リナティ主演映画を2本観たッ!!〜『KG カラテ・ガール』『女忍 KUNOICHI』

■KG カラテ・ガール (監督:木村好克 2011年日本映画)


武田梨奈のデビュー作『ハイキック・ガール!』は、武田梨奈という稀代のアクション女優の誕生を高らかに世に知らしめた画期的な作品であったにもかかわらず、映画としての完成度はお世辞にも上出来とは言えず、その素人臭い演出と安い脚本にいちいち苛立たせられ、これがデビュー作となってしまった武田梨奈がどうにも哀れで仕方なかった。監督・西冬彦の罪業は武田のいちファンとして永久に忘れはしないだろう。しかしだからこそ、陳腐な作品でしかなかった『ハイキック・ガール!』の汚濁を全て一人で背負い、それでも輝きまくっていた武田梨奈のその高い可能性とポテンシャルは、俳優・武田の輝かしい未来を指し示していたともいえるのだ。武田がハイキックを決める!それだけで全部許しちゃおう!そう思える映画でもあったのだ。
そしてこの武田主演第2作『KG カラテ・ガール』だ。期待はしていた。だが不安もあった。そして評判は芳しくなかった。あの『ハイキック・ガール!』よりもまだ惨かったらどうしよう…。オレはまた失望することを恐れ、劇場で観る事ができなかった。そうこうしているうちにソフトが発売される。ああ、観なきゃな…。オレはソフトをレンタルで借りて観た。そうすると、いやいやいや!なんですかこれは!意外とよく出来ている!なにしろとりあえず"映画"になってる!物語も一応(本当に一応だが)形になっている!撮影もアングルも前作と段違いに綺麗だしきちっとしてる!いやいやいや、物語作品それ自体としては単なる凡作だ、Vシネとどっこいの安いお話だ、しかしだ!全ての不満も全ての瑕疵も、リナティが画面に現れ、台詞を言い、演技をし、アクションを決めるだけで、どこもまでも輝いているじゃないか!なにしろ、前作よりもマシ、というだけで、ありとあらゆるものがオレの中ではクリアしてしまったのだ!
なにしろ物語はまともに捉えると噴飯モノだ。沖縄最強といわれる伝説の空手家の黒帯を巡り、犯罪シンジケートの親玉みたいなヤツがあらわれ、空手家を殺害した上その娘である二人の姉妹の片方を拉致してしまう。残された姉妹の片割れ、リナティ扮する女子高生は、過去の悲劇を乗り越え健やかに育っていたが、彼女が伝説の黒帯を所有していると睨んだ犯罪シンジケートの連中は、彼女に刺客を放つのだ。その刺客は、シンジケートに戦闘マシーンとして訓練された、彼女の生き別れの妹だった…というものだ。なにしろこの犯罪シンジケートってやつがもう、まるで荒唐無稽過ぎるのだ。さらに、単なる空手の黒帯が、世界の犯罪組織や軍隊への、強力な力のステータスになる、とかシンジケートの親玉が言ってるのだけど、普通に考えたってそんなアホな、としか思えないわけで、しかしそれがこの映画の中心になっちゃってるってことが、既にダメダメなのだ。
だが、オレは頭を切り替えてみた。確かに設定や展開は荒唐無稽であるが、これをコミックの乗りだと思ってしまえばさほど気にならないではないか。クンフー・アクションの物語なんてぇのはえてして荒唐無稽なもんだし(ただその流れはドニー・イェンが変えてしまった。クンフー映画は、ドニー・イェン前、ドニー・イェン後という具合に今後歴史が語られることになるだろう)、これを雁屋哲原作の『男組』や『野望の王国』みたいなもんだと思って観るなら、それはそれで何か味わい深い馬鹿馬鹿しさを醸し出し、これはこれで悪くないではないか。
そして今作で最もオレを虜にしたのはそのロケーションだ。リナティが冒頭でバイトしている横浜は桜木町に実在する映画館「ブルグ13」、この映画館は、オレがしょっちゅう通っている映画館(殆どここばっかり)じゃないか!!リナティがここで受付係だと!?ああああオレもここでリナティに受付されたい!完膚なきまでに受付されたい!この世の果てまで受付されまくってみたい!ああああオレの妄想は天高く飛ぶよ!そしてリナティが歩く桜木町の街並みもオレのよく知っている所ばかり!オレ、なんだか桜木町でリナティと一緒に歩いているような気までしちゃったよ!通勤途中の駅だから案外どこかですれ違ってるかもしれないじゃん!おいおいどうするよ!?電車でリナティと一緒になっちゃうなんて信じられるかよ!?そしてある日オレがヤンキーに親父狩りされてる時にリナティが突然現れてオレを救ってくれたりするんだよ!ああ!救われてみたい!リナティに救われてみたい!(…なんなんだこの情けない妄想は)
…とまあそんなわけで、あれこれ文句もありますが、リナティがちゃんと活躍しているのが嬉しい映画でした。あんまりアクション・シーンとかには触れられませんでしたが(激しく妄想しすぎてもう書く気力が残っていない)、例え平凡な殺陣や演出でも、なにしろリナティに華があるので全て補ってしまうという部分で、オレは十分満足でした!あとリナティの弟さんも敵役の少年として登場してますが、彼もなかなか存在感があってよかったな!

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■女忍 KUNOICHI (監督:千葉誠治 2011年日本映画)


リナティこと武田梨奈主演のアクション映画です。昔々、忍者のいた時代、その頃忍者は伊賀と甲賀に分かれていて、この二つは仲が悪かったんですな。リナティは伊賀の里から甲賀忍者に拉致された4人の女の一人として登場します。でまあ、隙を見て逃げ出すリナティと女たち!それを追う甲賀忍者!という流れになってゆくんですが、伊賀の里にいたとは言いながらくのいち忍者はリナティだけで、他の3人はどうもただの人みたいなんだよね。伊賀の里に住んでいるんなら老若男女皆忍者なんじゃねーのか、とか思ってたんですが、この映画ではそういう事ではないのらしい。だから逃げ出した女たちはすぐ捕まって甲賀忍者にいたぶられ、そこにリナティが現れていちいち救出して行く、という流れなんですね。なんかなあ、拉致された女子みんなくのいちって事にして忍者対忍者の熾烈な争いにしたほうが盛り上がる思うんだがなあ。
それとリナティ以外の俳優さんが皆さんがどうにも精彩が無くて、映画の画面眺めていてちょっときつかったです…。女子の皆さんはイマイチだったし男子の皆さんはどうにもチャラ臭くて…。特に男子忍者は目ン玉ひん剥いてドスの効いた声出す以外の演技をされておったのかどうか、という気さえするのですが。それと途中で伊賀の里からなんで女を拉致するのか?を説明するんですがこの説明がとても長いのですよ。忍者の割にどうも喋りすぎなんではないのか?喋りに熱中しすぎて相手に喉首掻っ切られてしまうのではないのか?などとあれこれ心配おばしてしまいました。そんなでしたから、後半はなにやらどんでん返しのようなことをやりたかったようなんですが、お話自体に全然興味が持てなくなってしまい面白さを感じませんでしたのよ。
そんなあれもこれもダメな中、やっぱりリナティだけは光ってるんですね。ピカピカ。じゃなくて。アクションがきちんと見られるものである事はもとより、なんと言ってもこの人、演技に緊張感があるんですよ。例えニッコリ笑っていても、下手な事言ったらコンマ1秒で鉄拳が飛んできそうな、そんな予断を許さない部分があるんですよね。だからリナティが動き出すとそれまでダレダレだった映画が見違えるように締まる。そんなとてもいいアクション女優さんなのに、彼女をきちんと生かせる映画監督が日本に存在していないのがまだるっこしく感じますね。リナティ、もう外国行け外国。ハリウッドで大アクション女優になってくれ。