インドより愛をこめて、またはマリーゴールド・ホテルで死ぬのは奴らだ〜映画『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

マリーゴールド・ホテルで会いましょう (監督:ジョン・マッデン 2011年イギリス・アメリカ・アラブ首長国連邦映画)


ジェームズ・ボンドのお守りにも飽きたMI6部長・M(ジュディ・デンチ)が自ら危険な現場任務に赴いたのはインドの地であった。Mは寡婦を名乗ってマリーゴールド・ホテルと呼ばれるホテルに潜入、そこで5人のイギリス人男女に接触した。彼らもまたそれぞれが一般人を騙った諜報部員であり、M(ジュディ・デンチ)を中心としてインドで現在進行中である国家規模の陰謀を調査し、それを阻止するのが目的であった。しかし陰謀の魔の手は次第に彼らに迫り、色仕掛けに墜ちる者、命を落とす者、本国へ逃亡する者、様々な危機が彼らの任務を襲った。果たしてM(ジュディ・デンチ)はその任務を全うし、世界を救うことが出来るのか!?大人気007シリーズのスピンオフ作品、『インドより愛をこめて〜女王陛下の私を愛した黄金銃を持つMは永遠に、マリーゴールド・ホテルで死ぬのは奴らだ』の開幕である。
というのはもちろん冗談で、007シリーズのM役で有名なジュディ・リンチ主演、定年退職した6人の老イギリス人男女がインドのセカンドハウス"マリーゴールド・ホテル"で過ごす第2の人生を描く老人映画がこの『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』であります。しかし「海外で第2の人生」と聞くと大橋巨泉をなぜか思い出しちゃうオレはもちろんいい年のオッサンです。くそう、「海外で第2の人生」だなんて悠々自適だなあ。小金貯めたんだろうなあ。オレそんないい給料貰ってないよなあ。だいたい定年退職後なんて野垂れ死んでるかもしれないよなあ。そもそも定年前に過労死してるかもしれないよなあ。残業月30時間ぐらいだけど。…などなど、自分の甲斐性の無さをあれこれ思い浮かべる羽目になる心の痛い映画でありました…。
とはいえ、「自分に小金があってこういう生活できたら楽しいのかな、そこではどんなことが起こるのかな」ぐらいの心の余裕があればそれなりに楽しめると思います。「インドのホテルで悠々自適に暮らしてみたい!」とか思えたらもっと楽しめます。老人映画であるのと同時に一種の観光映画でもあるこの映画、そういった「異国で暮らす自分」を想像しそういう生活にちょっと憧れてみながら観るのが一番適しているでしょう。いやーしかしオレ海外経験ないし海外行く予定もないしインドは暑そうな上ちょっとババッチそうだから行くのも暮らすのも無理かもなあ。カレーは好きだけど。むしろ日本をインドにしてしまえ!オレにカレーを食わせろ!燃える辛さがオレをハイにするぜ!トビマストビマス!
この映画で一番面白かったのは、インドという一つの国に行ってみても、行った6人のインドの捉え方、そしてそこでの新しい生活への取り組み方が全く違う、ということでしたね。マリーゴールド・ホテルに集まった6人は実はそれぞれに事情があってここに来ています。夫を亡くして第2の人生を探しにきた主人公はじめ、退職金を失った夫婦、手術が目的の者、かつての友人を探しに来た者、新しい恋を求めてやって来た者など様々です。そして彼らが到着したマリーゴールド・ホテルは高級リゾートホテルなんて嘘っぱちのボロ建物で、本当のところ「小金を持っていて悠々自適」というわけでもないんです。
そんなホテルを「これもまた人生さ」と受け入れ、喧騒と混沌のインドに馴染もうと努力し、そこでの生活を楽しもうとする、そういう前向きな者もいれば、インドは最低の国だ、とインドの全てを否定しようとする者もいます。インドという国はたった一つしかないのに、受け取る者の見方で、さまざまな「インド」像が現れるんです。これは別にインドじゃなくても、どこに住んでいても、またはどこの組織に属していても、そこにいる者の受け取り方しだいで、その生き易さ生き難さが分かれてくるんだなあ、そんなことをちょいと思ってしまいました。あと、『スラムドッグ$ミリオネア』の主人公を演じてたデヴ・パテルがホテルの若き支配人役で出ていたのがちょっと嬉しかったでした。『スラムドッグ〜』、かなり好きな映画だったんですよ。

Best Exotic Marigold Hotel

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マリーゴールド・ホテルで会いましょう (ハヤカワ文庫NV)

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スラムドッグ$ミリオネア[Blu-ray]

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