祝・俳優メルギブ前線復帰〜映画『復讐捜査線』

復讐捜査線 (監督:マーティン・キャンベル 2010年アメリカ・イギリス映画)


メル・ギブソンが久々にスクリーン復帰!と聞いてさっそく観て参りましたよ映画『復讐捜査線』。メルギブ主演作は2002年のシャマラン監督作品『サイン』以来だっていうから本当に久しぶりですよね。しかし個人的にあんまり久しぶりな気がしなかったのは、その間にもオレの大好きなメルギブ主演作、『マッドマックス』シリーズや『リーサル・ウエポン』シリーズを家で散々DVDやらBlu-rayで観ていたからなんですけどね!それに映画出演の無かった間は『パッション』や『アポカリプト』なんかの監督もしていましたし、あと飲酒運転とか差別発言とかDVとか、意外とボチボチ活動はしていたようなんですけどね(オイ)!

物語は娘を目の前で殺された刑事の復讐劇です。といっても『リーサル・ウェポン』みたいにブチ切れデカが法律無視の大暴れを観せるアクション映画というわけではありません。メルギブももういいお年だし、演じる刑事もやっぱりいい年なので、最初はじっくりと大人しく捜査を進めてゆくんです(まあ大人しいのは最初だけですが)。しかし事件を洗ってゆくうち、これが単なる私怨による殺人では無く、裏に政府と巨大軍需企業とのどす黒い陰謀が存在していたことを掴んでしまうんですね。歯向かう事の出来ない国家権力と、金に物を言わせて隠蔽工作推し進める巨大企業の力により、捜査は暗礁に乗り上げ、犯人検挙は絶望的ともいえるものになってゆくんですが、メルギブは殺された娘のため、執念の反撃を試みるんですよ。

監督は『007 カジノ・ロワイヤル』のマーティン・キャンベル、この作品も、マーティン・キャンベルが1985年にイギリスBBCで製作されたヒットしたTVシリーズ『刑事ロニー・クレイブン』のセルフリメイクなんですってね。ただ映画として観ると、ちょっと演出が地味だし古臭いなあ、と思える部分が多いんですよね。国家と巨大企業の陰謀、というテーマなのにも関わらず、TVドラマのスケールからあまり広がりを見せていないように思えるんですよ。途中から出てくる「もみ消し屋」の男も、なかなか面白い役回りなのにも関わらず、どうにももったいぶった演出と配役の地味さで物語りに上手く生かせていないんです。主人公が死んだ娘の子供の頃の姿をしょっちゅう回想する、という部分も、情感豊かといえば豊かですが自分にはちょっとウェット過ぎました。

それにしても映画に登場するメルギブ、ホントに老けたなあ、というのが映画が始まって最初の印象です。そして老けてるんだけども目つきだけがギラギラしておっかないのよね、なんか因業な雰囲気がムンムンしてるの。そりゃそうだな、『パッション』とか『アポカリプト』みたいな変態映画撮ってる人だからこのぐらいは因業な顔になるわなあ、とちょっと思ってしまいましたよ。だから最初は年寄りらしく大人しくしていたメルギブさんなんですが、ラストに近づくほど段々ブチ切れ度が上がってゆき、クライマックスでは「いよ!待ってました我らがマッドマックス!リーサル・ウェポン!」となってくれるから嬉しいですね。

しかしこの映画で描かれる、「巨大企業が絡む人の命に関わる事件の隠蔽と捏造」って、最近巨大地震が起こってエネルギー関係の施設が大打撃を受けたことにより、その汚染が大変問題になっているにもかかわらず、隠蔽と捏造を繰り返して真実を決して市民に教えることの無い、とある国の政府と巨大企業のことを思い返さずにはいられないですよね。この映画でもある「汚染物質」のことが取り沙汰されるんですが、あまりに身近な話なので観ていて鳥肌が立ったぐらいですよ。そしてクライマックスでメルギブがその巨大企業の社長を追い詰めてゆくさまなんか、観ていて「あーあの会社の社長もこのぐらいの目に遭ってもおかしくないよね?」ぐらいのことは思っちゃいましたけどね!特にあの牛乳!おいテメーこの牛乳飲みやがれ!