CANが面白かったので他のジャーマン・ロックも聴いてみた。

■Anthology 1968-93 / CAN

Anthology

Anthology

というわけでCANの『Lost Tapes』が面白かったので他のアルバムも聴いてみました。『Anthology 1968-93』は2011年にリリースされたCANのベストアルバム。さすがにアウトテイク集だった『Lost Tapes』の荒削りの音とは違う、しっかりした楽曲が聴けますね。もしもCANに興味を持たれた方がいらしたら、自分みたいにいきなりアウトテイク集の『Lost Tapes』ではなくこちらのほうをお勧めします。CANのことはまだまだ全貌が掴めてないのですが、アルバム毎にコンセプトが違っていたらしく、「これがCANの音」という具体的なものはないのですが、アルバム毎にコンセプトが違うというのはひとえに様々な音楽ジャンルを試してみようとするCANの遊び心だった、逆に言えば、遊び心そのものがCANだった、というような気がするんですよね。だからベスト・アルバムであるこの『Anthology 1968-93』も、ごった煮といっていい音が聴けるにせよ、トータルで聴いてみるとCANなんだなあ、というのが伝わってくるんですよ。こういった、一つのものにこだわらない態度が、CANの音を面白くしているんだなあと、そんなふうに思います。 《試聴》

■Future Days / CAN

Future Days

Future Days

1973年作の『Future Days』はCANの最高傑作と謳われる作品ですが、こちらは予想と反してゆったりした平和な音でしたね。アルバム後半は「Bel Air」というタイトルの20分近くある大作ですが、様々なモチーフが顔を出す奇妙に不定形な作品で、これなんかは「原子心母」あたりのピンク・フロイドを思い出しますが、あれほど情緒的じゃなく、瞬間瞬間に鳴り響く音をとても大切にしながら少しづつテーマが移り変わってゆく、といった作品ですね。 《試聴》

NEU! / NEU!

ノイ! [紙ジャケット仕様]

ノイ! [紙ジャケット仕様]

1971年当時のデビュー間もないクラフトワークに助っ人として参加し、その後脱退したクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターにより結成されたバンド、ノイ!。この「NEU!」は彼らの1972年のデビューアルバムとなります。実は自分、ロックを聴き始めた中学生の頃、レコード店の隅っこにいつも売れ残っているなんだか得体の知れないこのバンドのことがとても気になり、試聴してみたことを覚えてるんですよ。その時は「いやーなんなんだろこの不思議な訳の分からなさ…」と思いましたね。さてそれから数十年後の今、こうしてもう一度聴いてみると、普通に面白いんですね。音的にはリピートの多用されたミニマル・バンドなんですが、コンピューターを使ってるわけじゃなくて人力なのが牧歌的だなあ。そして当時はハンマービートなんていわれていたらしいそのリズムも、今聴くと結構のどかで伸び伸びとして聴こえます。

■Viva / La Dusseldorf

Viva

Viva

ノイ!解散後の1975年にクラウス・ディンガーが結成したバンド、ラ・デュッセルドルフの1979年発表の2ndアルバム。これもノイ!と同じく中学生の頃試聴だけしたのを覚えています。実はその時聴いた、延々続くミニマル・リズムが、とても気持ち良かったんですが、まだロック・ミュージックのことをよく知らない時期に、「延々と繰り返されるだけのリズムが気持ちいい」ということ自体が、なんだか頭では理解できなくて、あと2500円出して延々同じ音だけのLPレコード買うのも、中学生の小遣い的にはちょっともったいなくて、結局購入を見送ってたんですよね。あの中学生の頃、このラ・デュッセルドルフや前出のノイ!のアルバムを買って聴き狂っていたら、オレの音楽人生もかなり違ったものになっていたんだろうなあ、と今でもよく思うんですよ。

■Faust / Faust

ファースト・アルバム

ファースト・アルバム

ファウストは1971年に結成されたジャーマン・ロック・バンドで、このアルバムは彼らの1stになります。実はこのアルバム、高校生の頃どんなバンドか全く分からないのに買っちゃってたんですよ。自分が高校生の頃というとCDなどまだ存在せずレコードの時代なんですが、このファウストの1stは透明レコードに透明ジャケット、そしてそのジャケットにはレントゲン写真で骨が透けて見える人の手、という実にカッコいいデザインだったんですね。要するにジャケ買いしちゃったんですね。そして音のほうを聴いてみたら…いやーもう全く訳が分かりませんでした!ファウストってそもそも実験音楽バンドだったということらしいんですが、調べてみるとやっぱり売れないバンドだったみたいですねえ…。しかし例によって初めてLPで聴いてから数十年後今再びCDで聴いてみると結構面白いんですよね。訳が分からないなりに茶目っ気があり、そしてやっぱりどこか呑気なんですよね。そしてエレクトロニック・ミュージックをあれこれ聴いた耳には、問題なく馴染んだりする音なんですよね。不思議なものです。