりをひたすら車が暴走してゆく、という光景は映画『バニシング・ポイント』あたりにも通じるモータリゼーション大国アメリカらしいビジュアルということもできますな。
その爆走車を待つのが白人人口数の多さげな南部の片田舎の町。そしてシュワちゃんの役どころはその町の保安官。西部劇に例えられることも多いこの映画ですが、"古き善き"アメリカがまだ存在すると錯覚させられるようなこの町でシュワちゃんが正義を貫き通す!というちょっぴりアナクロな物語の在り方が、「デカい強いシンプル」な20世紀的なアクション・スターであるシュワちゃんと、そのシュワ映画を観て育った世代には安心して観られる要素なのかもしれませんな。そして若い世代には、そういったテイストが逆に新鮮だったりするのでありましょう。
大作名作大傑作というものではないにしろ、シュワちゃん復帰作ということで劇場も「お帰りなさい」ムードのお客さんで一杯、総じて映画の評価も内容云々というよりも久方ぶりのシュワちゃんの銀幕出演それ自体に祝辞とご祝儀を渡すような好感度を感じていた方も多いのではないでしょうか。腐っても鯛、じゃあありませんが、年食ったって往年の大アクション・スター、寅さん映画を見せられているような安定感は抜群でありました。
ええ、ええ、なんかそれでいいんじゃないのかと思いますよ、ことこの映画に関しましては。五月蠅いことも面倒臭いことも言わずにリラックスして観るのが吉かと思います。