ビートルズ第5のメンバー、スチュアート・サトクリフの生と死〜『ベイビーズ・イン・ブラック』

■ベイビーズ・イン・ブラック / アルネ・ベルストルフ

ベイビーズ・イン・ブラック THE STORY OF ASTRID KIRCHHERR & STUART SUTCLIFFE
1960年、ドイツ、ハンブルグ。若き芸術家の卵、クラウス・フォアマンとアストリッド・キルヒャーは、地下の薄汚い怪しげなクラブで、最高にクールなロックンロールを奏でるイギリス人バンドに魅せられる。その"5人"のバンドの名前は、「ビートルズ」といった。アストリッドはバンド・メンバーの一人、スチュアート・サトクリフに惹かれ、二人は愛し合うようになる。ビートルズを脱退し、ドイツで芸術家を志すこととなるスチュアートに、アストリッドは最大限の助力を惜しまなかった。芸術家として輝かしい未来が待っているはずの二人に、しかし、悲劇が待ちかまえていたのだ。
ドイツのグラフィック・ノベル・アーチスト、アルネ・ベルストルフの『ベイビーズ・イン・ブラック』は、ビートルズ第5のメンバー、スチュアート・サトクリフと、後に有名カメラマンとして世に出るアストリッド・キルヒャーとの出会いとその後の運命を、史実に基づいて描くグラフィック・ノベルだ。
この物語でのビートルズはまだレコード・デビュー以前、ステージではロックンロール・カヴァーを奏でるドサ周りバンドではあったが、その才能にはいち早く周囲が注目していた時期で、そんなビートルズの胎動期の様子を窺い知る事が出来るのがまず興味深いだろう。特にこの作品での若きジョン・レノンの兄貴肌な態度や言動には注目だ。それと同時に、60年代ドイツの、芸術を志す若者たちのボヘミアな生活とその風俗がとても目を引く。そしてこの物語の実際の主人公となるのは彼らであり、彼らの織り成す青春群像、芸術に対するその情熱が中心として語られるのだ。カメラマンとして大成するアストリッドだけではなく、彼女にビートルズを紹介したクラウスも、ビートルズとの交際を経て、後にアルバム・ジャケット製作や、またミュージシャンとしてビートルズ・メンバーのソロ作品に参加している。即ち、このハンブルグの若者たちとビートルズの出会いは、彼らのその後の人生をも決定する、まさに運命的な出会いだったのだ。
この作品のタイトル、『ベイビーズ・イン・ブラック』は、ビートルズの同名曲のタイトルだが、これは、黒い服を好んで着ていた、アストリッドについて書かれた曲であった。それはこんな曲である。

作品は、鉛筆画風のとても柔らかく素朴な絵柄で、どの登場人物たちも実にキュートに描かれている。実際のスチュアート・サトクリフとアストリッド・キルヒャーはこんな二人であったらしい。

ベイビーズ・イン・ブラック THE STORY OF ASTRID KIRCHHERR & STUART SUTCLIFFE

ベイビーズ・イン・ブラック THE STORY OF ASTRID KIRCHHERR & STUART SUTCLIFFE

スチュアート・サトクリフについてはこんな映画もある。
バックビート BACKBEAT [DVD]

バックビート BACKBEAT [DVD]

スチュアート・サトクリフ - 5人目のビートルズ [DVD]

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