銃弾と暴力が支配するブラジルの街で繰り広げられるハードボイルド・ノワール!〜ゲーム『マックス・ペイン3』


グランド・セフト・オート』、『レッド・デッド・リデンプション』のロックスター・ゲームズが先ごろ発売した『マックス・ペイン3』をプレイしてるんだけどこれが実に面白い。『マックス・ペイン』シリーズは元ニューヨーク市警刑事マックス・ペインを主人公にしたTPS(三人称視点アクション)なんだけど、特徴はダークなストーリーと「バレット・タイム」と呼ばれるスローモーション・アクションを発動しての華麗な銃撃戦で、難易度が結構高い分この「バレット・タイム」の使い方で難局を乗り切る、といった仕様だ。オレ自身はこれまで『1』と『2』をPC版でプレイ、この『3』はXbox360版を購入した。

マックスの物語は1作目の悲劇がそのままマックスの心に重い影を残したまま引き継がれる。それは新種の麻薬により正気を失ったジャンキーたちがマックスの愛する妻と子を殺害した、という事件だ。マックスはその麻薬製造の背後に隠された米軍産業複合体幹部の陰謀を突き止め、血まみれの銃撃戦の末に復讐を果たすが、しかし妻と子の命が戻るわけでもなく、マックスは職を辞し、酒とドラッグに溺れる悲惨な毎日を過ごしていた。そんなマックスを気にかけ、新しい仕事に誘ったのが旧友のパソスだった。二人はブラジルに移り住み、大富豪ブランコのボディーガードとして新たな生活を始める。しかしそんなある日、謎の組織がブランコのパーティーを襲撃し、ブランコの妻を誘拐してしまう。誘拐されたブランコの妻を追い、謎の組織の正体をつきとめようとするマックスとブランコだったが、それは新たな地獄の始まりだということを二人は知らなかった。

ヤヴァイ。なにしろヤヴァイ。サンパウロを舞台に繰り広げられる血で血を洗うアクション、脛に傷持つ男の感傷と虚無のハードボイルド、ストーリーが進むほどに暗黒の度合いが深まる地獄のノワール・ストーリー、そしてあまりにも映画的なその演出。躍るタイポグラフィブライアン・デ・パルマを思わせる画面分割、サム・ペキンパーの如き血飛沫を撒き散らしながらスローモーションで倒れてゆく敵、ジョン・ウー映画のような二挺拳銃横っ飛びのアクション、そしてトニー・スコットがもしもゲームを作ったらこうなると思わせるような痙攣的な画像エフェクト!『マイ・ボディーガード』『ドミノ』あたりでトニー・スコットが演出したギラギラとした神経症的エフェクトを凝らした映像、あれをゲームでやっちゃってて単なる銃撃アクションとは全く異なる異様な緊張感とトリップ感を醸し出しているのだ。

なにしろ日本でもレーティングが18歳以上推奨の「CERO Z」となったそのバイオレンス表現が凄まじい。ステージ最後の敵を倒すときの演出「ファイナル・キル カメラ」はこうだ。まず主人公マックスが銃から射出した弾丸の軌跡をカメラが舐めるように追ってゆき、その銃弾が敵にヒットして、胴を、頭を撃ち抜かれた敵がそこから夥しい血を噴出しながらゆっくり地面へと倒れてゆく様子を事細かに描写する。この「ぶっ殺すこと」の快楽、カッコよさ、そこにどこまでもチューニングされた表現が『マックス・ペイン3』の面白さなのだ。

Xbox360版はディスク2枚組。このうち1枚目ではブラジルに住む大富豪の豊かで満ち足りた放蕩三昧の生活ぶりが描かれ、その中でマックスは文字通り「大富豪の犬」として大富豪所有のビルを、サッカー競技場を、謎の組織が潜伏する沼地を舞台に戦いを繰り広げる。特にディスク1クライマックスの私兵軍団とマックスの戦いでは全てが瓦礫と火の海と化し、戦場と見間違うかのような凄まじいカタストロフが描かれる。それに前後して、ニューヨークで暮らしていたマックスとパソスの、マフィア相手の凄まじい銃撃戦、という過去が間に挿入される。

そしてディスク2に移ると、今度はブラジルの悲惨極まりない貧民街が舞台だ。薄汚れ、崩れかけたような住居、迷路のようになった町並み、命を捨てることなどなんとも思っていないチンピラの群れ。血まみれの銃撃アクションであるゲーム『マックス・ペイン3』は、その物語の中で、凄まじい貧富の差という格差社会の現実を、プレイヤーに目の当たりにさせ、体験させるというゲームでもあるのだ。誰が味方なのか敵なのかさえ定かではない暗中模索の中で、マックスは人質を救出し、事件の真相を掴む事が出来るのか。『マックス・ペイン3』、ひょっとしたら今年発売されたゲームでもNo.1の面白さを持つゲームかもしれない。

Max Payne 3 (日本語版) [ダウンロード]

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MAX PAYNE 2:FALL OF MAX PAYNE (輸入版)

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なお、『マックス・ペイン』は以前マーク・ウォールバーグ主演で映画化されたこともある。(拙レビューはこちら