アダムス・ファミリー全集 / チャールズ アダムス、H・ケヴィン・ミゼロッキ

朽ち果てた屋敷に住む、謎の美女モーティシアたちアダムス・ファミリー。ドラマ化・映画化もされ世界中で愛されるその原典が本邦初出版! 未発表作を含む全作品とともに、詳細な解説付き。 本書は、アダムス・ファミリーのキャラクターの誕生と変遷を網羅的にたどった初の作品集であり、発表作はもちろん、これまで1度も発表されたことのない作品200点以上を収録。

アダムス・ファミリー』というと映画好きの方などはラウル・ジュリアアンジェリカ・ヒューストンクリスティーナ・リッチが出演した映画を思い出されるかもしれませんが、もともとはアメリカのコミック・アーティスト、チャールズ・アダムスが1933年から「ニューヨーカー」で描き始めた1コマ漫画の名もないキャラクターのひとつだったのだそうです。真ん中分けのヘアスタイルにちょび髭の伊達男ゴメス、妖艶なその妻モーティシア、二人のゴスな子供ウェンズデーとパグズリー、フランケンシュタインの怪物そっくりな執事のラーチ、いかにも魔女みたいなフランプおばさん、そして坊主頭に蒼白な顔、太ったノスフェラトゥといった風情のフェスターおじさん、これら怪奇映画から抜け出してきたようなキャラがブラックな笑いに満ちた一コマを演じる、それがもともとの『アダムス・ファミリー』だったのだとか。
この本『アダムス・ファミリー全集』は、チャールズ・アダムスが創造したこれらのキャラのハイライト・シーンともいえる厳選された一コマ漫画をキャラごとに分けて紹介し、漫画版でありオリジンである『アダムス・ファミリー』がどのように魅力に溢れた作品だったのかを紹介してゆきます。収録された1コママンガ作品はほとんどがモノクロですが、逆にこのモノトーンさが『アダムス・ファミリー』ぽくていいんですね。そしてなにより、チャールズ・アダムスの描くグラフィックは今でも十分通用する親しみやすさを持ち、ちょっぴり残酷な黒い笑いに満ちた作品内容も少しも色褪せていません。正直、ここまで楽しめるとは思っていませんでした。
アダムス・ファミリー』って、アメリカの東欧移民だと思うんですよね。他のアメリカ人から見たら相当風変わりな生活習慣しているから奇異に見られるけれども、本人たちはそんなこと気にしていないし、風変わりなりに、楽しく幸せに暮らしている。この、「風変わりだけど楽しく幸せ」というのが、『アダムス・ファミリー』の最大の魅力なのではないでしょうか。この『アダムス・ファミリー全集』でアダムスの愛すべきゴスな家族たちに触れて、そんなことをちょっと思いました。
  

アダムス・ファミリー全集

アダムス・ファミリー全集