ドライヴ』はとてつもなくカッコいい映画だったな(ただし『ヴァルハラ・ライジング』はええっと…)

■ドライヴ (監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 2011年アメリカ映画)


昼はカー・スタントマン、夜は強盗の逃走専門運転手として働く主人公。その彼がある人妻に岡惚れしてしまいその彼女を助けたいばかりに女の旦那のヤヴァイ仕事を請け負ってしまい、裏社会の血みどろな陰謀に巻き込まれてしまう、というお話。この『ドライヴ』、劇場公開時はスルーしちゃったんですが、レンタル出たので観てみたらこれがもうメッチャ面白くてオレ好みの作品で、劇場で観なかったのを本当に悔やんじゃいました。でも映画館でやってたときの評判や宣伝がどうもオレが実際映画を観たときの感想とずれてて、「80年代風」とか「変な映画」とか言われてたけど、むしろ変というよりリンチ風のビザールな味わいだと言うべきだし、80年代的な暑苦しさとかマッチョさが皆無な分現代的だと思ったんですけどね。で、なにより燃えたのはその唐突に展開するバイオレンス・シーンの狂い方ですね。どことなく孤独な影を引き摺る男が女のために止むに止まれぬ狂ったような超絶暴力に打って出る。この辺、男の不器用な寡黙さと唐突な暴力描写は初期の北野映画や『タクシー・ドライバー』を思い出させるんですよ。ある意味北野武が撮った『タクシードライバー』ということも出来ると思うんですが、北野と比べると女の描き方が数段上手いし、どこかタガが外れたような危険なロマンチックさを併せ持った映画でもあるんですよね。確かに物語だけを追いかけると今まで散々作られてきたようなクライム・サスペンスでしかないんですが、その見せ方の要所要所がイカレている、というか、独特過ぎる奇妙な美意識に彩られている。そのドラッギーともいえる美しくそして凄惨な描写にとことん魅せられてしまう、そんな映画でした。


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ヴァルハラ・ライジング (監督:ニコラス・ウィンディング・レフン 2009年デンマーク・イギリス映画)


とってもカッコよかった映画『ドライブ』の監督の前作、ということで観てみたんですが、これがなんかそのー、雰囲気だけで撮られたみたいな妙な映画で、ぶっちゃけて言うならあんまり面白くなかったんですけどねー、お話はまだまだ文明も存在しなかったような太古のスコットランド、そこの族長を殺して脱走した奴隷戦士が聖地エルサレムを目指すバイキングの一団と合流してどことも知れぬ土地に流れ着きそこで散々な目に遭う、というものなんですが、なんか主人公の"寡黙な奴隷戦士"が単なるええカッコしいにしか見えないばかりか彼とエルサレムを目指すバイキング連中の行動があまりに行き当たりばったり過ぎてアホなんちゃうこいつら?としか思えず、バイキングのくせにちゃんと海路わかってないばかりか辿り着いた謎の土地がエルサレムでもなんでもなかったにもかかわらず「でもここでいいや。蛮族征服しちゃえ」とかいきなり言い出し、かといってもともと無計画だから仲間割れした挙句頭おかしくなったり蛮族に次々に殺されて行ったりしてグダグダぶりがさらにグダグダになる、という恐るべき展開で、実の所なにやら宗教的な意味合いがある物語なのだろうけれどもあんまりそういった意味を汲みたくなるような面白さを感じられないまま映画が終わってしまったのが残念。水のシーンはちょっとタルコフスキーっぽかったでしたね。


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