おいおいちょっと待てよコケたとか言ってるけど『ジョン・カーター』結構面白い映画じゃないか

ジョン・カーター (監督:アンドリュー・スタントン 2012年アメリカ映画)


19世紀アメリカ、かつて英雄とまで謳われながら今は兵役拒否の風来坊として生きる元騎兵隊員ジョン・カーターが、洞窟で遭遇した謎の男の持つ装置で火星へと瞬間移動させられ、その火星に住む種族の間で進行中の戦いに巻き込まれながら、次第に英雄としての力を発揮してゆく、というSFヒロイック・ファンタジーです。公開時は「史上稀に見る大コケ映画」みたいな報じられ方をされていましたが、実際観てみるとそんな風評なんて全然信じられないぐらい面白い、血湧き肉踊るSF活劇として観る事が出来ましたよ。
原作はSFファンタジー小説の始祖とも呼べる作家、エドガー・ライス・バロウズのもので、原作自体はなんと100年前に書かれているんですね。要するに100年前のSF小説なもんですから、科学考証云々よりも奇想天外な異世界描写とそこを舞台に繰り広げられる英雄的な冒険に力点が置かれた小説ということができるんですね。そんな原作を『ファインディング・ニモ』や『ウォーリー』という名作アニメを手掛けた監督アンドリュー・スタントンを配し、作品それ自体の完成度は申し分なかったにも関わらず、興行成績がいまひとつ振るわなかったのは、やはり原作の古さ、にあったのかもしれませんね。これは原作が古臭い内容である、という意味ではなく、古典としてあまりに敬愛されてきたばかりに、そのイメージがこれまで製作されてきたSF映画に引用されすぎて、今回満を持して製作されたこの映画自体は、逆に既視感ありすぎの新鮮味のないもののように印象付けられてしまった、ということなんだと思うんですよ。
というのは、これを書いている自分自身、『ジョン・カーター』を劇場で観なかったのも、その予告編から感じてしまう、今更感と新鮮味のなさからだったんですよね。更に言ってしまえば、そんなに有名なバロウズの原作を、SF小説好きの自分はきちんと読んだことがないんですね。自分がSF小説を読み始めた中学生頃は、バロウズのファンも周りにいましたが、自分としてはもっと新しい、そしてSFファンタジーではなくきちんとサイエンス・フィクションしたSF作品を読みたかった、というのがあったんですね。つまり3、40年前の自分にとっても、バロウズはなんだか古臭い作家だ、という認識でしかなかったんですよ。
しかし実際、今回製作された映画を観てみると、そんな「古臭い原作の映画」ということを微塵も感じさせなかったんですね。それはなぜかと言うと、やはり現代の先進的なVFX映像で撮られているということと、やはり現代的なシナリオとしてブラッシュアップされていること(その分原作とは結構かけ離れているのだそうです)、さらに監督アンドリュー・スタントンのこれまで名作を送り出してきたその手腕にあるということが出来ると思うんですね。確かに内容それ自体は王道とも言えるスペース・オペラ、SFファンタジーの物語であり、やはりとりたてて新鮮なものである、とは言い難いにしろ、逆にSF活劇映画としては申し分の無い、安心して観られる安定感を持っているんですね。
スペース・オペラというジャンルは、かつては古色蒼然としたジャンルのものであるとして蔑視されていた時期があったとはいえ、それをあの『スター・ウォーズ』が完璧に払拭し、その活劇としての面白さを万人に十二分に知らしめたという経緯があり、ある意味『スター・ウォーズ』のオリジンの一つとして数え上げていいバロウズ作品原作である『ジョン・カーター』も、その賞賛の栄をかちえてよかった筈なんでよね。ただし、ここで『スター・ウォーズ』と『ジョン・カーター』を比べてみて、『ジョン・カーター』に何が足りなかったのか、と考えてみると、いわゆるマニアックなSF心をくすぐる何か、オタク心をそそる何か、ユース・カルチャーに関心をもたれる何か、にちょいと欠けていた、ということも言えるかもしれません。勿論気軽に楽しめるビッグバジェットムービーとしての面白さは充分あるので、それだけで興行が振るわなかったというのは考え難いのですが、意外とそういう要因なのかもしれませんね(なおアメリカでは振るわなかったそうですが世界的に見るとヒットしている国もあり、現在では「大赤字映画」というほどのものではなくなっているという話です)。
ところで、『ジョン・カーター』の原作であるバロウズの『火星シリーズ』、実は『ジョン・カーター』以前にも映画化されているんですよね。これ、日本では『アバター・オブ・マーズ』っていう『アバター』のバッタもん以外何者も感じさせないタイトルのDVDスルー作品で、アメリカ本国でもDVDスルーされた低予算映画なんですが、実は自分も観たことがあるんですよ。内容はまあ、予算通りのショボショボのものだったんですが、特筆すべきなのはですね、あの伝説のポルノ女優、トレイシー・ローズが、火星のプリンセス役で堂々と出演なさっている、ということなんですね!あ、ちなみにエロ映画ではありません。興味を持たれた方は是非ドウゾ。

火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)

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アバター・オブ・マーズ [DVD]

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