好きよ 好きよ キャプテン♪〜映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』

キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (監督:ジョー・ジョンストン 2011年アメリカ映画)

  • いろんなアメコミ・キャラがこれまで映画化されてきましたが、『キャプテン・アメリカ』ってどうなんだろう?って思ったんですよね。アメコミには詳しくないけど、「アメリカ大将」みたいな名前と、アメリカ国旗のスターズ&ストライプスをモチーフにしたコスチューム、これってあんまりにもあんまりな国威掲揚ヒーローって感じがして、こんなヒーローが主人公のコミックを映画化って、ナショナリズムガンガンなイヤ〜な映画になりそうじゃないですか。
  • なにしろあのコスチューム、やっぱかなり恥ずかしいですよね。全身でアメリカ主張してますもんね。なんか男のバドガールみたいっすよね。
  • ところがこの映画、こういったナショナリズムガンガンな名前とコスチュームを冒頭できちんと皮肉っているんですよね。
  • 主人公は超人になる血清を打たれて屈強な肉体を手に入れるんですが、最初から「よしこれでガシガシ敵を倒しまくって活躍するぞ!」という展開にならないんですよね。むしろこんな超人がたった一人いたところで戦況は変わらない、という上層部の当たり前な判断から、彼は戦争国債を市民から徴収するための広告塔にされてしまい、あの恥ずかしい名前とコスチュームを与えられ、それこそドサ周りのようにアメリカ国内を巡業して回るんです。
  • この部分で既に製作者側の、オリジナルであるキャプテン・アメリカというヒーローに対する批評行為が行われている。単に筋肉ムキムキの腕力だけが取り得なヒーローが暴れまわるというストーリーにしていない。こういった部分でまず好感が持てましたね。
  • そして敵役です。基本はナチスのオカルト研究機関「ヒュドラ」が相手なんですが、この「ヒュドラ」、あまりに強力な力を持っているがために、ナチス・ドイツにさえ反旗を翻すんです。つまり、ナチス・ドイツ対アメリカ(のヒーロー)という図式から逸脱しているんです。そしてこれによって、「第2次世界大戦は連合国の一人のヒーローによって勝利する!」みたいなナショナリスティックなお話になることを回避しているんですね。
  • こうしてお話は第2次世界大戦を舞台にしながらも、世界征服を企む悪役とヒーローとの戦い、というファンタジーへ綺麗に帰結するんですよね。
  • そういったわけで、後半は荒唐無稽な敵の軍団が世界征服という荒唐無稽な理由から荒唐無稽な武器を操り、ヒーローと荒唐無稽な戦いを繰り広げる、というコミック原作映画の楽しさへと展開してくれるんですね。しかし前半にヒーローというものに対する批評行為が行われているために、映画全体が馬鹿馬鹿しく荒唐無稽である、といった陥穽に落ちていないんですよ。
  • こういった、舞台が史実であることの生々しさ、生臭さ、そしてオリジナル・ストーリーが孕むナショナリズムの臭いを避け、純粋なヒーローアクションの物語として形成させようとしたシナリオライティングは実に絶妙であると感じました。
  • だから後半の戦いはアリステア・マクリーン映画に仮面ライダースターウォーズが迷い込んできたみたいな雰囲気で楽しかったですね!
  • しかしちょっと思ったんですがキャプテン・アメリカってあれ手塚治虫の『ビッグX』なんじゃないの?『ビッグX』って鋼鉄の体になる薬を打った少年がナチスと戦うっていうお話なんですけどね。というか製作年代的にキャプ雨がビッグXの元ネタってことなんでしょうね。

  • それとちょいネタバレになるかもしれないけど、映画後半にはギガントが出てくるので往年の宮崎アニメ「未来少年コナン」がお好きな方にもお勧めです!

  • しかしキャプ雨で唯一惜しかったのはヘヴィメタルのアルバムジャケットみたいな顔した敵役だな!