ジョン・カーペンター久々の新作映画『ザ・ウォード 監禁病棟』を観てきた

■ザ・ウォード 監禁病棟 (監督:ジョン・カーペンター 2011年アメリカ映画)

  • ジョン・カーペンター、なんでも10年ぶりの新作だという。前作は2002年の『ゴースト・オブ・マーズ』だというから、そうか、あれからもう10年も撮ってなかったのかと改めて思った。
  • ジョン・カーペンターは好きな監督だ。なんと言っても『遊星からの物体X』だ。『ニューヨーク1997』だ。そして『ゼイリブ』だ。好きな作品を全部挙げて行ったら切りが無い。
  • そんなカーペンターの新作が日本で公開されるというならこれは観に行くしかない。オレは公開初日初回を観る為に銀座シネパトスに一番乗り、1時間前から並んで待っていたのだ。
  • 物語は女子ばかりの監禁病棟で起こる怪異を描いたものだ。病棟に現れる謎の殺人者によって患者が一人また一人と屠られて行くのだ。
  • しかしこれだけではよくあるスラッシャー・ホラーだ。
  • 設定にしろありがちだ。女子ばかりの精神科の監禁病棟というシチュエーションは今年公開された『エンジェル・ウォーズ』を思い出させるし、女子刑務所ではあるが精神科病棟を巡るホラーというのであればハル・ベリーの主演した『ゴシカ』という映画がある。
  • しかしこの映画には幾つかの謎が仕掛けられている。
  • 例えば患者たちが消えて行くのにもかかわらず病院は何もしないのだ。
  • それと冒頭の描写だ。主人公の少女クリステンはある家に火を放ちそれを呆然と見つめているところを拘束され病棟に送られるが、彼女は何故放火したのかを覚えていない。にも関わらず彼女の掌にはその家の住所が書き付けられていたのだ。
  • さらに病棟の少女たちは何かを隠している。
  • そういった伏線が最終的にどういった形で回収されるのかを楽しみながら見るのがいい。
  • だが、そういった物語性とは別に、不気味な影がクリステンの前に突然現れて驚かせたり、逃げ回る少女たちが暗闇から現れる禍々しい手に引きずり込まれたり、そしておぞましい方法で殺戮されていったり…といった、ショッカーの見せ方が、やはり、非常に上手く、そして見ていて楽しいのだ。わくわくするのだ。
  • これはもう、ジョン・カーペンターの職人芸と言ってしまっていいような手馴れた手腕だ。
  • シンプルな舞台と構成はウォーミングアップということもあるのだろうが、カーペンター初期作を思い出させて申し分ない。
  • 確かに派手さは無い。血糊の量も少ないかも知れない。昨今のデジタル処理を駆使したホラーと比べたら古臭いかもしれない。しかし、安心して観られるのだ。
  • ラストの種明かしは、某映画とそっくりで、実はこれも衝撃的というほどのものではない。
  • しかし、映画全篇に散りばめられたカーペンター節(妙にのったりしたテンポも含めて)を堪能出来るという意味においては、これはファンにとって十分によく出来た映画だろう。
  • カーペンター映画で青春期を過ごしたオレのような人間には、カーぺンターの新作はやはり嬉しいものだ。余裕なんか見せてないでこれからもどんどん作品を撮ってもらいたいと思う。




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