最近読んだコミック / 羊の木(1)、テルマエ・ロマエ(4)、星を継ぐもの(1)(2)、進撃の巨人(6)

■羊の木(1) / 原作:山上たつひこ、作画:いがらしみきお

羊の木(1) (イブニングKC)

羊の木(1) (イブニングKC)

とある日本の地方都市。かつては海上交易で栄えた港町。名を魚深市という。その町が、犯罪を犯し刑期を終えた元受刑者を地方都市へ移住させる政府の極秘プロジェクトの試行都市となる。一般市民には何も知らせずに元受刑者の過去を隠し転入させるこのプロジェクトの全容を知るのは市長とその友人月末、大塚の3人のみ。移住するは、凶悪犯罪を犯した11人の元受刑者。はたして、このプロジェクトの行方は!?

原作:山上たつひこ、作画:いがらしみきお、というオレにとっての神漫画家二人がタッグを組んで恐ろしくスリリングな漫画を生み出した。とある地方都市で極秘裏に大勢の元受刑者を受け入れるプロジェクトが進行するというお話なのだが、これが一筋縄ではいかない面白さなのだ。刑期を終えた受刑者は既に罪人ではない。彼らは一般人として社会に受け入れなければならない。しかしそういった建前とは別に、出所者というのは忌避されることがあり、さらに再犯の可能性を疑われる。平たく言うと「気持ちが悪い」ものであるととらわれてしまう。読む者の気持ちはこの本音と建前の間で揺れ動いてしまう。そこには理性と生理感の相克がある。しかし理性的に取り扱おうとしても漫画の中の元受刑者たちはあまりにも不気味に見えてしまうし、生理感だけで突っ走ってしまうと例の「放射能ヒステリー」関連の人たちと何ら変わりない愚昧なものとなるではないか。この漫画にはそうった、なんともいえない居心地の悪さが満ち溢れている。そしてさらに、未だ始まったばかりのこの漫画は、どこに着地点を見つけようとしているのか、まるで読めない展開なのだ。これはサスペンスなのか?それともブラックコメディなのか?物語の最後に待っているのは幸福な連帯感なのか?それとも血みどろの破綻なのか?まさに期待と不安の同居する傑作漫画、これからの展開が本当に楽しみである。

テルマエ・ロマエ(4) / ヤマザキマリ

テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)

テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)

主人公ルシウスが日本の温泉から帰ってこられなくなってしまい、温泉宿で働く羽目になるという、ここへ来て新展開の『テルマエ・ロマエ』第4巻。これには賛否両論あるようだが、自分としてはこの展開は大賛成。これまでのローマ-日本を行ったり来たりの展開はお約束の楽しさはあるけど、いつまでもこれだと息切れするだろうな、という不安感はあった。しかしこの4巻で単発の読みきりではなく日本を舞台にした続き物にすることで、より深く古代ローマと現代日本の比較文化論を展開できるようになったのではないかと思う。そしてなによりこの新展開が愉しいのだ。新キャラの女性はちょっと出来過ぎの気もするが、作者自体が才女であるわけだから、こういうキャラがいたとしてもおかしくない。なによりロマンスの香りがするのが愉しいし、ルシウスというキャラをより掘り下げ、さらに面白く描くことに成功していると思うし、しかも次回が気になる展開、というのも素晴らしいではないか。あれこれ批判もあるかもしれないが、自分としては作者にこのまま突っ走って欲しいな。

■星を継ぐもの(1)(2) / 星野宣之

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

星を継ぐもの 1 (ビッグコミックススペシャル)

星を継ぐもの 2 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

星を継ぐもの 2 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)

SF文学の金字塔に新解釈を加えて漫画化! 時空を超えるミステリー!西暦205X年、月で深紅の宇宙服をまとった死体が発見された。だが、どれほど歴史をさかのぼっても該当者は見当たらない。そして誰も予見しない驚愕の事実が浮かび上がる。遺体はなんと5万年も前のものと鑑定されたのだ!ネアンデルタール人クロマニョン人が毛皮や石器を身に着けていた5万年前に、月に宇宙服を着た人が!?SF文学界の巨星・ホーガンの名作を、漫画界の巨星・星野之宣が独自の解釈を加えて描く!

J・P・ホーガンの原作は未読。これを貸してくれた相方さんは原作も読んでいるらしいが、結構原作と違うのらしい。内容はと言うとこれはSFミステリーと言っていいかもしれない。月に残された5万年前の死体やらガニメデで発見された100万年前の宇宙船やら、驚天動地ともいえる様々な発見があり、それがなぜそこにあったのか、そしてそれがそこにあったということは、太古、この太陽系で何が起こっていたのか…そういったことを科学者たちが推論し、意見を戦わせ、真実を探ろう悪戦苦闘する様子がこの物語のキモとなるのだろう。それと同時に、星野宣之お得意のいかすスペース・シップが宇宙を駆け、宇宙服姿の人間たちが月やガニメデを闊歩するビジュアルにやっぱりうっとりさせられるのだ。星野宣之は科学考証として難のある物語を構築してしまうという部分があり、この作品でもそれは散見されるのだけれども、それでも、大法螺な大風呂敷の広げ方のセンスはまさにSF的である、と好意的に見てしまう。それにしてもこの物語でちょっぴり思ったのは、展開のせっかちさだ。実際にこれだけの謎が発見されたらその解析まで数十年かかるかもしれないし、月の次はガニメデです、とほいほい惑星間飛行した挙句にまたも新たな謎、まるで太陽系が小さな町のようですらある。いや、これは別に作品を貶しているわけではない。人間の想像力の大きさに比べて、人間の命はあまりにも短く、その想像力を現実化するための技術の進歩は、これもまたあまりにも遅い。この物語から伺われるある種のせっかちさは、そんな、想像力に追いつかない現実への、一人のSF者の、苛立ちなのかもしれない。そしてその苛立ちは、SF好きである自分にも、十分理解が出来るのだ。

進撃の巨人(6) / 諫山創

進撃の巨人(6) (講談社コミックス)

進撃の巨人(6) (講談社コミックス)

例によって謎が謎を呼び次々と新しい展開を迎えてゆく『進撃の巨人』第6巻。このまま大風呂敷を広げ続けて伏線回収できるのか?とも思うが、いや、だいたい人気連載漫画というのはえてしてそんなもんで、どれだけ読者の関心を引き続けるかが鍵であるから、人気のある限りこのまま新展開し続けて最後が何がなんだか分からなくなるのは宿命みたいなもんなんだろうな。そもそも今巻でも既に展開の矛盾が若干あり、あれ?と思ってしまったが、人気漫画は勢いでそれを逃げ切ってしまうものだから細かいことは気にしないことにしておこう。このままのスピード感で続いて欲しいですな。