『ダークナイト・ライジング』公開記念ということでベインとキャットウーマンが主人公のバットマンコミックを読んでみた

バットマンvs.ベイン / チャック・ディクソン、グラハム・ノーラン

バットマンvs.ベイン (ShoPro Books)
映画『ダークナイトライジング』公開記念ということで、映画に登場したベインとキャットウーマンのコミックを読んでみた。まず最初はベインを中心に編集された『バットマンvs.ベイン』。5話収録されていて、まずはベインのオリジンを描く「VENGENCE OF BANE」。映画でもベインの生い立ちは描かれるが、なにしろ「カリブ海のある島で、クーデターに加担した父親の罪を、出産前の胎児の時から背負い、生まれたときから終身刑となった赤ん坊」という設定から既に物凄く重い。その後ある啓示と事件により終身刑の赤ん坊はベインへとなってしまうんだが、コミックのベインがマスクを被っている理由は、「超兵士を作る実験での後遺症で常に麻薬から作られた超筋肉増強剤を摂取し続けなければならないから」ということになっていて、映画とは若干違う。続く物語は、ベインとラーズ・アル・グールの邂逅を描く「BANE THE DEMON PART1-4」。自身の父親の正体を知るべく、世界各国で父親と関わりのあった者を探しては地獄へと落として行くベインは、その探索の終局にラーズ・アル・グールとその娘タリアに出会う。ベインはタリアと恋に落ちるが、親父が親父だけにこれが相当の性悪女で、さすがのベインも梃子摺りまくる所が微笑ましい。そして最後はラーズ・アル・グールとの対決となるのだがその結果は…という物語。全体的に荒っぽくマッチョなグラフィックだが、ベインの雰囲気とは合っているかも。それと、"バットマンを倒した男"と呼ばれるベインだが、そのエピソードも入れて欲しかったように思う。ベインの物語は映画とこのコミックで初めて知ったのだが、意外とジョーカーあたりよりオレは好きなヴィランかもしれない。ただあのルックスは普通に覆面レスラーなのがちょっと惜しいが。

キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ / ジェフ・ローブティム・セイル

キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ (ShoPro Books)
一方こちらはバットマン・コミックの名作として名高い『バットマン:ロングハロウィーン』『バットマン:ダークビクトリー』の外伝的作品にしてキャットウーマンの秘密を解き明かす作品として描かれた『キャットウーマン:ホエン・イン・ローマ』。先に挙げたバットマンコミック2作はバットマンゴッサムシティに巣食うマフィアとの抗争がテーマとしてあったが、その中で闇を歩むかのごとく出没していたキャットウーマンとマフィアとのその関係の秘密を描いたものとなる。コミックの中でキャットウーマン/セリーナ・カイルはある目的を胸にローマへと旅立つのだが、この時の相棒が怪人リドラーというのがなんだか可笑しい。しかしキャットウーマンのローマでの冒険は非常にミステリアスかつグラマラスに描かれていて、バットマン・コミックの外伝という部分から離れても楽しめる作品に仕上がっている。まず何よりグラフィックが美しい。各章それぞれの扉画はフランスのファッション・イラストレーター、ルネ・グリュオーという人へのオマージュとして描かれているそうだが、これもまた実に洒落ている。そしてなにより、セリーナ・カイルその人の素顔がなにしろ美人だというのが嬉しい。自分は読んでいて常に映画『ダークナイトライジング』のアン・ハサウェイを重ね合わせてしまったが、そのぐらい美人なのだ。怪盗キャットウーマンとしての立ち振る舞いや彼女の行く手を阻む女ヴィラン"チーター"との戦い、セリーナ・カイルとキャットウーマンを影となり日向となり助けるイタリア人殺し屋ブロンディとの絡みもわくわくさせられる。セリーナ・カイルの「可愛い悪女」といった性格とその行動、その小憎らしい台詞運びまでが心躍らせる。そしてキャットウーマン/セリーナ・カイルの幻想の中では常にバットマンの影が躍り、彼女のバットマンへの狂おしい想いまでが描かれているのだ。かつてハル・ベリー主演によるスピンオフの映画が製作され(ラジー賞をとってしまったらしいが意外と嫌いじゃない)、さらにアン・ハサウェイ主演でのスピンオフ映画の企画の噂まで上がっているキャットウーマンだが、このコミックはそんなキャットウーマンの魅力を伝えるだけではなく、もっと他のキャットウーマン・コミックも読みたくなってくる作品である。