最近読んだコミックなどなど(その2)〜ベルセルク(37)、いとしのムーコ(3)、謝男(シャーマン)(2)、シスタージェネレーター

ベルセルク(37) / 三浦建太郎

ベルセルク 37 (ジェッツコミックス)

ベルセルク 37 (ジェッツコミックス)

現世と常世が混じり合ってしまった新たな世界、幻想世界(ファンタジア)篇の続きであります。うにょうにょした海の化け物をやっと倒していよいよ妖精島へ向かうのか…という所までが前半です。仲間もあれこれ増えて大所帯になってきたガッツ様一行のパーティーですが、仲間が増えるたびに最初の仲間の影が薄くなってくるのは否めません。今回なんて人魚少女と魔法少女というダブル・ロリーな少女二人とキャッキャウフフしているガッツさんじゃないですか。いやホントはキャッキャウフフではなくていつものように白目剥いて血反吐吐いてますけどね。最重要人物のはずのキャスカが空気のようだ…イシドロとかパックって今回いたっけ…。いやいや、きっとこの先活躍する場がまた与えられるのですよ。で一旦インターバル、ガッツの少年時代を描く「遠い日の春花」篇3話が挿入されます。そしてこの「遠い日の春花」篇が意外といいんですな。泣かせるんですよこれが。後半はリッケルトが登場し、化け物が跳梁跋扈する世界を逃れ、グリフィスの統治する「この世で唯一の安全な都《ファルコニア》」へと向かうんです。しかしグリフィスって何考えてるのかよく分かりません。いや確かに最初の望み通り「一国の王」とはなりましたが、「ゴッドハンド」のヘルレイザーな皆さんとは今現在いたいどういう関わりということになるのでしょう?化け物・人間渾然一体となった理想郷を作りながらその過程で人間を襲う化け物を駆逐する。この時「ゴッドハンド」はどっちの化け物の味方なのか。いや、「ゴッドハンド」は単にカオティックな因果律の支配する世界を現出したいだけでそもそも味方とかなんとかは関係ないのかもしれない。まあこの辺は革衣類フェチっぽい「ゴッドハンド」の皆さんにもう一度ご登場いただいてどうにかして頂きたいところではあります。

いとしのムーコ(3) / みずしな孝之

いとしのムーコ(3) (イブニングKC)

いとしのムーコ(3) (イブニングKC)

ガラス職人の小松さんと飼い犬ムーコとのラブリーな日々を描く動物マンガ「いとしのムーコ」、動物好きのオレの相方さんがファンで、オレもついでに読ませてもらったらこれが結構面白く、この3巻も読ませてもらいました。3巻目とはいえ描かれていることに変わりはありません。日常なんてそうそう変わることなんてないからです。小松さんは相変わらず寡黙で淡白で質実剛健、男臭い職人の世界に生きるイイ男で、柴犬のムーコはといいますと動物独特のシンプルな世界で小松さんの愛情をたっぷりもらいながら毎日毎日、その時その時を楽しくノホホンと生きているんですね。動物はもちろん可愛らしいものですが、こうやって毎日毎日とその時その時を楽しくノホホンと生きていられる、そのこと自体と、それらのディテールがとても素晴らしい物語なんですね。そういった日常を楽しむ、謳歌する、愛する、ただそれだけで人生なんて十分素敵じゃないですか。もちろん、人は常にそうやって生きられるわけではないけれども、そういったことに憧れを抱き、そういった日常を生きたいと願う、そしてそういった日常を描く物語を読んで微笑む、それがいいんですね。

■謝男(シャーマン)(2) / 板垣恵介

謝男 2

謝男 2

「どげせん」コンビ解消後の板垣恵介氏サイドからの土下座漫画「謝男(シャーマン)」第2巻であります。正直「謝男(シャーマン)」と「どげせんR」は「"どげせん"はどのように分裂したのか」を確認するために読んだようなものでその後の展開なんかは全く期待していなかったのですが、こうして2巻目を買っちゃうということはやっぱり読んでて楽しかったんだろうなあ。そもそも土下座というテーマだけでどれだけ続けられるの?と思ってたのにそれでもこれだけ続けられて、そして面白い、というのはやはり作者の並々ならぬ想像力、尽きせぬアイディアがあるからこそなのでしょう。この「謝男(シャーマン)」第2巻も実に安定した土下座っぷりで、そもそも土下座しなくてもお話が学園ドラマものとしてよくできてるんだよね。実は板垣氏の漫画って他を読んだことはないんだけど、プロとして実にしっかりいい仕事してるなあと感じましたよ。

■シスタージェネレーター 沙村広明短編集 / 沙村広明

シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)

シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンKC)

「ベアゲルター」が面白かったので読んでみた沙村広明の短編集。いやあ絵巧いなあ。スタイリッシュだなあ。綺麗な女子描くが好きで好きでたまらないんだろうなあ。そして多分綺麗な女子を苛めるのも楽しくてしょうがないんだろうなあ。笑えないギャグ好きだなあ。どんな話描こうと基本的に陰惨だよなあ。陰惨な話じゃなくとも気質としての陰惨さが滲み出てるよなあ。瘡蓋みたいにこびりついてるよなあ。その陰惨さをやりたい放題推し進めたのが「ブラッドハーレーの馬車」で対象化したのが「ベアゲルター」なんだろうなあ。沙村広明って時代が時代なら種村季弘みたいな高雅な趣味人だったかもしれないなあ。