200階建て高層ビルで待ち受ける凶悪犯罪者軍団vs二人の法の執行人!!〜SFアクション『ジャッジ・ドレッド』

ジャッジ・ドレッド (監督:ピート・トラヴィス 2012年イギリス・南アメリカ映画)


俺の名はジャッジ・ドレッド
俺が法律!俺が処刑者!
悪い奴らは問答無用で俺が裁く!
死にたい奴らは向かってくるがいい!
自らの愚かさを地獄で後悔したいなら!!

…というとっても勇ましい未来の法執行人ジャッジ・ドレッドを主人公にしたSFアクションであります。
もともとは1977年に創り出されたイギリスのコミック・ヒーローもの。でもオレ的には1995年にシルヴェスター・スタローン主演で映画化された『ジャッジ・ドレッド』のほうが馴染み深いですな。いやーこの1995年版『ジャッジ・ドレッド』、大好きだったんですよー。スタローンの単細胞振りと実にマッチしたキャラで、SFヒーローものとしては『デモリションマン』より好きだったなー。で、今回の2012年版では主演を『LOTR』のエオメル役やJ・J・エイブラムス版『スター・トレック』のマッコイ博士役だったカール・アーバンが演じての再映画化ということになるんですね。
舞台は核戦争で荒廃したとかいうよくあるアメリカ、人々は「メガシティ・ワン」という城壁で囲まれた巨大な都市に住んでますが、ここも治安は悪化の一方、そこで警察であり裁判官であり法の執行人でもある【ジャッジ】が結成され、悪事を成すものをドッカンドッカンぶっ殺していたんですな。お話はこのジャッジのエリート、【ジャッジ・ドレッド】が、女性新米ジャッジであるアンダーソンを実地試験するために、200階建ての巨大高層ビル、「ピーチツリー」と呼ばれるスラム街で起きた殺人事件を捜査しに向かうところから始まるんですな。しかし一見ただの殺人と思われていたこの事件の背後には巨大犯罪組織の罠が待っていたのです!突如閉鎖されたビルの中で待ち構える血に飢えた敵相手に、ジャッジ・ドレッドとアンダーソンは孤立無援のまま戦うことを余儀なくされるというわけなんですな!
閉鎖された巨大ビルを孤立無援のまま上階のボスキャラ目指して血塗れの死闘を演じながら進んでゆく、というプロットは、近年では『ザ・レイド』あたりでも再現されていたアクション映画の一パターンでありますな。この多勢に無勢のシチュエーションで、鬼神と化したヒーローが無双状態で突き進んでゆく、というのが醍醐味でありましょう。しかし主演のジャッジ・ドレッドさんはあまりに強そうなんでこれだけだとサスペンスは生まれないんですが、そこに女性でおまけに半人前の新米ドレッドが相棒である、という部分が物語を面白くしているんです。
しかしこの新米ドレッドのアンダーソンさん、単にか弱い女なんかじゃない。じゃあ強力な力や技を持ってるかというとそうではない。実は彼女、サイキックでありまして、相手の心を読める能力を持っているんでありますよ。RPGでいいますと、ウォリアーとメイジのタッグ、ということになるんですな。そして最後までヘルメットを脱がないむさ苦しいドレッドさんに対し、「ヘルメットするとサイキック使えないから」という理由で常に顔出しの見目麗しいアンダーソン女子がいることで、ビジュアル的にもナイスな映画となっているんですな。そしてドレッドだけでは突破できない危機をこのアンダーソンさんのサイキックで乗り切ってゆく、という部分にこの映画の面白さがありますな。このアンダーソンさんをオリヴィア・サールビーさんという方が演じておるんですが、可愛くてオレはちょっと気に入ってしまいました。(↓とっても可愛いオリヴィア・サールビーさん)

この物語において【ジャッジ・ドレッド】という人物は本名も素性も素顔も明かされない単なる【力の権化】でしかないんですな。いってみればゴリラとかロボットみたいなもので、人間性が欠片も存在してないんですよ。『ジャッジ・ドレッド』というお話の面白いところは、この【内面の無い力の権化でしかないヒーロー】が主役という部分で、これはいってみれば内面を描くことでヒーローの存在を深化させようとしたアメコミ・ヒーローへのイギリスからのアンチ・テーゼということができるんですな。まあアメコミにも内面の存在しないダーク・ヒーローは存在するのかもしれませんが、こと【ジャッジ・ドレッド】に関しては【正義のヒーローの持つ暴力性】だけをクローズ・アップしている、というところがユニークなんですね。というわけで暴力ヒーロー【ジャッジ・ドレッド】とか弱いサイキックのドレッドが、恐ろしい敵を倒し生きてこの高層ビルを出ることできるのか!?という映画『ジャッジ・ドレッド』、ヒーロー映画のお好きな方は是非是非劇場へ。

Dredd

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