『21世紀のための吾妻ひでお』の表紙が結構凄かった件

エロ系を得意とする漫画家の山本直樹氏監修による吾妻ひでおベストセレクション『21世紀のための吾妻ひでお』が発売されたんですが、表紙がエライことになっていて書店でレジに出すのを一瞬ためらってしまった小心者のオレであります。これが表紙!

そしてこれが裏表紙!

モデルは知る人はよく知っているコスプレイヤーうしじまいい肉さん。撮影はまんだらけの中野店で行われたようですね。うしじまさん、知らない方のためにちょっと紹介するとこんな写真こんな写真をやっておられます。エロ!ロリ!オタク!というコンセプトなのでしょうか、確かにエロ!ロリ!オタク!の吾妻さんの漫画の表紙を飾るのも間違いではないかもしれません。
しかし、うしじまさんの活動もエロさにも何も言うことはありませんが、エロ!ロリ!オタク!の吾妻さんはもう一つ、2次元!でもあると思うのですよ。だからこのうしじまさんのエロエロな肢体は、決して悪くない、個人的には一人でネットでじっとりと眺めまくっていたい、と思わせるものはあるにせよ、生身の人間の方であるがゆえ、当然ながら"生臭い"んですよね。反対に、吾妻さんの漫画に登場する美少女たちは、エロくてロリではありますが、血の通っていないセルロイド人形のような、つやつやとした非人間性がある、そしてこの非人間性は、吾妻さんのSF趣味とも通じるところがあると思うんですよ。SF好きなんてね、現実の生臭さが嫌いでSF読んでたりしますから。まあ少なくともオレがそうですから、このうしじまいい肉さんの表紙は、大変ソソりますし、吾妻的なものの片鱗をうかがわせるものはあるにせよ、"生臭い"というその一点でもって吾妻的なものから乖離しているのではないかと、まあ、そう思ったのでありますね。ともあれ、吾妻漫画の基本はエロだよ!それも思いっきりいかがわしいやつだよ!ときちんと表明しているという意味において、これもひとつの方向性であるということはできるでありましょう。
さてその内容ですが、これがもう、監修の山本直樹氏、わかってるじゃん!と言いたくなるほどに、いいツボついてます。帯にも「膨大なきらめく作品群の中から絞り込んで200ページにまとめるなんて、とても無理だ」書いているぐらいですから、セレクトするのには相当のご苦労があったのは伺えますし、それと同時に、有名作といえども切る所はばっさり切っている部分にも、山本氏のしっかりした方針が見受けられます。ここに収められている作品の殆どは読んだことがあるのですが、こうして一冊にまとめられてみると、山本氏のセレクトの良さが光っているがために、物凄く新鮮に読め、さらに発見があったりするんですよね。
それは吾妻さんの漫画にある、不条理感と、それが連発されるドライブ感なんですよね。吾妻さんの漫画には、ある種文学的と言っていい暗くシュールな大傑作が数あるのですが、ドライブ感という観点からそれをばっさり切った部分に、山本氏の編集方針の潔さが見受けられますね。しかし、ということはですよ、今度はそんな鬱展開のドロドロ漫画ばかり集めた『21世紀のための吾妻ひでお PART2』が編集されてもいいということにもなりますよね。というわけで、監修の山本氏には、ぜひ第2段もやっていただきたいですよね。そのときは表紙がうしじまさんでも文句は言いません!
しかし、不気味君とかなははとか、本当に懐かしかったなあ!「暗い青春の会」なんて、これを読んでたコーコーセーのころ、友人と実際に結成してたよ!ああそうさ、オレの青春も暗かったよ!「ぼくなりに絶望を表現しました」踊りとか十八番だったよ!なはははははは!なっはー!なははははははははは!

21世紀のための吾妻ひでお Azuma Hideo Best Selection

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