『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』はひょっとしたらアンダーソン監督の最高傑作かも!?

三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船 (監督:ポール・W・S・アンダーソン 2011年 米・英・仏・独映画)

  • ポール"オレの好きなほう"アンダーソン監督による愉快な歴史アクションです。
  • ところで唐突ですが"首飾り"といえば常識的な日本人が思い浮かべるのは「オリーブの首飾り」byポール・モーリア・グランド・オーケストラですよね。
  • 誰だよ「手品のテーマだろ?」とか言ってるヤツはッ!?

  • 映画通の方なんかは1967年にフランスで製作されたオムニバス映画『世にも怪奇な物語』の一篇、フェデリコ・フェリーニ監督、テレンス・スタンプ主演による「悪魔の首飾り」などを思い浮かべるのではないでしょうか。
  • オープニングの数分を収めたYouTube動画があったので貼っておきますが、ここだけ観ても得体の知れない不安感や寂寥感がじわじわと伝わってくるよね。この「悪魔の首飾り」はメチャクチャ傑作なので観てない人は観るといいと思うよ!


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  • というわけで『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』です。
  • いやあコレ、最初に言っちゃうけど、予想を遥かに上回る良作でしたよ!やれば出来る子じゃん、ポール"オレの好きなほう"アンダーソン!
  • 予告編観て誰もが思ったように、要するにこれ『バイオハザード』なんだろ?って自分も思いましたけど、『バイオハザード』臭さはミラ・ジョボビッチのアクション・シーンの演出ぐらいで、それ以外は史実と原作を自由な想像力で捏造、もといアレンジした非常に優れたエンターティメント作品として完成させているんですね。
  • 歴史モノって、時代考証とかあるから作るの大変なんじゃ?と思ったりもするんですが、ある時代モノを得意とする小説家(半村良だったかな)によると、歴史モノは、大枠さえ押さえておけば、あとはかなり自由に作ることが出来るので、ある意味現代が舞台の物語よりもラクだっていうんですね。つまり、歴史モノのほうが法螺を並べたり大風呂敷を広げたり出来る、っていうことなんですね。
  • そういった意味で、この『三銃士』、いい意味での法螺と大風呂敷が広げてあって、その豪快さが面白かったりするんですよ。なにしろ法螺と大風呂敷ですから、突っ込み所は満載といえば満載なんですが、演出の楽しさそれ自体がそういった部分を忘れさせてくれるんですよ。「気持ちよく騙されてあげましょう!」という気にさせるんですね。
  • この『三銃士』で予想外に楽しめたのは、実はセットとロケハン、そして衣装の素晴らしさなんですね。
  • ルイ13世の住まう宮殿はドイツにあるヴュルツブルクレジデンツで撮影されたそうなんですが、この宮殿の壮麗さがまず目を奪います!ここ、世界遺産にもなっているらしいんですね。ルーヴルの庭園やロンドン塔、ノートルダム寺院なども映し出されているようですよ。他の建造物はセットやCGが大量に導入されているのでしょうが、それを含めても歴史的な建物が美しかったですね。
  • 衣装は豪華であると同時に若干の下品さが醸し出され、こういったコミック・タッチの歴史映画では実に映えますね。次々と現れる美しい衣装を眺めているだけでも楽しい作品なんですよ。この衣装、『ココ・シャネル』や『パフューム』を担当したピエール=イヴ・ゲローという方が担当しているということなんですね。
  • キャラクターもきっちり個性が色分けされていて楽しかったですね。冒頭の部分でパパパッと登場人物を紹介するシークエンスが上手で、「誰が誰だかわかんない」なんてことは微塵もありません。主人公三銃士とダルタニアンはもとより、バッキンガム公爵(オーランド・ブルーム)の判りやすい悪人ぶり、『イングロリアス・バスターズ』でハンス・ランダ親衛隊大佐を好演したクリストフ・ヴァルツの食えない枢機卿ミラ・ジョボビッチ扮するミレディのこれまた判りやすい悪女ぶり、そしてオレが一番お気に入りだったフレディ・フォックス演じるルイ13世のボンクラと優雅さが相半ばするすっとぼけたキャラクター、これらのキャラがとても生き生きと描かれているんですよ。何度も言うけど、やれば出来る子じゃん、ポール"オレの好きなほう"アンダーソン!
  • 物語はなにしろ法螺と大風呂敷、よく考えたら「そんなのあるわけないじゃーん」ということになっちゃうけど、馬鹿馬鹿しいまでのはったりでそれをクリアしちゃってるんですよ。しかしこの物語、ご存知のようにアレクサンドル・デュマ・ペールの『三銃士』を下敷きにしているんですが、原作全7巻を読破したオレの相方に言わせると、「映画ならではのオリジナルストーリーではあるものの、結構設定や細かいエピソードがきちんと盛り込まれている」ということなんですね。つまり、歴史的に人気を博した原作小説のしっかりした土台を基にしているからこそ、この映画は妙な破綻に至らずまとまりの良く、そして娯楽性に溢れたものに仕上げることが出来たともいえるんですよね。全体的にコミカルなストーリー展開だったことも功を奏し、映画を観ている間中オレはずっとニヤニヤしっぱなしでしたよ。それとね、なんといってもチャンバラっていうのがいいんだよね!
  • そういったわけでこの『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』、「ダメなほうの監督」だなんて食わず嫌いしないでみんなも楽しめばいいんだと思いますよ!
  • ただし、ポール・W・S・アンダーソン監督作品らしく、「見終わった後に何も心に残らない」ていうのはありますけどね!でも面白かったからいいじゃない!