久正人のハイセンスなグラフィックが躍るモンスター・コミック、『エリア51』と『ノブナガン』

エリア51 (1)〜(5) / 久正人

エリア51 1 (BUNCH COMICS)
久正人の前作『ジャバウォッキー』を読んだときはそのアメコミを思わすセンスの良いグラフィックとスチームパンク的な世界を上手に自分のものにした話運びに魅了されたものだが、『ジャバウォッキー』連載終了後に書かれていたこの『エリア51』、すっぽりとチェック漏れして存在を知らなかったのは不覚だった。すまん、作者の方すまん。そんなわけで慌てて現在刊行中の5巻までをまとめ買いし、たっぷりと久正人ワールドに浸っていたオレだ。おおなんという至福。
さてこの『エリア51』アメリカの架空の第51番目の州「エリア51」を舞台にしているんですが、そこには伝説・民話・物語(小説や映画なんかも含めて)に登場するありとあらゆる種類のモンスター、世界中の神話の中の神とその眷属、現在の都市伝説ともいえるUMAらが、洋の東西を問わず集められ隔離され、軍によって管理されているんですね。そしてここで巻き起こる様々な事件を、探偵業を営む人間女性の主人公・真鯉徳子(通称マッコイ)が解決してゆくわけです。しかもこのマッコイ、可愛い顔してますが高い戦闘能力と凶暴さを併せ持ち、物語途中から登場する「意志を持った魔銃」を駆使して強大な敵に立ち向かっていくんですね。しかし彼女には隠された悲痛な過去があり、それが徐々に明らかになるにつれ新たな展開を迎えてゆく、という構成になっています。
『ジャバウォッキー』同様独特のコントラスト度の高いハイセンスなグラフィックとトリッキーなアングルを駆使し、「モンスターvs美少女」の物語を時にエキサイティングに、そして時に残酷に描いてゆくんですよ。そんな甘さを配したハードボイルドな物語の中に、時折怒涛の如く噴出する主人公の痛ましいほどのパッションが熱いんですね。『ジャバウォッキー』の徹底したスタイリッシュさと比べ、よりハートに訴える物語となっているんですよ。もちろん登場するモンスターたちは久正人の独自の解釈を加えられたデザイン度の高いもので、そのチョイスのされかたもまた面白く、これらモンスターの造形を楽しむのもまた本書のポイント。そして現在進行中の章ではラー、シヴァ、オーディーン、ツクヨミなど神話世界の最高神10柱が集う「10神会議」が登場し、主人公相手に密かな陰謀が進行しているんですよ。続きが楽しみだ!
エリア51 1 (BUNCH COMICS) エリア51 2 (BUNCH COMICS) エリア51 3 (BUNCH COMICS) エリア51 4 (BUNCH COMICS) エリア51 5 (BUNCH COMICS)

ノブナガン (1)(2) / 久正人

ノブナガン(1) (アース・スターコミックス)
一方こちらは地球を襲う巨大外宇宙生物を歴史上の偉人・有名人のDNAを持つ少年少女たちがエイリアン・テクノロジーの産物であるアタッチメントを身にまとい迎え撃つ、というSFアクション。主人公である女子高生の名前は小椋しお、彼女は織田信長のDNAを持っており、そして思考により様々に可変する巨大な銃を装着して敵と戦う。だからタイトルは『ノブナガン』というわけなんですね。善の宇宙人の力により結成された地球防衛組織の名はDOGOO(ドグー)、ここに集う少年少女たちはそれぞれニュートンガンジージェロニモ切り裂きジャックなどの遺伝子を持っていて、それぞれの役割も前線で戦闘に立つばかりではなく索敵・防御・参謀などの役割を与えられており、その超能力でもって敵との戦いを戦略的に遂行してゆくんですよ。いわばこの物語、鬱展開の全く存在しないエヴァンゲリオン的な世界観の中でサイボーグ009みたいな個々に個性的な超能力を持つ若者たちが力を合わせて敵と戦う、といったものなんですね。彼らを襲う外宇宙生物も独特で、地球生命体の進化の系統樹を模倣しながら進化してゆく、で、この進化によりどんどん狡猾になってゆく、だからその進化を早めに絶たねばならない、という切迫した使命も彼らには課せられているんですね、この超能力少年少女たちのエイリアン・テクノロジーを身にまとった姿や敵宇宙生物のビジュアルがまた久正人らしい卓越したグラフィックでデザインされ目を楽しませます。これも次巻の刊行がとっても楽しみですね!
ノブナガン(1) (アース・スターコミックス) ノブナガン(2) (アース・スターコミックス)