最近ダラ観したホラー映画3作〜『インキーパーズ』『ディスコード -DISCORD-』『グラバーズ』

功夫さんのブログ「ゾンビ、カンフー、ロックンロール」のエントリ、「お正月休みに家で観たDVDメモ」というのを読んでいたら面白そうな映画ばかり並んでいたので、その中から3本レンタルして観てみました。どれも面白かったよ!といわけでざっくり感想を。

■インキーパーズ (監督:タイ・ウエスト 2011年アメリカ映画)


閉鎖間際のホテルをきりもりする男女2人が退屈しのぎにホテルに出没すると噂されている幽霊を探索する…というホラー映画なんですが、これ、観ていて殆ど怖くないんですよ。怖くないんだけど、主演の二人のダルそうなやりとりを観ているのがなんだか楽しい、幽霊もいるんだかいないんだか分からないんだけど、いそうな雰囲気だけがある、ただこれだけで後半まで引っ張ってゆく、という映画なんですね。派手な特殊効果や血塗れ死体や神経逆なでする音響でドカーン!ズバーン!と初っ端から飛ばしまくってコケ脅かしかましてゆく昨今のホラーと全然趣が違うんですよ。だから退屈に感じる人もいるとは思いますが、オレは逆に新鮮に感じましたね。なによりも主演を演じるサラ・パクストン、彼女がとても可愛らしい、ショートの金髪に膝の破れたスリムジーンズにパーカーという少年っぽい格好で終始画面をウロチョロしてるんですが、この彼女をずーっと愛でているだけで幸せになるんですよ。彼女の登場でこの映画は鬼面人驚かすホラーというよりは青春物のショートストーリーを読んでいるような不思議物語になっているんですね。で、共演のナードなオッサンとなんかやりとりはあるんだけどロマンスが存在するという訳ではない、さらに舞台であるホテルがこじんまりとした古いけれど清潔なホテルで全然おどろおどろしくない、こういういろんなハズし方が実に面白い。なんかホラーというジャンルそれ自体にドライな立ち位置から作られているんですよ。でもラストに近づくにつれああやっぱりあんなことやこんなことが!ということでホラーらしいオチを付けてくれるんですね。小品ではありますが十分満足できる仕上がりでしたね。
↓キュートなサラ・パクストンちゃん。


■ディスコード -DISCORD- (監督:ニコラス・マッカーシー 2012年アメリカ映画)


母の葬儀で主人公女性は嫌々ながら故郷の姉の家に帰ってきたけれど、着いてみたら姉は失踪しているばかりか次々と怪異が起こり人は消えてゆき…といういわゆるお化け屋敷映画。これも派手さは全然ないんですが静かにじっとり恐怖を煽ってくれていて、いや普通に怖かったなあ。まず冒頭、PCでビデオチャットしている主人公の姉が、自分しかいないはずの部屋なのに、相手から「ねえ、後ろにいるのは誰?」とか聞かれる、そして彼女はなにか忌まわしいことに巻き込まれるんですが、いやもうこっから怖かったです。そしてお化け屋敷映画とは書きましたが、よくあるお化け屋敷映画みたいに部屋には祟りがある!とか口を憚る恐ろしい過去が!とかいう、いわゆるお化けの正体というか略歴みたいのが何も説明されなくて、なんだかわからないけれども怪異ばかりがどんどん起こってゆくので、その説明の無い怖さ、何が起こっているのか分からない怖さ、というのがずーっと続いていくんですね。で、中盤から実は…というのがあるにせよ、それでもなぜ人が消えてゆくのかが分からない、という謎の2段構えになっているんですよ。この2段構えの謎と恐怖が一粒で二度美味しいホラーとして仕上がっている、という訳なんですね。映画全体も非常に静かで、その静けさがまた怖くて、これもとりたてて凄い!というものではないにしろ、演出の面白さが光る小品でしたね。

ディスコード [DVD]

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■グラバーズ (監督:ジョン・ライト 2011年イギリス映画)


アイルランドのド田舎にタコ型エイリアンが来襲して村はもう大騒ぎさ!というイギリス産のモンスターホラー・コメディです。空から隕石が海に落ちてそっからエイリアンが…というのはジョン・ウィンダムの古典SF小説を思わせる由緒正しいオープニングです。で、現れたエイリアン、というかモンスターというのが青い色したうにょうにょしたタコ足で、この辺で「クトゥルーだろ!?クトゥルーなんだろ!?」とラブクラフト・ファンが目の色変え鼻息荒くして色めき立つこと必至でありましょう。で、このモンスターホラーがどういう風にコメディなのかというと、このタコ型エイリアン、なんと弱点がアルコールで、それを知った村人たちは総出でパブに集結し、さんざっぱらエール飲みまくって泥酔し、ベロベロになりながらエイリアン退治だあああ!とかいって盛り上がるんですね。あいつらホント、パブ好きだよな!オレも好きだけどな!だいたいイギリス映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』もパブでゾンビと戦う話だったし、相手がエイリアンだろうがゾンビだろうが地球が滅亡の危機に至ろうがとりあえずパブで酒飲んでミックスナッツつまんでからおもむろに戦いに赴く、という酒がなきゃ何にも始まらない連中なんですな!こういう余裕ぶちかまし具合というのは「何があろうとティータイムは死守する」大英帝国人の習性なんでしょうな。モンスターホラーとしては『トレマーズ』や『アタック・オン・ザ・ブロック』あたりも彷彿させるオフビートな乗りで、こういうのが好きな方なら気に入るでしょうな。あと監督の名前はジョン・ライトといいますがエドガー・ライトとはなんの関係もないです多分。

グラバーズ [DVD]

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